トヨタ、研究開発費の「上乗せサプライズ」無し!自動運転事業「マイペース」継続か

Q2決算、今期予算は1.3兆円から変わらず



出典:Flickr / DennisM2 (CC0 1.0 : Public Domain)

トヨタ自動車は2024年11月6日午後、2025年3月期第2四半期(2024年7〜9月期)の決算説明会を開催した。今期の研究開発費の予算は1兆3,000億円で上乗せはせず、設備投資費の見通しも2兆1,500億円と前回発表のままとなっている。

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■自動運転技術の商用展開は遅れ気味だが・・・

トヨタは自動運転技術の商用展開で他社に遅れ気味だ。ホンダは2021年3月に一部自動運転可能なレベル3の市販車を展開しているが、トヨタのレベル3搭載車はまだ発表されていない。また、ホンダと日産自動運転タクシーのローンチまでの計画を発表しているが、トヨタからはこうした計画は明らかにされていない。

こうした中、自動運転関連の研究開発費を上乗せすることを決め、自動運転MaaS専用車として開発している「e-Palette」(イーパレット)のプロジェクトを劇的に加速させるのでは、といった予測もできたが、少なくともトヨタ全体の研究開発費や設備投資費の今期合計見通しは、前四半期からその金額が変わらないということになった。

ただし、トヨタは研究開発費を年々増加させている。2021年3月期は1兆904億円で、その後、1兆1,242億円、1兆2,416億円、1兆2,023億円と増えている。設備投資費も2021年3月期は1兆2,932億円だったが、2024年3月期は金額が2兆円を突破した。

出典:トヨタIR資料

■SDV関連の取り組みを強化

決算説明会では、事業の改善努力の一環として「バリューチェーン収益の拡大」に努めることが挙げられ、既存事業の拡充に「SDV等」新領域を上乗せすると明らかにされた。


SDVとは「ソフトウェア・デファインド・ビークル」の略で、ソフトウェアをアップデートすることで各機能の改善・向上を図っていく前提で設計する車両のことを指す。自動運転車を今後販売していくとすれば、SDVであることは最低条件と言える。

トヨタもSDVに力を入れ始めており、宮崎洋一CFO(最高財務責任者)は説明会で、「SDVの増加とあわせ、ハード・ソフトのアップグレードサービスを強化、新たな領域での収益基盤拡⼤・安定化を図ってまいります」とした。

■自動運転領域における今後の動きに注目

トヨタの第1〜2四半期の営業収益(売上高)は前年同期比5.9%増の約23兆2,800億円、純利益は同26.4%減の約1兆9,000億円だった。


▼2025年3月期第2四半期 決算要旨|トヨタ自動車
https://global.toyota/pages/global_toyota/ir/financial-results/2025_2q_summary_jp.pdf

出典:トヨタIR資料

トヨタ全体の事業においては、自動運転関連プロジェクトが占める割合はまだ小さい。しばらくこうした状況が続くことが予想されるものの、自動運転市場の将来性を考えるとトヨタが同分野へのアプローチを強化していくことは確実と考えられる。今後もトヨタの動きに注目していきたい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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