中国で「世界最速」の画像処理チップが開発されたという。開発したのは北京にある清華大学の科学者で、人間の脳にヒントを得たものになるようだ。海外メディアが報じている。
このビジョンチップ「Tianmouc」は、自動運転車や軍用車向けに応用されることが期待されているようだ。
▼A vision chip with complementary pathways for open-world sensing
https://www.nature.com/articles/s41586-024-07358-4
■1秒に最大1万フレームで画像を処理
開発されたビジョンチップ「Tianmouc」は、清華大学の研究所「Center for Brain Inspired Computing Research(CBICR)」のLuping Shi氏が率いるチームにより開発された。
1秒に最大1万フレームという記録的なスピードで画像を処理し、130デシベルのダイナミックレンジで動作することができるという。従来のチップと比較すると、データの流れを90%削減し、エネルギー消費量も少ない。
Shi氏によると、Tianmoucは従来のマシンビジョン戦略から脱却し、人間の視覚システムを模倣するという新しい計算方法を導入しているという。視覚情報は、認知用と迅速な反応用の2つの異なる経路で処理される。
この技術の開発は、特に異常事態で迅速に対応する能力が重要な自動運転や防衛システムへ応用されるために大きな一歩となった。すでに過酷な道路状況下でシボレーによるテストが行われ、リアルタイム知覚推論において低遅延と高いパフォーマンスを実証しているようだ。
開発チームはTianmoucの機能を活用する特定のソフトウェアとアルゴリズムを開発しており、無人システムへの将来的な実装が期待されている。
■自動運転、米国に負けず劣らずの中国
中国は、米国とともに世界で最も自動運転技術開発が進んでいる国と言える。それを牽引するのが、自動運転ベンチャーのWeRide(文遠知行)だ。同社は自動運転レベル4に特化した技術開発を行っている。
WeRideは2023年7月に、アラブ首長国連邦(UAE)で自動運転車の国家ライセンスを取得したことを発表した。これによりUAEでレベル4の自動運転車の走行が可能になる。ドバイで自動運転タクシーの試験走行を進めており、2030年には4,000台にまで規模を拡大する計画だ。
またWeRideは、中国各地で道路清掃向け自動運転車の試験運用許可を取得している。2023年12月には、北京で完全無人の自動運転タクシーの有償サービスの提供準備が整ったことを発表している。
ライドシェア大手のDiDi Chuxing(滴滴出行)も、自動車メーカー大手の広州汽車集団(GACグループ)とレベル4の自動運転タクシー開発に取り組んでいる。DiDiはGACグループのEV向けブランド「GAC AION」と自動運転の合弁会社「Guangzhou AIDI Technology」を設立し、共同で量産型の自動運転タクシー車両を開発、2025年に製造が開始される予定だ。
■中国トップクラスの理工科大学
今回ビジョンチップを開発した清華大学は中国トップクラスの理工科大学で、AI技術を中心に自動運転分野の研究を行っていることで知られている。
トヨタは同大と1998年から技術講座を開催するなど共同研究を進めており、2019年4月に「清華大学-トヨタ連合研究院」の設立を発表した。自動運転の研究に加え水素の積極的な利活用など、中国のエネルギー問題や社会課題の解決に寄与する研究に5年間にわたって共同で取り組むといった内容であった。
ダイムラーも2018年に協力関係を強化し自動運転などの分野で共同研究開発を進めていくことを発表している。
中国における自動運転技術の革新を支えている清華大学の取り組みに今後も注目だ。
【参考】関連記事としては「自動運転に力を入れる「大学」一覧(2024年最新版)」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)