ライドシェアで自民党分裂!タクシー会社限定に幹事長「おかしい」

「考え方が業界目線。顧客目線じゃない」



与党・自民党の幹事長である茂木敏充氏が、自家用車活用事業、いわゆる日本型ライドシェア事業に噛みついた。


ライドシェアの部分的解禁に踏み切った自民党だが、茂木氏はネットメディアで「(運行可能なのがタクシー会社限定は)おかしいと思う」「考え方が業界目線。顧客目線じゃない」「全面的に改善すればよいが非常に動きが遅い」と一刀両断し、前向きな議論の加速を促した。

日本型ライドシェアをめぐっては、政治家や有識者をはじめさまざまな意見が飛び交っている。サービスがスタートして1カ月が経過したが、利用者含めどのような反応が出ているのか。

茂木幹事長の発言をはじめ、さまざまな声や意見を集めてみた。

【参考】関連記事としては「ライドシェアの法律・制度の世界動向(2024年最新版)」も参照。


【参考】関連記事としては「ライドシェアとは?仕組みは?(2024年最新版)」も参照。

■茂木幹事長の発言概要

「考え方が業界目線。顧客目線じゃない」

出典:茂木敏充氏公式サイト

茂木幹事長は、ビジネス動画メディア「ReHacQ(リハック)」に出演し、同メディア創設者の高橋弘樹氏と対談した。

この中で、起業や転職の話から副業の話題に移り、茂木氏は「これから伸びていく分野の一つにシェアリングエコノミーがある。自分の時間をシェアするという意味では副業にもなる。例えばライドシェア。アメリカでは当たり前のようにやっているが、日本では解禁されておらず、ようやく一部の地域でタクシー会社が運営するなどいろんな条件をつけてようやく始めるようになった」とライドシェアに言及した。

続けて「うちの地元(足利市の北の方)だとタクシー会社呼ぶのに2時間かかる。1軒食事をして2軒目でスナックか何かに行って、行くときにタクシーを呼んでおいて来るまで歌っていると、そういうことになる」と自身の経験を語った。


高橋氏から「ぶっちゃけ何でライドシェアはタクシー会社だけなのか」と問われると、「私もおかしいと思う。業界もそうだし業界を所管している国土交通省の物事の考え方が業界目線。顧客目線じゃない」とバッサリ。

その上で「確かに安全性の問題とかあるためよく考えなくてはならないが、アメリカはやっているわけで、Uberはうまくいっている。Uberの運転手も評価されるため、評価の高い人がまた利用されるとか、15分待っても良いから安くするなど、いろんな選び方ができるようになる。十分やれると思うので全面的に改善すればよいが、非常に動きが遅い。タクシーだけに限らないが、それがシェアリングエコノミーの問題の1つ」と指摘した。

「日本は慎重過ぎる。もっとチャレンジすればよい」

ここからはやや余談だが、高橋氏は「業界団体にも存在意義があると思うが、その意見調整の中で遅々として進まないことはいっぱいあると思う。でもこれはそもそも自民党が築いてきた政策決定プロセスとか意見の集約の仕方の問題があると思う。1つは企業の政治献金の問題。そういうところから献金を受け付けた以上、業界団体の声は聞かないといけない。企業献金を受けるからそういう声を聞かなければいけないようになっているがそこはどう思うか」と問うた。

茂木氏は「企業も社会人であるため一定の社会活動・政治活動をする自由は認められている。その中で、例えば民主主義を健全に発展させたいとかSDGsとか、いろんな目的のため、一企業の利益ではなく社会全体のために献金をする。これは当然許容されるべき。ただ、そこで受けた献金によって政策がゆがむことがないようにしていかなければならない」と返答した。


高橋氏は、「事実としてゆがんでしまっているのでは。今言われたライドシェア含め、献金を受けながら既得権益、その業界団体の意見ばかり聞いて先に進めないみたいことはどうしたらなくせるのか」とさらにぶっこむ。

茂木氏は「おそらくこのライドシェアの問題はタクシー業界から献金を受けているからできないということよりも、日本の場合、まだライドシェアというものをやっていない、安全性に問題がありそうだということに対し、良い面でもあるが日本は慎重過ぎる。もっとチャレンジすればよい。時代は変わっている。新しいビジネスをやる場合、アメリカの場合はまず規制しない。やって問題が起こったら規制を考える社会。そこから見るとかなり違う」とし、慎重過ぎる日本の風潮をけん制した。

■日本版ライドシェアに対するさまざまな声

経済同友会代表幹事:新浪剛史氏

経済同友会の新浪剛史代表幹事は、4月16日の定例記者会見でライドシェアに言及し、「日本型ライドシェアが開始されたが、新規参入が妨げられている。ドライバーが十分に確保できない。東京においても言えるが、地方を中心に各所で足がないという大変な状況になっており、現行の日本型ライドシェアでは供給不足を解決できない。政府の試みは良いことだが、既存制度の延長線上では交通手段が足りないという社会問題の解決はできないのではないか」と問題を提起し、「ライドシェアを適切に運用し、心地よい新制度をつくっていくことが必要である。政府には、より突っ込んだライドシェアを」と注文を付けた。

また、記者から「海外と異なる日本版、という点が際立っているが、今後はプラットフォーマーの存在が議論になっていく。その点をどのように捉えているか」と問われ、「プラットフォーマーなど方法論はさまざまある。現行のタクシー会社をベースにした制度のままでよいのか。プラットフォーマー、すなわちデジタルを活用し、一般の方々が運転手となってサービスを提供できる仕組みが必要だと考えている」と述べた。

新浪氏はドライバーや乗客の評価システムなどにも言及しており、デジタル化による利便性向上を第一に掲げている印象だ。

電脳交通CEO(最高経営責任者):近藤洋祐氏

近藤氏はFacebookで4月24日、日本型ライドシェアにアプリ配車で初乗車したことを報告した。

近藤氏は「個人的にはタクシーに慣れすぎていて、通常時はタクシー、乗車人数や行き先に応じてプレミアム配車(アルファード等)の使い分けが一番フィットするし、その選択肢がある地域のタクシーハイヤーのレベルが高い水準にあることを改めて実感」と投稿。

その上で、「タクシー不足解消は日本型ライドシェアで模索しつつも、新たな交通システムの社会浸透を本気で狙う場合には、顧客ニーズをより細分化する必要がありそう」と私見を綴っている。

タクシー配車システム開発を手掛ける電脳交通のトップとして、日本型ライドシェアに一定の効果を認めつつ、新たな交通システムを本気で社会実装するには、多様化するニーズへの対応が欠かせないとする意見だ。

経済ジャーナリスト:後藤達也氏

後藤氏は4月8日、Xにライドシェア体験談を投稿した。普通にタクシーを呼ぶつもりで配車アプリを立ち上げたら「ライドシェア」の文字があり、「初日はそんなに台数もないだろうから、来るのは普通のタクシーだろうな」と思っていたらライドシェアがヒットしたという。

ほどなくして白ナンバーのミニバンが到着し、自分の手で扉を開けて名前をと伝えるとスムーズに運転開始した。運転手によると、トラブル防止のため道はナビ通りか顧客指定で、運転手の自己判断では選べないという。快適に利用できたとしている。

金額は配車時点で確定しており、道が混んでいても値段が跳ね上がることはない。料金はタクシーと大差を感じなかったそうで、「アメリカだと雨天など混み合う時は値段が跳ね上がったりしていたが、日本ではどうなるのか」と疑問を呈している。

また、運行管理しているタクシー会社の社員が運転手をしているケースもあるようで、結構な台数がさっそく都内を走っているとしている。

司法書士:カヨウマリノ氏

あさなぎコンサルティングのカヨウマリノ氏は、タクシーを呼んだらライドシェアを拾うことができたとし、その際の感想などを自身のYouTubeチャンネルにアップしている。

日本版ライドシェア制度の概要や状況の説明に始まり、「日本でライドシェアをものすごく広めようという感じではないにしろ、現実にはタクシーが不足している。しっかり安全性を担保した上でライドシェアの解禁はこれからも広めていった方がよいと思う」と私見を述べた。

実際に体験した感想としては、「何らタクシーと変わるところはなく、違うところは事前に料金が確定しているところ」と話している。

その他

XやFacebookには、利用者の声や制度に関する意見がいろいろと上がっている。例えば、Facebookでは……

「ここのところGOタクシーを呼ぶとライドシェアの車が来ることがある。先日はBMW そしてなんと今日はJEEP🤭 笑笑 中も綺麗で運転手さんも親切でとても良い。きっと働かされてるからではなくて、空いた時間で副業を自らやってるからか穏やかな運転手さんが多く話も面白いのかな。早く地方にももっと普及してほしい^_^」

「新しい仕事が生まれることは、人の行動変容につながるということがよく分かる。こういうことが社会の進化に繋がることはよくあること。せっかく生まれようとしているライドシェアを古い仕事の枠組みにはめ込んで無責任に『日本版』などと呼んでしまうことは罪だなと改めて思う」

・・・といった意見や感想が出ている。

あるタクシードライバーは「ライドシェア導入で怖れているのは、顧客を奪われることではなく、この評価システム。マナーか悪い人達ばかりが、タクシーに流れてくることを危惧」と投稿している。評価システムではじかれた乗客がタクシーに流れる……という懸念だ。

また、参政党所属の議員は、毎日新聞が報じた「神奈川のライドシェア『想像以上に需要少ない』」とする記事を引用し、「公開から1ヶ月、ベンチャーした許可事業者は30にのぼる。 このままでは供給過多で必要なくなるのではないかとの声も。三傑による肝いり政策でしたね」とXに投稿している。

■【まとめ】本格版解禁の種となるか、阻止の種となるか

基本的に、反対派が日本版ライドシェア(自家用車活用事業)を利用することはほぼないため、利用者の声としては中立な方や賛成派が必然的に多くなる。今のところ大きなトラブルなども発生していないようで、高評価が目立つ印象だ。

また、賛成派はこの日本版ライドシェアを皮切りに本格ライドシェア導入に向けた議論を進めるべきとしており、一方の反対派はこの本格ライドシェア解禁をいかに阻止するかに集中している。

規制改革推進会議は6月にも一定の方針を取りまとめる予定だが、一部委員からは本格版解禁を促す意見がすでに出されている。その後も議論は継続されることになると思われるが、解禁するにしろ阻止するにしろ、決め手が乏しければ議論は平行線になりかねない。

日本版ライドシェアは反対派勢力との「妥協点」的位置づけの意味合いも強い。この制度が妥協点としての役割を果たし、本格版ライドシェア解禁を阻止する根拠となるか、あるいは本格版導入の種となるか、要注目だ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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