アラブ首長国連邦(UAE)の中心都市であるドバイでは、2030年までに公共交通機関の25%を自動運転にするという計画がある。
これはUAE政府が策定した「ドバイ自動運転交通戦略」の一部で、ドバイ道路交通局(RTA)がすでに立てている目標である。今回あらためて、その目標に向けて取り組むことを再確認したという。
■交通事故12%減少、生産性13%向上
RTA事務局長であるMattar Al Tayer氏によると、現在ドバイでは9.4%の交通機関がすでに自動運転になっているという。それを25%に拡大するために、地下鉄やバス、タクシーを自動運転化していく。なお空飛ぶタクシーについては、導入の予定はまだないようだ。
公共交通の4分の1を自動運転化することで、交通事故が12%減少し、生産性は13%向上すると予測されている。またこの戦略を推し進めることにより、輸送コストの削減と個人の生産性の向上が実現する。ドバイ政府曰く「これまで輸送に費やされていた何億時間もの無駄」がなくなることにより、220億ディルハム(約9,000億円)もの利益がもたらされると考えられている。
この金額の内訳は、9億ディルハムの輸送コスト削減と15億ディルハムの環境汚染削減、180億ディルハムの輸送部門の効率化などとなっている。
【参考】関連記事としては「ドバイ市、自動運転タクシー実現へ街中を3Dマップ化」も参照。
■ドバイとGM傘下Cruiseの関係
RTAと米GM傘下のCruiseは、ドバイでの自動運転タクシーとライドヘイリングサービス運営に関する契約を2021年4月に締結した。ドバイで2023年から自動運転タクシーの運行を開始し、Cruiseは2029年までドバイの自動運転タクシーと配車サービスの市場を独占するという内容であった。
シボレーのEV(電気自動車)「ボルト」を改造したCruiseの自動運転タクシーは、すでに2023年に走行テストを完了している。ドバイでは最終的に4,000台の自動運転タクシーが導入される予定で、それにより交通渋滞の緩和や排気ガスの削減、交通事故の減少が期待されている。
RTAの交通システム担当ディレクターによると、乗車料金は通常のタクシーより30%ほど高くなる予定のようだ。これは、同地でのリムジンタクシーと同程度の水準だという。
なおCruiseは、米カリフォルニア州サンフランシスコやロサンゼルス、アリゾナ州フェニックス、テキサス州オースティンでも自動運転タクシーサービスを開始済みだ。(現在は事故などにより運行を全面的に停止している)
Cruiseにとってドバイは初の海外進出先となった。
■中東が自動運転シティとなる日も近い!?
ドバイでは、遠隔走行可能な移動式交番、いわゆる「自動運転無人交番」の本格導入も検討されているようだ。最新技術を積極的に取り入れるドバイは、2030年までに公共交通の25%自動運転にするという目標も簡単に達成してしまいそうだ。
また最近は米中の自動運転開発企業の進出先として、中東が脚光を浴びている。近い未来、ドバイをはじめとした中東の都市が自動運転シティとして世界を牽引していくかもしれない。
【参考】関連記事としては「ドバイ国家戦略、GMに追い風!自動運転タクシー4,000台供給へ」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)