Google自動運転車への襲撃、セブンイレブンも過去に類似の被害

無人モビリティのセキュリティに課題

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出典:X(@Michael Vandi)/ABC7公式YouTube動画/TikTok(@filmtherobotsla)

Google系Waymo自動運転タクシーが米サンフランシスコの中華街で襲撃された。春節ムードの中で群衆が興奮し、車両の破壊行為に及んだ。最終的には車両は炎上し、このニュースは波紋を広げた。

この出来事の重大度は決して小さくはないが、このように自動運転タクシーが襲われることは、業界ではある程度予想された出来事だった。その理由は、これまでにたびたび自動運転タクシーが襲われる事例が起きていたからだ。

主なトラブルを時系列にすると、以下のようになる。

■過去には「卵」や「石」を投げつけられるトラブル

Waymoの自動運転タクシーは2018年12月にアリゾナ州フェニックスで商用展開がスタートした。翌年には安全要員(セーフティドライバー)すら乗せない状態での運行を一部車両で始め、世界で初めての取り組みとして注目された。

しかし、自動運転タクシーの運行に不満を持つ人も少なくなく、2020年2月にはWaymoの自動運転タクシーに「アイスクリームのコーン」や「卵」を投げつけたりする事案が起きた。「石」を投げつけられたこともある。また同年12月には、歩行者が自動運転タクシーを殴り、サイドミラーを外す事案も発生した。

このような行為の背景には、自動運転タクシーに対する恐怖心があった。地元警察による報告書によれば、「自動運転タクシーに轢かれるのではないか」と心配する住民が少なくなかったという。また、自動運転タクシーにストーカーをされていると感じている人もいたという。

【参考】関連記事としては「なぜ住民たちは、Waymoの自動運転車に卵を投げつけるのか」も参照。

■「三角コーン」を設置し、走行不能にさせられたことも

GM Cruiseの自動運転タクシー(※現在は運行を停止中)もたびたびトラブルに遭っている。たとえば2023年7月には、自動運転タクシーに反対する民間団体「Safe Street Rebels」が、自動運転タクシーのボンネットに「三角コーン」を設置してまわった。

この運動は「Week of Cone(コーン週間)」と呼ばれ、三角コーンをボンネットに置くと自動運転タクシーが走行できなくなる、という弱点を狙って行われた。この抗議行動を受け、WaymoとCruiseは以下のようにコメントを出している。

Waymo:自動運転車がどのように作動するかについての理解が正しくないだけでなく、これは破壊行為であり、公道での危険で無礼な行為を助長するものだ。公道で我々の車両に対する危険な妨害を受けた場合、当局に通報する

Cruise:Cruiseの自動運転車は、信頼できる交通手段がない深夜のサービス労働者を無料で乗せており、食糧難のサンフランシスコ市民に200万食以上の食事を届け、地元企業から食品廃棄物を回収している。意図的に車両を妨害することは、こうした取り組みの妨げとなり、交通渋滞を引き起こす危険性がある
(出典:https://jidounten-lab.com/u_42193

■配送ロボが襲われ、配送物が盗まれる事案も

自動運転ロボットだけではなく、自動走行配送ロボットが襲われたケースもある。2023年8月にTikTokに投稿された動画には、セブンイレブンのロゴがペイントされた配送ロボットが米ロサンゼルスで襲われ、配送物が盗まれる様子が映っている。

@filmtherobotsla

Hollywood’s food delivery robots are under attack, and they’ve decided to fight back. Be careful out there. #robotics #ai #fightback #selfdefense

♬ HOTEL LOBBY (Unc & Phew) – Quavo & Takeoff

このロボットは、ロサンゼルスのハリウッド地区で配送ロボットを展開中のServe Roboticsのものだった。同社は、ロボットが標的にされるトラブルが起きていることを認めつつも、配達の99.9%は成功していると説明した。

【参考】関連記事としては「セブンイレブンの自動運転ロボ、L.A.で襲撃される」も参照。

■しっかりと官民一体での対応が必要

このように、自動運転車や配送ロボットが襲われているケースは過去にも起きており、今回のサンフランシスコの中華街での事件は、業界においてはある程度想定されていた。今後はどうこうしたトラブルを回避するか、といった点がポイントとなってくる。

今回の中華街でのトラブルで言えば、治安が悪いエリア(※悪くなることが予想されるエリアも含む)・時期・時間帯などの情報を自動運転システムにインプットさせておけば、襲撃を回避できたかもしれない。周辺住民であれば知っているような人間的な感覚や知識を読み込ませておくことが重要なわけだ。

そのほか、破壊行為を行った人物への地元当局の毅然とした対応や、自動運転タクシーの運営事業者が自動通報システムを搭載し、そのことを住民に周知することも必要になってくる。これらは一定の抑止力になるはずだ。また、自動運転タクシーが社会に無くてはならないものだという評価を受け、言わば「市民権」的なものが得られるようになっていくことも重要だろう。

いずれにしても、こうしたトラブルは少なからず今後も起きる。しっかりと官民一体で対応していくことが求められる。

【参考】関連記事としては「自動運転とは?(2024年版)」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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