岐阜県岐阜市で2023年11月から、自動運転バスの運行がスタートしている。2028年3月まで5年間の継続運行という長期計画となっている。
運行期間を長期の「5年」と最初に明言している点からは岐阜市の覚悟を感じるが、もう1つの注目点は、5年間の運行期間中に「自動運転レベル4」(高度運転自動化)の実現を目指すことも宣言している点だ。
現在は自動運転レベル2で走行しているが、レベル4になると「特定エリア内での完全自動運転」を指し、車内にセーフティドライバーを置かずに運行する水準となる。
■導入実績多数のBOLDLYが参画
岐阜市での自動運転バス運行事業は、ソフトバンク子会社のBOLDLYが行っている。同社は全体管理者として企画・運営を担うほか、自動走行の準備や同社が開発・提供する運行管理システム「Dispatcher(ディスパッチャー)」を用いた運行体制の構築を行っている。
使用車両は仏Navya製の「ARMA(アルマ)」だ。ARMAはもともと自動運転レベル4で走行することを前提に設計された車両となっており、運転席が設置されていなく、ハンドルやブレーキペダルなども無い。操作はゲーム機のコントローラーで行う仕組みになっている。
岐阜市での自動運転バスは、毎日運行の中心部ルートと土日祝日のみ運行の岐阜公園ルートを走行している。いずれもJR岐阜駅を起点としている。乗車の際は、電話またはLINE予約システムで予約を受け付けている。運賃は無料だ。
■中心市街地での継続運行は日本初
岐阜市での自動運転バス事業は、2021年の地域公共計画策定時より自動運転を計画に組み入れており、計画と実証の取り組みを連動させながら、2023年11月25日から自動運転バスの継続運行を開始した。
同市の公共交通ネットワーク全体の中での自動運転の位置づけを明確化しているほか、中心市街地に導入する目的を計画に位置づけた上で、この取り組みを推進するといった背景がある。
利用者の多い中心市街地で自動運転実証実験を行うことにより、市民が自動運転技術を知るきっかけになるなど社会受容性を高め、公共交通への自動運転技術の導入を進めていくとしている。なお、駅前など交通量が多い中心市街地で、自動運転バスが継続して運行されるのは全国初だという。
■レベル2とレベル4の違いは?
国土交通省が定める自動運転レベルの概要について、レベル2は「アクセル・ブレーキ操作およびハンドル操作の両方が、部分的に自動化された状態」と説明されている。運転操作の主体は運転者だ。
レベル4は「特定の走行環境条件を満たす限定された領域において、自動運行装置が運転操作の全部を代替する状態」のことを指す。運転操作の主体は、自動運行装置となる。
2つのレベルの間に位置するレベル3は、レベル4の内容に「自動運行装置の作動中、自動運行装置が正常に作動しないおそれがある場合においては、運転操作を促す警報が発せられるので、適切に応答しなければならない」が追加される。つまり、自動運行装置の作動が困難になる緊急時などは、運転車が運転操作の主体になる必要がある。
岐阜市が目標にしているレベル4は、レベル3での運行を行ってからの実現になるのか、それともレベル2から一気に4へ進むのか、今後の進捗に注目したい。
【参考】関連記事としては「自動運転レベルとは?」も参照。
■世界で進むレベル4開発
レベル4の実用化は、主に米国で進んでいる。Google系の自動運転開発企業Waymoは、エリアを限定して完全無人の自動運転タクシーの商用運行を行っている。
中国の自動運転ベンチャーWeRide(文遠知行)は、レベル4に特化して開発を進めており、2023年12月には北京で完全無人の自動運転タクシーの有料サービスの提供準備が整ったことを発表した。
またホンダは米GMやCruiseと協業し、自動運転専用設計のオリジナル車両「クルーズ・オリジン」を用いた自動運転タクシーサービスを東京都心部で2026年から開始することを発表している。これも自動運転レベル4に相当する。
岐阜市が5年以内にレベル4の運行を目指すということが、他の地方自治体の挑戦ムードも高めるかもしれない。ますます自動運転バスを導入に前のまりになる自治体が増えていくか、注目だ。
【参考】関連記事としては「自動運転バス・シャトルの車種一覧」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)