トヨタ自動車とソフトバンクの共同出資会社として設立されたMONET Technologies株式会社(本社:東京都千代田区/代表取締役:清水繁宏)=モネ・テクノロジーズ=の第5期決算(2022年4月〜2023年3月)が、このほど官報に掲載された。
第5期の売上高は前期比24%減の15億4,962万円。当期純損失は6,803万円であった。第3期は6億4,324万円の純損失を計上、第4期は1億1,986万円の純利益を計上していたため、第5期で再び赤字に転落したことになる。
記事の目次
■貸借対照表と損益計算書の要旨
貸借対照表の要旨(単位:千円)
▼資産の部
流動資産 3,308,343
固定資産 819,383
資産合計 4,127,727
▼負債の部
流動負債 511,447
・賞与引当金 48,437
・その他 463,009
固定負債 4,603
負債合計 516,051
▼純資産の部
株主資本 3,611,676
・資本金 2,500,000
・資本剰余金 2,500,000
・・資本準備金 2,500,000
・利益剰余金 △1,388,323
・・その他利益剰余金 △1,388,323
純資産合計 3,611,676
負債・純資産合計 4,127,727
損益計算書の要旨(単位:千円)
売上高 1,549,625
売上原価 810,002
売上総利益 739,622
販売費及び一般管理費 803,453
営業損失 63,831
営業外収益 243
営業外費用 1,049
経常損失 64,637
税引前当期純損失 64,637
法人税、住民税及び事業税 3,396
当期純損失 68,034
■医療MaaSや行政MaaSで事業
MONET Technologiesは、トヨタとソフトバンクの共同出資のもと2018年9月に設立された。
同社が手掛けるサービス・ソリューションは主に3つある。1つ目は、予約・配車システムにより利便性が高く効率的な公共交通を実現する「オンデマンドサービス」だ。デマンド公共交通の利便性向上とあわせて、街のDX化を推進している。
2つ目は医療とモビリティの掛け合わせで地域医療の新たな選択肢となる「医療MaaS」で、オンライン診療や巡回診療、巡回検診などについてのシステムやモビリティ、ノウハウを提供している。
3つ目は、MONET開発のマルチタスク車両を活用した移動型行政サービス「行政MaaS」だ。マルチタスク車両と庁舎をオンラインで接続し、行政職員が現地に移動しなくとも、各種申請や相談に対応することを可能にしている。マイナンバーカード申請やオンライン相談、災害時の罹災証明手続き、期日前投票所としての活用が期待されている。
■MaaS実現のためのAPIを提供
MONET Technologiesは、2020年9月に「MONETマーケットプレイス」をオープンした。これは企業や自治体によるMaaSの実現を支援することを目的にしており、MaaSのシステム開発に活用できる天気・観光・地図情報などのさまざまなデータやオンデマンドバスのシステム、決済システムなどのAPIを提供するものだ。
2022年12月には、MONETマーケットプレイスにおいて各種サービスやアプリにデマンド交通の機能を組み込める「MONETデマンド交通キット」の提供を開始した。ユーザーの乗車予約を受け付けるためのAPIと、予約状況や運行ルートを確認できるドライバー向けのアプリ、車両の稼働状況などを確認できる管理者向けのシステムをまとめて提供していく。
また2023年1月には、LINEからオンデマンドバスの予約を可能にする事業者向けのサービスを7月から提供開始することを発表している。
同年3月からは茨城県境町の医療MaaSと行政MaaSの取り組みに協力、同社のマルチタスク車両2台を導入している。医療MaaSでは、看護師が乗車した車両で町内のコミュニティーセンターなどを巡回し、車内で眼科スクリーニング検査などを行っている。また行政MaaSでは車内でマイナンバーカードの申請受け付けや各種証明書の発行業務などを行っている。
そのほか、長野県伊那市や鳥取県江府町、岐阜県恵那市、福島県いわき市、長崎県五島市など、自治体と連携した取り組みで多数の実績を持つ。
■日本のMaaSにおける陰の立役者
今回の決算では赤字となったMONET Technologiesだが、MaaSは今後さらに日本各地で取り入れられることが予想されることから、同社の存在感はますます増していくだろう。これからの取り組みにも期待したい。
※官報に掲載された決算公告に関する記事は「自動運転・MaaS企業 決算まとめ」から閲覧頂くことが可能です。
【参考】関連記事としては「初黒字!トヨタと孫氏の合弁「MONET」、売上急増20億円」も参照。