「働くショベル」を自動運転化、しかも「同時稼働」!実証に成功

仕事量が有人運転より3割増を証明



出典:安藤ハザマプレスリリース

建設会社の株式会社安藤・間(本社:東京都港区/代表取締役社長:国谷一彦)=呼称:安藤ハザマ=と、建設機械メーカーのコベルコ建機株式会社(本社:東京都品川区/代表取締役社長:山本明)は、複数台の自動運転油圧ショベルを同時稼働・管理するための実証実験を行ったことを2023年5月11日に発表した。

両社は油圧ショベルの自動運転推進に向けた研究開発促進のため、共同研究に関する協定を2019年4月に締結している。


■ショベルを自動運転化かつ同時稼働

今回の実証実験は、ショベルを自動運転化、かつ複数台を同時稼働させるというものだ。

実証で用いた自動運転ショベルは、ティーチング作業(動作ブログラムを記録すること)や油圧ショベルの非常停止を含めた自動運転の全操作を、タブレットから複数台同時に指示・管理することが可能なシステムだ。また、LiDARで取得した掘削箇所の形状などをタブレットで表示できるため、作業管理者がショベルの状態をリアルタイムに確認可能となっている。

【参考】関連記事としては「LiDARとは?読み方は?」も参照。

実証では、有人運転と自動運転でのダンプトラックへの土砂積込みの作業時間を比較した。その結果、1人で2台の自動運転ショベルを管理することで、1人あたりの土砂積込み量が有人運転時より約3割増となることが分かった。


両者は今後、建設現場での省人化と生産性の向上のため、現場ごとに動作を最適化することで生産性をさらに向上できると考えているという。

出典:安藤ハザマプレスリリース
■「自律走行式ひび割れ検査ロボ」も

安藤ハザマは、建設現場の生産性の向上を目的に、ICTを活用した建設機械の自動運転システムの開発に取り組んでおり、数々の実証実験を行っているほか、自動運転ロボットなども開発している。

2019年4月には、ダムや造成工事の転圧作業で使用する振動ローラの自動運転システムを開発したことを発表した。衛星測位システム(GNSS)などのセンサーを搭載した振動ローラの自動運転システムと、新たな品質管理手法「CCV-飽和度モニタリングシステム」を組み合わせ、施工における生産性と安全性、品質を高めるとしていた。

同年6月には、AI(人工知能)ロボット開発を手掛けるイクシスと、建築現場の施工自動化の基盤となる自律走行ロボットを共同開発、さらに両社は2020年4月に「自律走行式ひび割れ検査ロボット」を開発したことを発表している。


また2023年3月には、東京大学発ベンチャーで自動運転開発を手掛ける先進モビリティに出資したことを発表した。先進モビリティの自動運転技術を、建設現場へ展開するといった協働も検討していくようだ。

■今後も建機業界で安藤ハザマに注目

建機の自動運転化に取り組む安藤ハザマは、これまで振動ローラとブルドーザ、油圧ショベルの自動運転化を行ってきた。少子高齢化や働き方改革による人材不足解消や安全性向上、コスト削減などに向け、同社の取り組みは注目されている。今後どんな建機が自動運転化されるかにも注目していきたい。

【参考】関連記事としては「自動運転と建機」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




関連記事