完全自動運転特化の「大規模集積回路」、試作品が完成

アクセルが発表、ティアフォーと実証実施

B!
チップ外観・フロアプラン=出典:アクセルプレスリリース

完全⾃動運転に特化したシステムオンチップ(SoC)であるLSI(大規模集積回路)の試作品が完成した。ファブレス半導体ベンチャーの株式会社アクセル(本社:東京都千代田区/代表取締役社長:斉藤昭宏)がこのほど発表した。

■高速・省電力・リアルタイム性

アクセルは、国立研究開発法人「新エネルギー・産業技術総合開発機構」(NEDO)の公募事業「高効率・高速処理を可能とするAIチップ・次世代コンピューティングの技術開発」において、LSIとソフトウェアプラットフォームの研究開発に取り組んできたという。

今回完成したLSIの試作品は、自動運転開発を手掛けるティアフォー、東京大学・加藤研究室、埼玉大学・安積研究室と連携して研究開発を行い、LSI化した。当初は2022年の秋ごろの完成を目指していたものの、世界的な半導体サプライチェーンの混乱により、年をまたいだようだ。

このLSIには、自動運転における多様な処理に最適化されたハードウェアアクセラレータとリアルタイム処理を実現するメニーコアが搭載されている。AI(人工知能)エッジコンピューティング環境において、限られた計算資源のもと、高速で省電力なデータ処理とリアルタイム性の実現が叶った。

完成したLSIとソフトウェアプラットフォームの研究開発により得た自動運転システムの知見、アクセルがこれまで培ってきた高度なLIS設計力やAI・機械学習に関するコア技術などを融合することにより、完全自動運転向けLSIのアクセラレータIPや自動車向けのailia SDK(AI IP)などを提供できる環境が整うという。

■実証実施後、成果を夏ごろ公表

システム全体の評価のために、ティアフォーと連携して実証実験を実施することも発表しており、その結果は同年夏ごろに公表するとしている。

使用車両と搭載システム=出典:アクセルプレスリリース

実証の目的は、「本LSIを搭載した自動運転車両での自律走行の実証」と「本LSIの評価(性能、消費電力、リアルタイム性など)」、「自動運転プラットフォームとして今後のビジネス展開推進」の3つだ。実証の内容は主に4つある。以下の通りだ。

■実証実験の成果に注目

1996年設立のアクセルは、高度なアルゴリズム開発から製品化を担うソフトウェア・ハードウェア開発まで対応できる体制を有している。LSIのほか、AIに関するトータルソリューション、ブロックチェーン技術を用いたソリューション提案、セキュリティなどを手掛けている。

実証実験の成果としてどのような内容が公表されるのか、注目だ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



B!
前の記事トヨタが提携中のAurora、自動運転トラック商用化へ最終段階
次の記事新生トヨタのスピーチ、「自動運転」は1回、「知能化」12回登場
関連記事