ドバイ警察に「自動運転無人交番」納品!謎の日本企業の正体

世界初の移動式交番はメイドインジャパン

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出典:三笠製作所プレスリリース

世界最先端のスマートシティ化を推し進めるドバイ。自動運転技術を導入したスマート交通をはじめ、多方面にわたり世界最高峰の都市づくりを進めている。

ドバイの治安を守るドバイ警察は、遠隔走行可能な移動式交番の本格導入を検討している。ドバイでは交番までもがモビリティと化し、さまざまな警察業務を担うようだ。

この移動式交番、実はメイドインジャパンだ。創業40年を超える三笠製作所が開発・製造し、このほど2号機をドバイに納入した。

三笠製作所とはどのような企業なのか。移動式交番の概要をはじめ、同社の正体に迫ってみよう。

■三笠製作所の概要
電気制御盤を主力に事業展開

創業1978年(会社設立1986年)の三笠製作所は、電気制御盤の設計・製造を主体に技術を培ってきた機械メーカーだ。資本金1,000万円、従業員数25人(2020年時点)と決して大きいとは言えない企業だが、近年は自動運転車両や各種ロボットの開発に力を入れるなど、最先端の事業領域に注力している。

ドイツのケルン、シンガポール、米国シリコンバレーに営業拠点を構える。制御盤事業は2021年に会社分割し、三笠精機が担っているようだ。

出典:三笠製作所公式サイト
■移動式交番の概要
ドバイ警察と共同プロジェクトに着手

ドバイ警察との結び付きは、2017年にさかのぼる。ドバイを中心に、周辺のアブダビ、シャールジャ、アジュマーンなどのアラブ各国へ「made in japan」の製品・システムを供給する契約を同警察と交わし、世界初となる移動式交番「SPS‐AMV(Smart Police Station-Autonomous Mobile Vehicle)」の開発プロジェクトに着手した。遠隔自動運転による移動を実現したスマート警察署だ。

交通違反検知や不審者検知、行政サービスなどを提供可能に?

翌2018年に開催された中東最大の展示会「GITEX2018」でSPS‐AMVのコンセプトモデルが発表され、その全貌が明らかとなった。

ワイヤレス充電や太陽光発電でバッテリーを充電して稼働する自動運転・電動ビークル(AMV)に、警察行政サービス端末(SPS)を搭載したもので、まちを移動しながら各種支払いや住民票の出力、遺失物の紛失・盗難届など、約30の行政サービスを提供することが可能になるという。

また、ドバイ警察本部とインタラクティブ通信し、前後方360度を収めるカメラシステムで犯罪や交通違反を検知・通報する機能も搭載する予定としている。速度違反や駐車違反の自動検出・通報と、ドバイ警察本部によるライブストリーミング映像のVR視聴の2点を可能にすることで、警察による日々のパトロール業務の負担軽減につなげていく計画だ。

このほか、不審者・不審車両の検出や火災判定、交通量調査、道路状況の監視、砂塵嵐・砂嵐予測監視システムなどの機能拡充も検討されているという。

当時の計画では、2019年から随時実証実験と導入を開始し、2020年開催予定だった「2020 年ドバイ国際博覧会」でドバイのまちをSPS-AMVが走り回る予定としていた。

その後2号機の開発に着手し、納車を完了したことを2023年2月20日に発表している。1号機とともに現地で実証を継続するとしている。

なお、開発・製造にはLED TOKYO、R2、オズコーポレーション、プラネックスコミュニケーションズ、大槇精機、4RE、DOGOH、チームゼットがパートナーとして関わっている。

ドバイを発信地に世界が注目?

移動式交番に話を戻すが、ドバイは自動運転をはじめとした先端技術を続々と導入するスマートシティ先進地としても知られ、世界各国のさまざまな技術やサービスが集積している。米Cruise自動運転タクシーなどもその一例だ。

こうした先進地で共同プロジェクトを行い、自社ソリューションを採用されるのは並大抵のことではないはずだ。世界初の自動運転可能な交番が世界的な注目を集め、オファーが殺到する可能性も十分考えられる。その過程でさらなる進化を遂げ、各国の警察の需要に合わせる形で防犯や不審者検知、通報、拘束、交通違反検知・処理……などさまざまな機能をカスタマイズ可能なモビリティへとブラッシュアップされていくかもしれない。

■自動走行ロボット開発Hakobotとの協業
Hakobotと提携し自動走行ロボットを開発

ロボット関連では、ラストマイル宅配を担う自動走行ロボットの開発を手掛けるHakobotと提携し、製品開発を進めている。

Hakobotは2018年設立のスタートアップで、ホリエモンこと堀江貴文氏が取締役を務めていることでも知られる。自律走行が可能なユニット「Hakobase(ハコベース)」に、カスタマイズ可能な「荷室ユニット」を組み合わせることで汎用性を高めることが可能なモデルの開発を進めている。

長崎県などでの実証を経て2021年夏にプロダクト開発を完了し、同年クラウドファンディングで資金調達を実施した。目標金額3,633万3,000円に対し、倍近い6,652万8,000円を集めるなど支持を得たようだ。

計画によると、2022年にかけ屋外用の自動運転システムを組み込んだ実証を繰り返し、センサーや駆動系などのハードウェアをより屋外環境に適応できるよう改良を重ね、一部顧客にまず屋内用途のHakobaseの販売を開始する。2023年には屋外モデルの販売を予定している。2026年には400台以上のロボット販売を実現し、バイアウト(事業売却)を行うところまで絵を描いている。

三笠製作所は以前、前出の移動式交番「SPS‐AMV」にHakobaseを搭載する計画なども発表していた。まもなく迎える商用化フェーズにおいて、三笠製作所がどのように関わっていくのか注目だ。

■ロボット関連の取り組み
動くガンダムプロジェクトにも参画

ロボット関連では、機動戦士ガンダム40周年を記念し高さ18メートルの実物大ガンダムを動かす「ガンダム GLOBAL CHALLENGE」プロジェクトにテクニカルパートナーとして参画している。

ロボット(ガンダム)は神奈川県横浜市の山下ふ頭で限定オープン中の「GUNDAM FACTORY YOKOHAMA」で展示・稼働している。同社は、ガンダムの動作における安全評価とそれを実現するための機器選定、電気配線の面で技術協力しているという。

また、デザインやプロダクト開発などを手掛けるRDSと次世代型ロボットセンター4REを立ち上げ、遠隔操作可能なロボットエンターテイメントを提供する「MegaBots(メガボッツ)プロジェクト」なども展開している。

■【まとめ】自動運転は各種サービスも無人移動式に

行政サービス提供の観点を踏まえると、警察のみならず自治体が導入することなども考えられる。きめ細かなサービスが求められる日本の行政機関においても、こうした移動式の無人サービスを導入する動きが出てくる可能性は十分考えられる。自動運転技術は、人の移動やモノの輸送をはじめ、サービスまでも無人移動を可能にするのだ。

新たな事業展開を見せる三笠製作所。国内における躍進にも期待が寄せられるところだ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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