赤字でも上場!車両×移動データのSmartDrive、Foxconnも株主

CASEに関わる国内IPO案件として注目

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コネクテッドサービスなどを手掛ける株式会社スマートドライブ(本社:東京都千代田区/代表取締役社長:北川烈)が、2022年12月に東京証券取引所グロース市場に上場する。市場からの期待も高いCASE領域のベンチャー企業として注目されており、赤字でも将来性を評価されての上場と言えそうだ。

スマートドライブとはどのような企業なのか。この記事では、上場を目前に控えた同社の概要を紹介していく。

■スマートドライブの概要
「移動の進化を後押しする」――北川氏が在学中に創業
出典:スマートドライブ公式サイト

スマートドライブは、東京大学大学院に在籍していた創業者兼CEO(最高経営責任者)の北川烈氏が2013年に設立したベンチャーだ。当時、北川氏は移動体のデータ分析を研究しており、今後自動車のデータ活用やEV(電気自動車)、自動運転技術などが移動を大きく変えていくことに感銘を受け、創業に至ったという。

「移動の進化を後押しする」をビジョンに掲げ、ハードウェアやアプリケーション、テレマティクスサービスの開発、データ収集や解析などを手掛けている。コネクテッド化やMaaSが進展する今日のモビリティ業界の動向を先取りするような形で事業化した格好だ。

同社は2014年、総務省のICTイノベーション創出チャレンジプログラム「I-Challenge!」の採択を受け、車載コンピュータの自己診断装置「OBD-II」とモバイルデバイスを連携させたテレマティクスデータ活用技術の開発に本格着手した。このとき、従業員はまだ1人だった。

デバイスを車両に取り付けるだけで、自分の運転や燃費の確認、車両の健康診断ができる専用デバイスとスマートフォンアプリを開発し、データを利活用した新たなビジネスモデルの構築を目指すとしている。

研究開発の成果は、後に法人向けの車両管理システムや個人向けの定額制コネクテッドカーサービスなどのプロダクトとして社会実装されている。

東京本社や名古屋オフィスのほか、中国深圳やタイ、マレーシアにもオフィスを設けている。

出資者にはFoxconnやソニーも

スマートドライブの主要株主には、アクサダイレクト、SMBCベンチャーキャピタル、住友商事、三菱UFJキャピタル、Foxconn、みずほキャピタル、ソニー、ゴールドマンサックス、GLP、産業革新機構、住友三井オートサービス、anriが名を連ねている。

このうち、FoxconnとソニーはEV(電気自動車)分野への参入をそれぞれ表明しており、次世代モビリティ分野での活躍に期待が寄せられている。今後、スマートドライブとの協業の行方にも注目したいところだ。

上場予定日は2022年12月15日

グロース市場への上場予定日は2022年12月15日となっている。資本金は1億750万円で発行済株式総数581万6,430株、上場時発行済株式総数は6,03万9,830株を予定している。

公開価格はブック・ビルディング方式で決定し、ブック・ビルディング期間(11月30日~12月6日)を経て12月7日に公開価格が決定する見込みだ。

▼新規上場会社概要|日本取引所グループ
https://www.jpx.co.jp/listing/stocks/new/co3pgt0000001bms-att/12SmartDrive-Outline.pdf
▼新規上場申請のための有価証券報告書|日本取引所グループ
https://www.jpx.co.jp/listing/stocks/new/co3pgt0000001bms-att/12SmartDrive-1s.pdf
▼コーポレートガバナンス|日本取引所グループ
https://www.jpx.co.jp/listing/stocks/new/co3pgt0000001bms-att/12SmartDrive-cg.pdf

■スマートドライブのソリューション
クラウド型車両管理システム「SmartDrive Fleet」
出典:日本取引所グループ公開資料(https://www.jpx.co.jp/listing/stocks/new/co3pgt0000001bms-att/12SmartDrive-1s.pdf

シガーソケットに挿し込むだけの手軽なデバイスをはじめ、高品質なドライブレコーダーから走行データを収集し、リアルタイム位置情報や走行履歴、安全運転診断、運転日報・月報など、さまざまな形で活用できる車両管理システム「SmartDrive Fleet」を提供している。

安全運転診断結果に応じてポイントがもらえるドライバーエンゲージメントサービス「SmartDrive Cars」や運転アドバイスなど、安全運転に向けたモチベーションを高めるサービスも充実している。

移動データプラットフォームサービス「Mobility Data Platform」

センサーデバイスなどから取得可能なあらゆるデータを活用し、さまざまなモビリティサービスに生かすことができるサービス「Mobility Data Platform」では、走行データをさまざまな方法で収集して利用価値の高いデータへ加工し蓄積する「Data Warehouse」、モビリティデータサイエンティストがデータを可視化して分析し、インサイトを導き出す「Analytics」、走行データを活用した施策の実施や新規モビリティサービスの構築を支援する「Automation」などのサービスを提供している。

コネクテッドカーやセンサー、ドライブレコーダー、モバイルデバイスなど、さまざまなデバイスデータやセンサーデータをコネクトすることであらゆる移動体のデータを収集することができる。

収集したビッグデータは、使いやすいデータにするクレンジング加工・処理を施し、各種サービスやデータ提供・分析などに活用できる。

加工処理や分析による利用価値の高いデータとモビリティサービスにおけるノウハウを組み合わせることで、システムへの組み込みや将来を見据えた技術やサービスへのデータ活用が可能になるという。

Mobility Data Platformは、ホンダをはじめユピテルやゼンリン、損保ジャパン、三井不動産、しずおかMaaSなどさまざまな企業・団体が活用している。

ドライバー支援サービス「SmartDrive Cars」

SmartDriveデバイスをアクセサリーソケットに挿入するだけで、安全運転スコアや運転のクセなどを自動で分析し、また走行履歴や行動履歴からポイント交換やクーポンなどの情報が届く新しい移動体験を提案するドライバー支援サービス「SmartDrive Cars」を提供している。

安全運転のスコア化や運転アドバイス、急ブレーキや急ハンドル、急加速診断など各種機能が盛り込まれている。

出典:日本取引所グループ公開資料(https://www.jpx.co.jp/listing/stocks/new/co3pgt0000001bms-att/12SmartDrive-1s.pdf
■スマートドライブに関するトピックス
物流向けソリューション開発へ

スマートドライブは2018年、物流向けソリューション開発を手掛けるモノフルおよびあいおいニッセイ同和損害保険と業務提携し、物流業界のさらなる効率化やコネクテッド化に向けた多角的なテレマティクスサービスの展開を進めていくと発表した。

翌年には、モノフルの新サービス「トラック簿」向けにSmartDrive Platform APIの提供を開始するなど成果を上げているようだ。

テレマティクス保険の開発にも協力

スマートドライブと住友三井オートサービス(SMAS)は2019年、次世代テレマティクスサービス「SMAS-Smart Connect」を開始した。車両の位置情報をリアルタイムで管理し、事故発生時に管理者へ自動連絡する機能や、ヒヤリハットマップの作成、危険運転発生時のメール通知機能、音声ガイダンスなどの各種機能を備える。デンソー製のデバイスにも対応している。

両社は2020年に包括業務契約を締結し、モビリティ関連データの活用やデジタルマーケティングなどの分野で協業を深めており、2021年にはSMASがスマートドライブに出資を行っている。

また、SMASグループで少額短期保険業を手掛けるi-SMAS少額短期保険とともにテレマティクス型保険の共同開発も行っている。i-SMAS少額短期保険が提供開始した「リース車両修理費用保険」において、センサーから取得された運転挙動に応じて保険料が変動するテレマティクス型保険を導入している。

ドライバーの運転状況を車両データから収集・分析して保険料に反映させるテレマティクス保険は、スマートドライブの技術が最大限生かされる分野と言える。今後、保険会社などとの協業が大きく進んでいく可能性がありそうだ。

MaaS関連で小田急電鉄と協業

2020年には、小田急電鉄と小田急沿線における新しいモビリティ・ライフの実現に向け協同するプロジェクトを開始した。

家族見守りサービス「SmartDrive Families」を連携するほか、将来的には「SmartDrive Cars」のポイント付与機能の活用や、ドライビング評価をきっかけに運転に不安を覚える方への公共交通機関の利用の提案、MaaSや地域密着型サービスプラットフォーム「ONE(オーネ)」との連携などを進めていく方針としている。

EVカーシェア領域にも技術提供

スマートドライブは、出光興産が展開する超小型EVを活用したカーシェア実証にも「Mobility Data Platform」の提供を行っている。

出光興産が調達した超小型EVを販売店に貸与し、MaaS実現に向けたトライアルを検証する内容で、実証を通して得られる各種データの利活用をサポートし、サービス改善を継続的に行う環境の構築を進めていく。

EV関連では、丸紅ともEVフリートマネジメントサービス構築に向けた連携を進めている。丸紅が自社開発したオフィスや工場などが保有するEVの配車・充電タイミングを最適化するAIとスマートドライブの走行データを利活用するサービスを連携させ、効率的な車両管理を実現するサービスの構築を目指すという。

【参考】出光興産との協業については「出光、超小型EVカーシェア実用化へ、スマートドライブと連携」も参照。

■【まとめ】スマートドライブの事業は時代のニーズにマッチ

スマートドライブの事業は、現在進行形で社会実装が進むコネクテッドやMaaSと密接に結び付き、モビリティサービスの向上・進化に大きく貢献する可能性が極めて高い。時代のニーズにマッチした業態と言える。

上場により事業展開を加速するスマートドライブの動向に引き続き注目だ。

【参考】関連記事としては「自動運転銘柄、米国株・日本株一覧(2022年最新版)」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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