中国自動車大手の浙江吉利控股集団(Geely)はこのほど、自動車の自動運転に活用する人工衛星の打ち上げに成功した。この人工衛星は低軌道で周回することで、センチメートル単位での高精度な位置情報を地上に提供することができる。
同社は第1フェーズの2025年までに72基、第2フェーズの168基、計240基の衛星を打ち上げる計画「Geely Future Mobility Constellation」を推進中で、今回打ち上げられた9基はこの計画の一部となる。
Geelyは、運転手が不要の「自動運転レベル4」機能搭載の一般向け車両を2024年までに発売すると発表している。今回の人工衛星打ち上げによってレベル4の車両販売に弾みがつきそうだ。
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■ドローンの運航や物流効率化でも活用
Geelyは2020年3月に人工衛星分野への参入を発表し、2021年秋に人工衛星の製造を開始した。今回、Geelyグループの浙江時空道宇科技(Geespace)が開発した衛星「吉GeeSAT-1」9基は、四川省の西昌衛星発射センターから打ち上げられた。
衛星は中国各地に設置された地上局ネットワークを通じて運用・管理されるという。中国、アジア地域を対象にサービスを提供し、2026年以降は全世界をカバーすることを視野に入れている。
今後、衛星を使用して位置情報以外の情報のやりとりも行い、自動運転だけでなくドローン(小型無人機)の運航や物流サービスの効率化などにも活用される予定のようだ。
■中国でGeelyの存在感が一際高まる
「自動車と人工衛星」という切り口では、日本の準天頂衛星システム「みちびき」にも注目だ。みちびきは、準天頂軌道の衛星が主体となって構成されている日本の衛星測位システムのことで、日本版GPSとも呼ばれている。
従来のGPS(全地球測位システム)と一体で利用することにより、GPSだけではカバーできなかった、ビルが並ぶ都市部や山間部でも安定的で高精度な測位を行うことができる。
中国ではGeelyのほか、自動車メーカーを含むさまざまな企業が自動運転技術の確立・商用化に取り組んでいるが、今回の人工衛星の打ち上げでGeelyの存在感が高まった。Geelyが「吉GeeSAT-1」を活用してレベル4の車両販売を実現できるのか、注目だ。
▼Geely公式サイト
http://global.geely.com/
【参考】関連記事としては「「自動運転×衛星」に注目!みちびきの「CLAS」(シーラス)とは?」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)