国内でも乗車を伴う自動運転実証が増加傾向にあり、生の自動運転技術を体験した人も徐々に増えているようだ。
体験者は、自動運転技術に対しどのような印象を持ったのだろうか。この記事では2022年5月までの情報をもとに、国内実証や実用化レベルの海外サービスをもとに、口コミ・評価やアンケート結果をまとめてみた。
記事の目次
■自動運転バス実証実験in石垣島
2017年6〜7月に内閣府が沖縄県石垣市で実施した自動運転バスの実証では、地域住民や観光客など計368人がモニター試乗した。
アンケートでは、約7割が「安心」「ほぼ安心」して乗車できたと回答した一方、乗り心地に関しては約3割が「少し急」「少し悪い」と回答した。
将来性や可能性に関しては、「バス運行頻度の増」76%、「過疎地域の路線バスの維持・拡充」88%、「交通渋滞の緩和につながること」53%が「期待している」と回答したようだ。
自由記述では、「自動運転技術の進歩にビックリした」「早く実用化してほしい」「完全自動にならなくても運転手の負担軽減に使える」「人の運転より事故が減りそう」といったプラスの意見をはじめ、「人の飛び出しに対応できるか」「トラブル時の対応がちょっと心配」といった疑問も出されている。
このほか、「深夜も運行してほしい」「乗るのはバス停、降りるのは好きなところが良い」といった要望もあったようだ。
■岐阜県関市の体験試乗デモンストレーション
群馬大学協力のもと岐阜県関市が2020年7~10月に実施した自動運転実証実験では、地域住民などを対象とした体験試乗デモンストレーションが行われた。
アンケート(回答者70人)では、自動運転の乗り心地について「良い」31人、「普通」29人、「悪い」10人と回答した。完全自動運転が実現したら乗ってみたいかとの問いには58人が「乗ってみたい」と回答した。
その他回答では、「GPSの精度が高くて驚いた」「思っていた以上に自動化されていた」「曲がり角も上手に運動していた」など技術面を評価する声がある一方、「安全確認がまだ人間頼み。早く機器で確認できると良い」「信号判断や、路上駐車などの障害物自動で避けられるといいと思う」「やや速度が遅いからラッシュ時はどうか」といった声も挙がった。
このほか、「別のコースでも乗ってみたい」「障害者や高齢者等の交通手段として有効活用してほしい」「過疎地域の交通手段になってくれたらうれしい」「お年寄りが免許を返納しても田舎で暮らし続けられる社会、電車やバスの通っていない場所に住んでいてもちょっと飲みに出かけられる社会が早く来てほしい」といった声もあったようだ。
▼自動運転実証実験等実施業務 事業実施報告書|岐阜県関市
https://www.city.seki.lg.jp/cmsfiles/contents/0000016/16701/R2-2siryo4.pdf
■しずおか自動運転ShowCASEプロジェクト
静岡県松崎町で2021年10月に実施された自動運転バスの実証では、70人が乗車しこのうち62人がアンケートに回答した。
乗り合い方式の自動運転サービスの運賃に関する問いでは、約75%が適正運賃は「299円以下」と回答した。最高時速19キロに関しては、「速く感じる」5%、「適切」31%、「遅く感じる」64%という結果となった。
自由記述では、「乗車は3回目。毎回レベルアップしているように思う」「乗り合いタイプはとても有用。特に福祉関係での活用が望ましい」「超ハイテクの技を見られておもしろかった」といった評価をはじめ、「遠隔操作では急な飛び出しや割り込みなど、緊急の対応が心配」「設備、経費のことを考えてしまう」「遠隔操作時の変速がガクガクしてスムーズでない」「乗り心地は良いが、スピードダウン時がスムーズでない」など、さまざまな意見が出された。
▼令和3年度 自動運転実証実験の結果について
https://www.pref.shizuoka.jp/kensetsu/ke-570/documents/kekka2022_1.pdf
■福島県浪江町の自動運転試乗体験
浪江町は2021年2月、「なみえスマートモビリティーチャレンジ」の一環として自動運転試乗体験を実施した。巡回シャトルに自動運転バスを試験導入し、住民同乗のもとデモ走行を行った。
アンケートでは、自動運転車の印象として「移動が楽にできそう」71%、「安全そう」68%といった肯定的意見が多く見られた。否定的意見としては、「安全ではなさそう」1%、「スピードが遅い」10%といった状況だ。
参加者からは、「とてもスムーズな運転で安心して乗車できた」「運転が苦手な方、免許返納を考えている方などに必要と感じた」「だんだん年老いてくるので自動運転になれば嬉しい」といった声が挙がったようだ。
▼実証実験結果のご報告と報告会のご案内 – 浪江町
https://www.town.namie.fukushima.jp/uploaded/attachment/14371.pdf
■自動運転バス調査委員会のモニターアンケート
東京大学生産技術研究所次世代モビリティ研究センターや日本バス協会、SBドライブ(現BOLDLY)などで構成する自動運転バス調査委員会は2019年7月、東京都内でNAVYA ARMAを用いた自動運転バスの一般試乗会を実施した。
芝公園内の約150メートルのルートを低速走行する内容で、試乗者数は延べ157人に上った。参加者アンケートによると、乗り心地について「スムーズだった」と回答した割合は、発進時が86%、直進時に至っては96%と高い評価を得た。
自動運転に対する安心感では、「危険」と感じる人の割合は乗車前42%から乗車後には8%と減少したほか、運転士がいないことに対しても乗車前62%から乗車後25%に減少するなど、試乗を通じて安心感・信頼感が大きく高まったようだ。
無人の自動運転バスを利用したいかとの問いには、「利用したい」68%、「やや利用したい」32%と全員が前向きな回答をしている。一方、無人の自動運転バスにどんな不安があるかとの問いには、「事故時の対応」87人、「走行性能」60人、「車内の治安」52人、「車両の安全性」32人、「乗降時の介助」17人、「運賃の支払い方法」15人となった。
どのようなサービスがあったら便利かとの問いには、「携帯電話の充電」59人、「目的地施設の予約・整理券の発行」39人、「電車の遅延情報」36人、「病院の予約・受付」34人、「映画やTV、音楽」32人となっている。
▼2019年度 自動運転バス一般試乗会 実施レポート
https://www.softbank.jp/drive/set/data/press/shared/20190816_01.pdf
■Waymo Oneの口コミ・評価は?
2018年のサービスインから早3年余りが経過し、米アリゾナ州フェニックスでは自動運転移動サービスとして定着した感があるWaymo One。利用者も多く、スマートフォンアプリにも実際に利用した感想・口コミ・評価が多く寄せられている。
「対処すべきいくつかの問題があるものの、自動車革命における大きな一歩であり、私の人生で目撃できたことを嬉しく思う」と評する口コミをはじめ、「デラウェアで利用可能になる予定は?」「Waymoと自動運転の未来に興奮している。エリア拡大をしてほしい」といった期待の声も多い。
その一方、「最近、通勤経路に沿って工事が行われたためその地域が非アクティブ化されたが、工事終了後もサービスエリアから外れたまま戻らない」「自動運転車はラストワンマイルからトランジットへの接続に最適だが、ライトレール駅までのサービスを提供していない」「住宅地でのルーティングがおかしかった」といった不満の口コミも挙がっている。
高精度3次元地図の更新やルートの設定など、きめ細やかなケアにはまだまだ課題が残っているようだ。
また、「誰かが車内で常にビデオカメラを通してあなたを見ている」とプライバシー面を指摘する口コミもあった。現状、車内監視システムが必要不可欠であることは言うまでもない。無人タクシーとは言え、完全なプライベート空間ではないことと合わせ、車内の様子を把握することで安全性を高めたり、乗員のリクエストに応じたりすることが可能になる点などを周知する必要がありそうだ。
▼Waymo One|App Store
https://apps.apple.com/us/app/waymo/id1343524838?l=ja
▼Waymo One|Google Play
https://play.google.com/store/apps/details?id=com.waymo.carapp&hl=ja&gl=US
■【まとめ】モニターや先行事例を参考に効用の高いサービス実現を
国内実証では、最新技術に触れる喜びや楽しさが強い印象で、多くの実証で自動運転技術に対する高い期待が寄せられる結果となっている。今後、ドライバーレスや有料化など実用的なサービスに近づくにつれて厳しい声が増えてくる可能性がある。こうした声をサービスや技術開発にどのように反映させていくかが問われることになりそうだ。
サービス実装で先行するWaymoの口コミ・評価は、近い将来国内開発勢が浴びせられる意見にもなり得る。実証時のモニターや先行事例を参考に、効用の高い自動運転サービスが実現されることに期待したい。
■関連FAQ
好評な口コミと不満の声があった。好評な口コミとしては「エリアを拡大してほしい」「私の人生で目撃できたことを嬉しく思う」など、不満の声としては「住宅地でのルーティングがおかしかった」などだ。
「誰かが車内で常にビデオカメラを通してあなたを見ている」と指摘する口コミがあった。ちなみにこうした口コミ・レビューは、Waymo Oneのアプリダウンロードページ(
https://apps.apple.com/us/app/waymo/id1343524838?l=ja)などで確認できる。
自動運転バスの実証としてはかなり初期の2017年に行われた実証では、約7割の人が「安心」もしくは「ほぼ安心」して乗車できたとされている。基本的に技術レベルが高まるにつれ、試乗者の安心度も高まる傾向にある。
「遠隔操作時の変速がガクガクしてスムーズでない」「スピードが遅い」「遠隔操作では急な飛び出しや割り込みなど、緊急の対応が心配」といった声があった。
自動運転ラボが過去記事「自動運転の実証実験、結果一覧」(https://jidounten-lab.com/u_34323)で、結果が公表されている資料をまとめているので参考にしてほしい。
(初稿公開日:2022年5月13日/2022年5月27日)
【参考】関連記事としては「自動運転、歴史と現状(2022年最新版)」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)