自動走行ロボットは「1台3役」!?警備も配送も街の変化も

将来は複数サービスを同時提供可能に?



宅配ロボットを筆頭に、さまざまな自動走行ロボットの開発・実用化が進められている。現行のロボットの大半は1台のロボットが1つのサービスを担っているが、その特性を応用することで将来的には1台3役以上の活躍が期待される。


この記事では、自動走行ロボットの可能性に触れていく。

■多様化する自動走行ロボット
自動運転システムは提供サービスに左右されない
出典:パナソニック・プレスリリース

自律走行を可能とする自動走行ロボットは、宅配ロボットを筆頭にさまざまなタイプの開発・実用化が進められている。

公道を走行するモデルは、基本的にロボットに搭載したカメラやLiDARなどのセンサー類で障害物を検知し、回避しながら走行する。また、事前に整備した高精度3次元地図やGPSなどの測位システムを活用し、正確な自己位置を常時推定する。仕組みは自動運転車とほぼ同じだ。

京セラコミュニケーションシステムが開発を進めるモデルのように、車道走行を前提としたミニカー規格のものもある。


施設内などを走行する屋内用モデルも、一部システムが簡素化されているものもあるが基本的な仕組みは同一で、センサーで周囲の状況を認識しながら走行する。

工場内で用いられている搬送ロボットなどの中にはマーカを使用して走行ルートを認識するモデルも多いが、今後、センサー類を含む自動運転システムの高度化と低コスト化が進めば、最新の方式に置き換えられていくことも考えられる。

さまざまな種類のロボットが開発・実用化されているが、提供可能なサービスとは独立した形で自動運転システムは存在している。つまり、自動運転が可能な車体プラットフォームを開発すれば、各種サービス・機能を後付けする形で提供することが可能と言える。

【参考】自動配送ロボットについては「新規参入相次ぐ!自動配送ロボット、国内プレーヤーの最新動向まとめ」も参照。


提供サービス・機能のモジュール化が主流に?

自動走行ロボットは、宅配ロボットのほか、警備ロボットや清掃ロボットなど、その用途に合わせてさまざまな機能を搭載している。

宅配ロボットは、荷物や商品を積み込むことができるロッカーを搭載し、ワンタイムパスワードのように都度発行されるデジタルキーによって受取人が商品を取り出す。ロッカー部分はモジュール方式を採用するものも多く、複数のロッカーを備えるモデルも多い。

警備ロボットは、走行用のカメラなどのほか、AIで不審者や不審物を特定する技術や警報、赤外線カメラ、通報装置、温度センサー、煙センサーなど、さまざまな異常に対応するシステムが組み込まれている。

清掃ロボットは、バキュームクリーナーやブラシなどを搭載し、床面を掃除するモデルが主力だ。コロナ禍では、消毒機能を備えたモデルの注目も高まった。

清掃ロボットはやや特殊だが、宅配ロボットや警備ロボットなどは自動運転システムを搭載した車体プラットフォームに、各機能を盛り込んだ専用モジュールを乗せ換えることで多用途展開が可能になりそうだ。

こうした考え方は、開発各社が採用している。宅配ロボット「DeliRo(デリロ)」でおなじみのZMPは、警備ロボット「PATORO(パトロ)」に消毒液散布機能をオプション設定し、警備機能と消毒機能を両立させている。

ティアフォーは、自動運転機能を備えたベースモジュールと各種サービス機能を搭載したモジュールを分離可能な小型自動搬送ロボット「Logiee S1(ロージー・エスワン)」の開発を進めており、サービス機能モジュールはサイズや重量の規格を満たせばパートナーのニーズに合わせて作製することが可能としている。

自動搬送ロボット「X-Area Robo(クロスエリアロボ)」の開発を進めるパナソニックも同様に車両プラットフォームと多用途キャビンといった形式で開発を進めている。カスタマイズ例として、フードデリバリーや定期配送、無人移動販売や施設内移動サービス、無人警備サービス、ごみ回収サービス、移動サイネージなどを挙げている。

このように、自動走行ロボットの未来は多用途展開を見据えたものとなっているのだ。

■自動走行ロボットの多用途展開

ロボットならではのマネタイズが可能に

現段階では、自動走行ロボットの多用途展開において各機能・サービスは独立して提供するのが当然ではあるものの、主力となるタスクにサブタスクを加える形で並行してサービスを提供することも可能になるはずだ。

例えば、宅配ロボットにサブタスクとして警備・防犯機能や路面状況の点検機能などを追加することが考えられる。搭載するカメラを有効活用し、宅配業務で住宅地などを走行しながらカメラが捉えた不審者や路面の欠損情報などを随時通知することができる。

また、宅配後の帰路や空き時間などを活用し、本来の走行ルート以外を回り道する形で対象エリアを拡大することもできそうだ。

1台のロボットを効果的に多用途展開することができれば、それは収益増加に直結する。人間であればキャパオーバーとなる複数タスクも、ロボットならば負担なく遂行することができる。バッテリーなどの制限はつきものだが、ロボットならではのマネタイズ手法として一考の価値があるのではないだろうか。

■【まとめ】発想次第で大きな収益を生み出す

自動走行ロボットのモジュール化はスタンダードなものとなり、提供可能なサービス・機能は多様化していく。そして各種サービス・機能が確立すれば、複数タスクを同時に遂行することでビジネス性を高めていくアイデアがほぼ間違いなく登場するはずだ。

自律走行可能なロボットが有するポテンシャルは想像以上に高く、発想次第で大きな収益を生み出すことができそうだ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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