空飛ぶクルマって、正直「クルマ」じゃなくない?

地上走行ができない機体も開発されている



イギリスの名門自動車メーカーであるアストンマーティンが過去に発表した空飛ぶクルマのコンセプト=出典:アストンマーティン社プレスリリース

「空飛ぶクルマ」というワードを耳にすることが多くなった。しかし、実際に開発されている空飛ぶクルマは、道路を走行することを前提としていないケースも少なくない。

日本の国土交通省航空局も空飛ぶクルマについて、ある資料内で「『クルマ』と称するものの、必ずしも道路を走行する機能を有するわけではない」と説明している。


▼空飛ぶクルマについて|国土交通省航空局
https://www.mlit.go.jp/common/001400794.pdf

こうした現状を踏まえると、いま「空飛ぶクルマ」と括られて紹介されている機体は、いずれ呼び方が変わるかもしれない。

■本当に「空飛ぶクルマ」なのか?

いま世界各国で開発されている空飛ぶクルマの多くは、翼の部分を含めると横幅が広めであることが多く、この状態では公道を走れない。公道を走れない以上、「クルマ」と呼ぶのに違和感を感じる人もいるはずだ。

では、いったいどう呼ぶのが自然だろうか?空飛ぶクルマとして開発されている機体は、専門的な言葉を使うなら「eVTOL(イーブイトール)」と呼ぶのが自然だ。


eVTOLは「Electric Vertical Take-Off and Landing」の略で、日本語に直訳すると「電動垂直離着陸機」。文字通り、地面から垂直に離着陸可能な電動の機体のことを指す。

【参考】関連記事としては「eVTOLとは?「空飛ぶクルマ」の類型の一つ、開発盛んに」も参照。

■正真正銘「空飛ぶクルマ」と呼べる機体も

ただし、地上走行を前提とした空飛ぶクルマも存在する。例えばスロバキアのKlein Vision(クレイン・ビジョン)が開発した空陸両用の「AirCar(エアカー)」だ。公道走行用のスポーツカーのデザインから約3分で飛行用デザインに姿を変える。


2021年6月に、スロバキアのニトラ国際空港からブラチスラバ国際空港まで約35分の都市間飛行を初めて成功させ、空港に到着した後は機体をスポーツカーに変身し、市街地を走行してみせた。ちなみにAirCarを操縦するにはパイロットの免許が必要だという。

AirCarは2022年1月にスロバキア運輸局から耐空証明を取得し、これまでに少なくとも75時間のテスト飛行と220回以上の離着陸を実施している。すでに顧客から機体の注文も受け付けており、2023年後半から納入予定のようだ。

■現状の認識として・・・・・・

いずれにしても「空飛ぶクルマ」に関しては、「空だけしか飛べない機体もあれば、空と陸の両方に対応できる機体もある」ということを、現時点の認識として持っておいてほしい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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