ラストワンマイルの配送ルート最適化技術で注目を集める米Wise Systems。同社は2021年7月9日までに、日本法人としてWise Systems Japan合同会社を設立し、日本に進出したことを発表した。
今回の日本進出について、創業者のチャズ・シムスCEO(最高経営責任者)は「日本はラストワンマイルの競争が激しい世界でも有数の国で、日本の物流企業は日々努力を重ねている」とした上で、「しかしながら、AIを活用した輸送手段のノウハウの確立は、まだ道半ば」と指摘している。
そしてこうした状況を踏まえ、「Wise Systemsのようなプロバイダーが変革をリードするチャンスがあると考えている」と強調している。ちなみにカントリーマネージャーには、インテルなどでの市場開拓の経験を有する新井原慶一郎氏が就任している。
■MIT出身者らによって設立されたWise Systems
Wise Systemsは、マサチューセッツ工科大学(MIT)やハーバード大学出身者らが2014年に設立した企業だ。創業当初からラストワンマイルのオペレーションを効率化する技術の開発に力を入れ、業界で高い評価を獲得してきた。
同社の技術はすでにパッケージ化された上で商用展開されており、報道によれば、例えば米ビール製造大手のアンハイザー・ブッシュがすでに顧客であるほか、小売企業や食品企業などでの利用実績もあるようだ。
ちなみに同社は現在、米北東部マサチューセッツ州に拠点を置き、2017年から複数回にわたって資金調達を行っており、累計で2,300万ドル(約25億円)を調達しているという。
■日本国内でも開発企業は少なくない状況
Wise Systemsがこのほど日本進出を果たしたわけだが、日本国内でもルート最適化技術の開発に取り組んでいる企業は少なくなく、今後、国内勢と外国勢の競争が本格化しそうだ。
国内プレイヤーとしては、名古屋大学発のAIスタートアップ企業であるオプティマインドなどが挙げられる。同社はラストワンマイル向けのルート最適化クラウドサービス「Loogia(ルージア)」を提供しており、トヨタなどから資金調達し、世界展開も見据えている。
そのほか大手企業では、ゼンリンや日立などもルート最適化システムを開発・提供しているほか、「LogiSTAR配車管理簿」を展開するパスコなども同業となる。
■7年で2倍になる市場で勝つのはどの企業か
米調査会社Global Industry Analystsが2021年4月に出版したレポートによれば、ルート最適化システムの世界市場は2020年の36億ドル(約4,000億円)から、2027年には72億ドル(約8,000億円)まで拡大すると予想されている。7年で2倍になる計算だ。
こうした有望市場で最終的に勝ち残るのはどの企業か、注目していきたいところだ。
【参考】関連記事としては「ルート最適化システム、市場拡大の予兆 日本郵便でも試行導入拡大」も参照。