東京大学と名古屋大学、科学技術振興機構(JST)は2021年6月8日までに、自動運転技術を用いた「AI(人工知能)教習システム」を製品化したことを発表した。AI教習システムにより、教習所指導員の高齢化などによる人材不足の課題解決が期待できるとのことだ。
このAI教習システムは、東京大学大学院情報理工学系研究科の加藤真平教授らの研究グループの「完全自動運転における危険と異常の予測」についての研究の一環として取り組まれた。加藤氏は自動運転OSを開発するティアフォーの創業者であることでも知られる。
2022年6月からは、年間15万人以上の高齢者技能検査が見込まれているが、自動車教習所における人材不足により、高齢者講習が平均2〜3カ月待ちとなるなど、大きな課題となっている。AI教習システムを適用することでこうした課題の緩和に期待がかかる。
■運転行動の評価と危険予測が可能に
今回製品化されたAI教習システムでは、運転手の運転行動の評価とその評価に基づく危険予測を可能としている。具体的には以下のように説明されている。少し長いがプレスリリースからそのまま引用したい。
模範的運転モデル対象として自動車教習所の教習指導員に着目し、その運転行動をルール化した運転モデルを開発した。また、自動運転技術を用いてリアルタイムに得られる位置推定や障害物検知の結果を評価指標とすることで、開発した運転モデルを使い、ドライバーの運転行動の定量的な評価および評価に基づく危険予測を可能とさせた。
この予測に応じて自動でブレーキ制御を行うことで危険を回避する手法を確立し、これら評価手法と危険回避手法をシステム化することでAI教習システムを製品化した。
自動運転技術は自動車をドライバーレスで走行させるための技術であり、要素技術としては位置推定技術や障害物の検知技術が必要だが、今回はこうした技術を「教習」に応用させた形であると言えそうだ。
今回の発表については以下のページから詳しく閲覧することができる。興味がある人はぜひ読んでみてはいかがだろうか。
▼自動運転技術を用いた AI 教習システムの製品化~AI を活用した自動車教習で安全な交通社会の実現へ貢献~
https://www.jst.go.jp/pr/announce/20210514-2/pdf/20210514-2.pdf
【参考】関連記事としては「自動運転のリアルタイム制御に応用可!改良BVI法、国立情報学研究所の研究チームが開発」も参照。