株式会社東芝(本社:東京都港区/代表執行役社長CEO:車谷暢昭)は2020年7月9日までに、「自動運転の目」を呼ばれるLiDARに関し、ソリッドステート式向けに長距離測定と高解像度を実現する受光技術を開発したと発表した。
東芝は6月にオンライン開催された「半導体回路国際会議VLSIシンポジウム」でこの技術を発表したという。今後、さらに測定距離の延伸と高解像化、小型化を進め、2022年度までの実用化を目指していく。
■従来の4倍の長距離測定と高解像度化に成功
LiDARとは「Light Detection and Ranging」の略で、「ライダー」と読む。レーザ光を照射して跳ね返る時間を計測し、物体までの距離や方向を測定する。
LiDARの需要は今後大きく伸び、矢野経済研究所が発表した2018年7月の予測によれば、LiDARを含むレーザーの市場規模は2030年には約4959億円まで拡大するという。
【参考】LiDARについては「LiDARとは? 自動運転車のコアセンサー 機能・役割・技術・価格や、開発企業・会社を総まとめ|自動運転ラボ」も参照。
LiDARにはレーザと検出器を回転させて観測する「機械式」と半導体技術や光学技術で機構部を置き換える「ソリッドステート式」がある。機械式は小型・軽量・低コスト化が難しく、現在はソリッドステート式が多いが、長距離測定と解像度に課題がある。
東芝が今回開発した受光技術によって、超高感度受光デバイスSiPMの小型化を実現し、高解像度かつ従来の4倍となる200メートルの長距離測定が可能となったという。市販のレンズとの組み合わせも可能で、利用用途により生じる複雑なカスタマイズは不要となるようだ。
■「自動運転×東芝」、AIエンジニアの増員も
東芝は自動車やドローンの安全性の向上と自動走行・自律移動の実現に向け、2020年6月に自車両の動きを高精度に推定する「自車両の動き推定AI」と様々な交通シーンで他車両の動きを予測する「他車両の動き予測AI」を開発したと発表している。
自動運転領域での競争に勝ち残るため、優秀なエンジニアの確保にも重点を置いている。2022年度までにグループ内のAI技術者を現在の3倍の2000人まで増やす計画もある。
「自動運転×東芝」の取り組みに今後も注目だ。
【参考】関連記事としては「世界最高の「車の動き予測AI」、東芝が自動運転社会を近付ける」も参照。