ついに「部活動MaaS」なるものも登場!舞台は山口県美祢市

運行ルートはAIが自動作成



自動車や自転車、バス、電車など、さまざまな交通手段を個別の移動手段ではなく、1つのサービスとして捉え、シームレスにつなぐ新たな移動の概念を指すMaaS(Mobility as a Service)。


観光MaaSや医療MaaS、地方MaaSなど、MaaSにはさまざまな切り口があるなか、このたび、地域の中学生のための「部活動MaaS」なるものが登場した。

部活動MaaSの実証実験が始まるのは、山口県美弥市だ。山口フィナンシャルグループ のYMFG ZONEプラニングと、美祢第一交通 、モビリティ専門のIT企業であるREAが共同で実施する。

本事業は経済産業省に採択された「中山間地域における部活動地域移行~『部活動MaaS」による持続可能な地域移行モデルの検証事業~」の一環で、令和4年度「未来の教室」実証事業として、YMFG ZONEプラニングが事業を受託した。美弥市の協力のもと、車両の運行は美弥第一交通が担い、予約受付や配車システムはREAが提供するという。

■「部活動MaaS」って何?

この取り組みでいうところの部活動MaaSとは、市内複数の中学校による合同部活動の実施に際し、会場までの生徒の送迎を、AI(人工知能)デマンド乗合タクシーを活用して、効率のいいルートで各学校や自宅から会場までの生徒の移動を実現するものだ。


昨今、地方の学校では生徒数が減少していることから、学校単独での部活動の存続が危うい状態だという。そのため、複数の学校による合同部活動の実施が検討されている。

ただ、合同部活動では1カ所の練習場所に生徒を集める必要があり、その移動手段が課題となっていた。公共交通機関を利用すると待ち時間が発生して部活動の時間を確保できず、保護者に送迎してもらうにしても保護者に負担がかかるためだ。

生徒の送迎を実現するのと同時に、人口減により稼働が下がっているタクシー事業者の新たな移動需要を創出するとして、持続可能性の高いモデルの構築を目指すようだ。

出典:REAプレスリリース
■効率的な運行ルートをAIが自動作成

2023年1月13日〜21日の間の合同部活動実施日と、2023年2月25日に開催予定の美祢スポーツフェスティバルにおいて実証が行われる。合同部活動では美弥市内のソフトテニス部と野球部、バレーボール部の中学生が対象になる。スポーツイベントでは参加する小中学生と保護者が対象になる。


予約はREAが提供するAI(人工知能)乗合配車システムのウェブ予約専用アプリケーションから行う。行き先と運行便を選択し、地図上で乗降場所を選択すると、簡単に予約可能だ。運行便の運行エリアは美弥市全域だという。

予約の内容をもとに効率のいい運行ルートをAIが自動で作成し、タクシー乗務員へ通知するため、タクシー事業者は業務負担少なく乗合運行できるようだ。

今回の実証運行を通して、乗合タクシーがはたして合同部活動のスムーズな実施に実用できるかどうかや、同時に予約システムの利便性や利用にかかる金額の許容度などのアンケートを保護者に実施するという。部活動MaaSの利便性と持続可能性を探り、本格運行に向けて検討を進めていきたい考えのようだ。

■子供たちの部活動を支える存在に

人口減で部活動が合同で行われることは、都心部を除く地域では今後ますます増えていくだろう。部活動MaaSが全国に展開され、子どもたちが健やかに部活動に打ち込めることを期待したい。

【参考】関連記事としては「MaaSとは?(2023年最新版)」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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