総合商社の兼松株式会社(本社:東京都港区/代表取締役社長:谷川薫)と空飛ぶクルマの社会実装に取り組む英Skyportsは2021年5月9日までに、業務提携を拡大する覚書を締結したことを発表した。
空飛ぶクルマと言えば「機体開発」が花形と言えるが、Skyportsが取り組むのは「インフラ」の方だ。具体的には、Skyportsは空飛ぶクルマ向けの「Vertiport」と呼ばれる離着陸場の構築に取り組んでおり、離着陸場の設計・設置・運営までを担っている。現在の主な顧客は、世界各地のエアタクシー運航事業者や旅客・物流用の空飛ぶクルマ開発企業だ。
こうしたSkyportsと兼松は2020年、日本における空飛ぶクルマ向けのVertiportの構築に関して提携を結んだが、今回の提携拡大によって、日本における「ドローン物流」分野でも取り組みを進めていくという。
■社会実装には「インフラ」「ルール」も必要不可欠
空飛ぶクルマや物流向けドローンは、機体開発をするだけでは社会実装に至らない。Vertiportのような離発着場などの整備のほか、国と政府によるルール整備や規制改革も必要となってくる。
特に空飛ぶクルマや物流向けドローンの社会実装の初期段階では、安全・安心の観点から「どこでも・いつでも」という風な活用はされにくく、ヘリポートのような離発着場の必要性は高まる。兼松はこうした将来需要を見据え、Skyportsとの提携を拡大したとみられる。
また、空飛ぶクルマや物流ドローンは現時点では「航空法」の規制対象となり、安全性や信頼性に関する耐空証明が必要となる。ただし、空飛ぶクルマは航空機などと飛行高度が低いため、同じ水準の規制をかけるのはナンセンスという考え方が出ている。
一方で、空飛ぶクルマや物流ドローンが低空飛行中心になるということは、ビルや飛行動物などの検知性能などの必要性は増す。こうした実態に即したルール整備が必要になってくる。
■空飛ぶクルマの「裾野産業」にも注目を
空飛ぶクルマをビジネス的な観点でみるとき、機体開発そのものではなく周辺ビジネス、いわゆる「裾野産業」にも注目しておくべきだ。今回の両社の業務提携は、まさに空飛ぶクルマの裾野分野における注目ニュースであると言える。
【参考】関連記事としては「「空飛ぶクルマ」とは?2020年代に実現濃厚…基礎知識を徹底解説」も参照。