新潟市でのMaaS実証実験、住民の「生の声」はどんなだった?

「スマートモビリティチャレンジ」の実証結果を紐解く



経済産業省と国土交通省は、新しいモビリティサービスの社会実装を通じた移動課題の解決と地域の活性化のために、官民連携のMaaSプロジェクト「スマートモビリティチャレンジ」に取り組んでいる。

このプロジェクトにおいてはパイロット地域が選定されて各地域で取り組みが進んでおり、新潟県新潟市での取り組みにも注目が集まっている。最近公開された資料(事業を受託する野村総合研究所の資料)では、新潟市で実施された実証実験の結果が紹介されている。


どのような結果となり、実証実験に参加した住民からはどのようなフィードバックがあったのか。

■そもそも「スマートモビリティチャレンジ」とは?

具体的な新潟市の実証結果を紹介する前に、国の「スマートモビリティチャレンジ」について簡単に紹介しておこう。

スマートモビリティチャレンジは将来の自動運転社会も見据えた取り組みとして、経済産業省と国土交通省が2019年4月にスタートしたプロジェクトだ。先駆的な取り組みを進める地域を選定し、推進協議会による情報共有や助言などを通じて、取り組みが実現するよう支援を行っている。

モビリティサービスに関心のある自治体と企業の連携が促されるよう、推進協議会は地域ごとにシンポジウムも開催している。



■MaaSアプリ「りゅーとなび」とオンデマンドバスで実証実験

新潟市のMaaS実証実験は、MaaSアプリ「りゅーとなび」とオンデマンドバスの2つが実施され、新潟交通株式会社や日本ユニシス株式会社、にいがたレンタサイクル、新潟市が参加した。いずれも新型コロナウイルスの影響で積極的なプロモーションが難しい状況での実施だった。

MaaSアプリ「りゅーとなび」の実証結果

MaaSアプリ「りゅーとなび」の実証実験は2020年3月に1カ月間にわたり実施され、路線バス・レンタサイクル1日乗り放題乗車券として「市内全域1000円」と「均一区間内500円」の2種類が展開されるなどした。

決済はアプリ上でのクレジットカード決済のみ対応で、降りる時にアプリの乗車券画面を乗務員へ提示する形で運用された。アプリでは中心市街地の飲食店や物販店のクーポンも付与された。

実証実験の結果は以下の通りだ。アプリのダウンロード人数は686人で、「市内全域1000円」と「均一区間内500円」の利用実績は138件に上ったという。

出典:野村総合研究所

利用者からのフィードバックとしては「乗車可能な範囲を分かりやすく表示してほしい」「クレカ以外の決済手段が欲しい」「文字の大きさを変更できるようにしてほしい」「1日券だけではなく、数日間有効な企画券もほしい」といった意見があったという。

オンデマンドバスの実証結果

オンデマンドバスの実証実験は、2月25〜28日は無料で、3月2〜31日は有料で、いずれも平日の午前9時〜午後5時に運行する形で実施された。1回当たりの乗車は210円で決済は降車時に現金または交通系ICカードで精算する形をとった。

オンデマンドバスの予約はスマートフォンとコールセンターのどちらかで可能で、顧客から予約が入るとシステムが最適な配車ルートを選定される形で運行された。配車システムは公立はこだて未来大学発のベンチャー企業・未来シェア社が開発したものを活用した。

実証実験の結果は以下の通りだ。有料での実証実験では利用者数が徐々に増えており、予約方法はスマートフォンを利用するケースの方が多かった。

出典:野村総合研究所

利用者からのフィードバックとしては「オンデマンドバスについては地域のコミュニティの代表者などへの十分な事前説明がほしい」「オンデマンドバスは高齢者が利用するのに有用」「オンデマンドバスの運行エリアを拡大してほしい」といった意見があったという。

■【まとめ】フィードバックを活かす重要性

こうした実証実験を実施することで、実際に利用者からのフィードバックが得られることは、非常に意味がある。ユーザビリティ(使い勝手)が向上すれば、実際にサービスを商用化しても一定の支持を集めやすいからだ。

国が主導して進めるスマートモビリティチャレンジは、パイロット地域に選ばれた全国の都市で実証実験が実施されている。以下の資料ではほかの地域での実証結果にも触れられているので、MaaSへの関心が高い方はぜひ参考にしてほしい。

▼令和元年度 スマートモビリティチャレンジ パイロット地域の取組状況|野村総合研究所
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/smart_mobility_challenge/pdf/20200422_01_s01.pdf

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




関連記事