創業10年のAZAPA、自動運転技術に注力 掲げる「共創」の理念とは?

モデルベース技術で開発を効率化

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豊かな発想力や技術力を武器に自動運転の制御開発などを手掛けるベンチャーのAZAPA株式会社(本社:愛知県名古屋市/代表取締役兼CEO:近藤康弘)が創業10周年を迎えた。

既成概念にとらわれない柔軟な発想により自動車業界にイノベーションを起こす同社は、次の10年をどのような形で迎えるのか。今回はその開発力の原点に迫ってみよう。

■AZAPA会社概要

2008年7月に設立。オートモーティブ事業、エネルギー事業、インフォメーションテクノロジー事業、コミュニケーション&テクノロジー事業、研究開発事業を手掛けており、サスティナブル社会の実現に向け、再生可能エネルギーやエネルギー最適化を実現するソーシャルネットワーク、モビリティ・マネージメントによる新たな可能性とコミュニケーション・テクノロジーの実現を目指している。

本社とは別に、国内に「AZAPA R&D TOKYO」「AZAPA R&D NAGOYA」の開発拠点を設けているほか、グループ企業のAZAPAエンジニアリング株式会社では、自動車開発に特化した高度なエンジニアリングサービスと品質、コストマネージメントを実現する戦略的プロセス手法の提供や、独自カリキュラムによる育成、キャリアアップ・チャレンジを支援している。

一方、海外においては、中国自動車市場におけるテレマティクス開発やその運用を中心に、コンテンツやサービスの企画開発を行う「阿泽巴新能源汽车科技(常州)有限公司」(中国上海)、北米における最先端技術研究所として次世代を担う新技術の発掘と研究、インターネットと米国社会の動向分析などの情報収集と発信を行う「AZAPA R&D Americas」(米カリフォルニア州)の2カ所の事務所を設けている。

■AZAPAの理念

新興国市場への技術の提供によるゼロ資源からの脱却と自立への産業けん引、経済市場形成へと導くことを可能にすべく、高度な技術力と豊かな発想力によって連続性のイノベーションを起こすことを理念としている。

この理念実現に向け着手したのが、自動車開発のモビリティ(1日かけての水汲みなど、移動手段の提供により時間的余裕ができる)、エネルギー(風力発電などの自然エネルギーの利用)、インフォテック(大規模インフラを利用しなくても通信可能な無料キャリア)、コミュニケーション(市場形成に必要な人と人をつなぐコミュニティ形成)の4要素で、現状は、モビリティ事業を中心にエネルギーやインフォテック、コミュニティの事業を融合し、「人、マチ、クルマ、社会全体の最適化」の実現を目指している。

■AZAPAの事業展開
技術開発の方向性

自動車市場における価値創造について、ITと連携する走行制御や先進的なセンシングデバイスとの連携による協調制御を実現する機能システムのオープンイノベーション化と、モデルベース技術を基盤とするプロセス全領域でのイノベーションとソリューションとして捉え、自動車メーカーに技術提案している。

製品としては、制御システムやプロセスツール、計測システム、モデルベース、AI(人工知能)などが挙げられる。

AIに関しては、株式会社エイシングとの協業により、自動車制御に実装可能なAIアルゴリズム「Deep Binary Tree(DBT)」を利用したソリューションやサービスを提供している。DBTは強化型機械学習アルゴリズムで、世界初となるパラメーターレスで高速・軽量な実装を可能とし、従来品に比べ高い学習制度を実現しているという。

AZAPAはこのDBTアルゴリズムをビッグデータにおけるドライバー行動推定アルゴリズムや自動運転のEPS制御などに適応し、予測制御における自動車の新制御に関して付加価値の高い制御理論を提供している。

モデルベーステクノロジー

同社のオートモーティブ事業における武器がモデルベース開発だ。モデルとは、制御ロジック(ソフト)や制御対象(ハード)を、コンピュータでシミュレーション可能な数式やアルゴリズムで記述したもので、これらのモデルを利用した開発手法をモデルベース開発と呼んでいる。

自動車分野においては、このモデルベース開発手法を駆使し、自動運転関連やパワートレーンといった高度な技術知見を要する領域において、性能最適化や開発プロセス改革などのコアソリューションを提供している。

また、パートナー企業と連携し、開発プラットフォームの根幹をなすツール群の開発や販売、アプリケーションサービスを展開しており、イノベーションを実現する製品開発やプロセス改善、開発効率化の支援も行っている。

このほか、車両開発のコンセプトデザインからプロダクションまでの全工程において、機能システムを構成するECUとユニット、車載ネットワークのすべての整合性を担保し、性能・信頼性・安全性などあらゆる適合条件をクリアする車両設計も手掛けるほか、制御ソフトウェア開発やフィールドテスト、適合開発なども行う。

■他社との協業や提携 
パナソニックとの協業で電動パワートレイン開発にモデルベース手法適用

パナソニックとの協業のもと、EV(電気自動車)の電動パワートレイン開発にモデルベース開発の手法を適用することに成功したことを2017年5月に発表した。

この手法により、EVの電動パワートレイン・コンポーネントをモデル化し、シミュレーション上でEVの電費を最大化するパワートレイン仕様を早期に導き出せるようになり、カーメーカーへのシステム提案が強化されるとともに、従来の試作による仕様導出に比べ開発期間を大幅に短縮できるという。

なお、両者は協業関係をさらに深化・拡大するため、2018年4月に資本業提携したことを発表している。

【参考】パナソニックとの資本提携については「自動車ベンチャーのAZAPA、パナソニックと運転支援分野の開発などで資本提携」も参照。

三井物産との資本業提携で開発力強化へ

三井物産株式会社を割当先とする第三者割当増資を実施し、資本業務提携を行うことを2017年7月に発表している。この提携を通じ、AZAPAは①バーチャルとリアルを繋ぐ計測事業の強化②人と機械の融合を目指した自動運転を始めとする自律的制御システムの開発③モビリティサービスを始めとする都市インフラシステムにおける制御技術の適用―の3領域の強化を図る。

特に計測事業においては、自動車などの大規模なシステム性能、燃費などを擬似環境で試験する設備を保有することで、システムの全体最適化を実現する制御理論やモデルベース技術の飛躍的向上を目指すこととしている。

ブロックチェーン技術生かしたプラットフォーム開発へカウラとコンソーシアム設立

自動車・モビリティ分野のIoT化の進展に伴う新たなサービス創出のためのプラットフォーム形成を目指し、 ブロックチェーンビジネスを手掛けるカウラ株式会社とともに「オートモーティブブロックチェーンコンソーシアム(Automotive Blockchain Consortium)」を2018年8月に設立した。

コンソーシアムでは、ブロックチェーンに関わる基盤共通技術の検証、評価をはじめ、ブロックチェーン技術の適用を考える教育的環境の実現、IoTとブロックチェーンを融合した基盤プラットフォームの提供、自動車・モビリティ分野での標準化の推進を図っていく。

■研究・共創ソリューションで次の時代へ

同社の理念に同調し、国内外の自動車OEMメーカーやメガサプライヤーから多くの人材がAZAPAへ参画しているといい、豊かな発想と高い技術力が研究開発を力強く支えている。

また、自動車業界だけでなく自動車業界への参入を目指す新たな企業と結びつき それぞれのコア技術を融合させることでオープンイノベーションを生み出す共創ソリューションは、自動運転が本格化し、多種多様なビジネスやサービスが誕生するこれからの時代を切り開いていく大きな武器となる。

モビリティを取り巻く環境が大きく変貌するこれからの10年。同社の活躍の場はますます増えるだろう。

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