スポーツ用品大手のミズノが「空飛ぶクルマ」の領域に乗り出した。機体を開発する株式会社SkyDriveなどと「乗員用座席」の共同開発を始めており、既に性能確認試験をスタートさせている。
この乗員用座席の開発プロジェクトは、自動車用安全部品開発を手掛けるジョイソン・セイフティ・システムズ・ジャパンとSkyDriveの母体である有志団体CARTIVATORを加えた4者で進めているものだという。
■「ミズノウェーブ」の強みを乗員用座席に活用
CARTIVATORとSkyDriveは、道路や滑走路などのインフラを必要としない垂直離着陸型でコンパクトな空飛ぶクルマを開発しており、2023年の販売開始を目指している。
この空飛ぶクルマのパーツの中で乗員用の座席は非常に重要なものの一つだ。衝撃緩衝機能を備えられることで非常着陸時に衝撃から乗員を保護してくれるためだ。ただこれまでは既存の航空機用の座席は希少で入手が困難であることや使用想定に違いがあることが課題として挙げられていた。こうした課題を解決するため、4者はタッグを組んだようだ。
ミズノのシューズで採用されているクッション性と安定性を両立させる波形プレート「ミズノウェーブ」と、自動車のシートベルトやエアバッグなどの開発を進めてきたJSSJの見識を応用し、軽量で高性能な独自の「衝撃緩衝装置が内蔵されたシート」を開発するというプロジェクトで、1年間の研究開発を経て性能確認試験までこぎ着けたという。
試験の結果、ミズノウェーブは設計通りの性能を発揮し、乗員の腰椎の負担をかなり低く抑えられる可能性があることが分かったという。
ミズノグローバル研究開発部の技術監督である金子氏は「ミズノウエーブはシューズに内蔵された波形のプレートの波長や振幅を調整することで性能をコントロールするもの」とした上で、「要求されるエネルギー吸収量や許容される荷重が決まればそれに応じた形状を決定することが可能です」とコメントを発表している。
■【まとめ】異業種との協業がカギ
空飛ぶクルマの実用化は、ミズノの地面を走るシューズのための技術を空飛ぶクルマで活用するという柔軟な発想によって、また一歩前進した。こうした異業種間の協業は大きな可能性を秘めていることを改めて感じさせる。
【参考】関連記事としては「空飛ぶクルマとは? 仕組みや技術、必要なインフラなど|自動運転ラボ」も参照。