JALのCVC、自動運転や空飛ぶクルマなど開発の海外3社に出資

有望なスタートアップ企業と連携強化

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出典:JALプレスリリース

日本航空株式会社(本社:東京都品川区/代表取締役社長:赤坂祐二)=JAL=は2020年2月25日までに、将来有望なスタートアップ企業への投資を行うCVC(コーポレート・ベンチャーキャピタルファンド)の「Japan Airlines Innovation Fund」を通じ、空飛ぶクルマや自動運転車などの次世代モビリティを開発する海外企業3社に出資したと発表した。

JALは最近、これまでに培った安全運航に関わる知見などを有効活用し、事業領域を広げる取り組みに力を入れている。その一つとして「シームレスな移動・輸送を実現する、総合エアモビリティサービス」の提供を目指しており、このサービスへの貢献が期待されるVolocopter(本社:ドイツ/CEO:Florian Reuter)とBestmile(本社:スイス/CEO:Raphael Gindrat)、Fetch Robotics(本社:米国/CEO:Melonee Wise)の3社へ出資したという。

JALの専門組織「イノベーション推進本部 事業創造戦略部 モビリティグループ」による支援も行い、各社の最先端技術やビジネスモデルとの連携も深めていく方針のようだ。

■出資した3社の概要は?
左からVolocopter社のeVTOL、Bestmile社の配車管理システム、Fetch Robotics社の自動運搬ロボット=出典:JALプレスリリース
Volocopter(ドイツ):空飛ぶクルマを開発、将来的は自動航行も

ドイツのスタートアップであるVolocopter(ボロコプター)は、「空飛ぶクルマ」の製造企業だ。2017年にドバイで飛行試験を実施し、2019年10月にはシンガポールで空飛ぶタクシーの有人試験飛行を成功させた。将来的には自動運転による飛行も見込んでいるという。

具体的に開発しているのは2人が乗車可能な「有人マルチロータードローン」で、ヘリコプターのような形状をしており、2020年代前半に商用機の製造・販売を目指している。

Bestmile(スイス):自動運転車など向けのサービス開発プラットフォームを提供

スイスで2014年に設立されたBestmile(ベストマイル)は、自動運転車両やEV向けのモビリティサービス開発プラットフォームを提供しており、2017年には日本にも拠点を置いている。2016年にスイスのバレー州シオンで行われた世界初の自動運転バス実証実験では、Bestmileの車両自動運行システムが採用されたという。

Fetch Robotics(アメリカ):自律移動ロボットを開発

Fetch Robotics(フェッチ・ロボティクス)はアメリカ・カリフォルニア州に拠点を置く、自律移動ロボットを開発する企業だ。ロボットオペーレーティングシステムの開発で知られているウィローガレージ社からスピンアウトしたチームによって2014年に設立され、倉庫や工場など、大規模な施設内における自動運搬ロボットや管理プラットフォームを開発しているという。2017年にソフトバンクから出資を受けたことでも知られている。

■JALのモビリティ分野におけるこれまでの取り組みは?

JAL本体もモビリティ分野に注力しつつある。2020年1月には兵庫県養父市と、ドローンを活用した地域課題解決を目指す連携協定を締結している。業務用ドローン開発を手掛けるテラドローンの技術協力の下、緊急時などに輸送が困難となる山間地域への新たな物流サービスを構築する目的だという。

2月には、住友商事とともにeVTOL(電動垂直離着陸機)機材を開発する米Bell Textronと業務提携を発表した。アジアでeVTOL機材を使った「空飛ぶクルマ」サービスの提供や新規事業の創出、次世代インフラ事業の開発などに向け、共同研究を推進していくようだ。

空のイノベーションをJALが主導していくのか、今後も引き続き関心を寄せていきたい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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