中国IT大手の百度(バイドゥ)は2021年5月13日までに、運転席無人の自動運転タクシーを北京でローンチした。実験的に無料でサービスを行うのではなく、乗客からはしっかりと運賃をとる。運転席無人の自動運転タクシーサービスを有料提供するのは、中国で初だ。
百度がこれまで中国のさまざまな都市で実証実験に取り組んできたことを考えると、今後続々と各都市で同様のサービスを展開していくはずだ。「運転席無人×有料」で中国で一番乗りとなった百度。今は「運転席無人」だが、リモート監視のみの車内の「完全無人」を実現する日も近いと思われ、完全無人の自動運転タクシーの展開、そして「全土制覇」も一番乗りとなるか、注目だ。
■スマートフォン用アプリ「Apollo Go」で配車依頼
百度の自動運転タクシーは、北京市郊外の大型公園「首鋼園」でサービスが始まった。運行エリアの広さは2.7平方キロメートルで、タクシーの乗降ステーションを8カ所設置。使用車両は、中国自動車大手の第一汽車集団(FAW)の乗用車「紅旗」をベースにした。
利用料金は30元(約500円)。利用者はスマートフォン用アプリ「Apollo Go」で車両を呼び、データコードを使って車両のドアを開ける仕組み。車両に乗り込んだあとは、シートベルトをすると発進するという。
走行時はリモートで監視され、緊急時にもリモートで運転支援が行われる。運転席は無人となるが、助手席には「サービス員」が座っている。また、百度は500台の自動運転車両を現在保有しているという。
■中国政府が百度を強力にバックアップ
百度は2017年、自動運転車の開発や実用化に向けてソフトウェアプラットフォームをオープンソース化するプロジェクト「Project Apollo(阿波羅)=アポロ計画」を発表した。
アポロ計画には中国の自動車メーカーのほか、トヨタやホンダ、フォード、フォルクスワーゲン、ダイムラー、BMW、ボルボなどの自動車大手や半導体大手が参画している。
一方で上記のような企業間連携とは別に、単体の企業として中国政府から強力な後押しを受け、2019年ごろから自動運転車の開発や実証実験に本格的に取り組んできた。
2020年10月から北京の海淀区や順義区などで実証運転を始め、12月には北京で運転席無人の自動運転車の公道走行試験の許可を得たことを発表した。そして今回、有料の無人タクシーサービスを開始した形だ。
■【まとめ】展開スピードはWaymo以上か
自動運転タクシーの「世界初」は米Google系の自動運転開発企業Waymoに譲ったものの、中国政府の強力なバックアップや百度の独自の開発ネットワークにより、展開スピードはWaymoに勝ることも十分に考えられる。
中国以外での展開も大いにありえそうだ。今後も動きに注目したい。
【参考】関連記事としては「中国・百度、自動運転EV量産で4700億円の巨額収益!?オープンソースのアポロの市場化狙う」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)