AGV(無人搬送車)開発、国内市場を制する企業は!?有望8社を紹介

大手やベンチャー、「誘導型」や「自律型」で開発

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工場や倉庫での作業の省人・無人化に向け、「AGV」(無人搬送車)の導入が近年加速しており、日本国内でもAGVの開発に注力している企業は少なくない。今後の市場拡大が見込まれるこの分野で、どの企業が業界をリードしていくのか注目が集まる。

この記事では、フォークリフト型を除いたAGVを開発する日本国内の大手企業やスタートアップ企業の一例を紹介していこう。

トヨタL&F:エントリーモデルからハイパワーモデルまで

トヨタL&Fは、必要な機能を自由に選択・後付け可能な「キーカート」や、低床式の自走牽引車「タグカート」、無人搬送台車「ロードソーターS」などをAGVとして展開している。

キーカートはAGVのエントリーモデルという位置付けで、AGVを低価格で導入できる点が特徴だ。タグカートは「低床」「コンパクト」「ハイパワー」が特徴で、磁気テープを貼る方式で自律走行が可能となっている。

■ZMP:物流支援ロボットとして「CarriRo AD」を展開

ロボットベンチャーのZMPは、物流支援ロボットの自律移動モデル「CarriRo AD」を手掛けている。CarriRo ADはZMPが自動運転事業で培った画像認識技術を応用し、「CarriRo Visual Tracking」という方式で自律移動を実現している。

ZMPの公式サイトによれば、すでに工場や倉庫、宿泊施設、空港など170社以上の拠点で導入されているという。

■リコー:市販の黒いビニールテープを使う誘導方式で走行

リコーは「リコー無人搬送車M2」を展開している。リコー無人搬送車M2は磁気式ではなく光学式を採用しており、市販の黒いビニールテープを使った画像認識誘導方式で走行する。手軽かつコストを抑えて走行経路を設定できるのが特徴だ。

狭い場所でも小回りが効くようコンパクト設計が意識されており、90度と180度のターンもできるAGVだ。

■LexxPluss:細かな作業工程に強調する「ハイブリッド制御技術」
出典:LexxPlussプレスリリース

2020年3月設立のスタートアップであるLexxPluss(レックスプラス)は、「ハイブリッド制御技術」を実装した自動搬送ロボットハードウェア「LexxHard」を、AGVとして開発している。

LexxHardは、ロボットが細かい作業工程に協調する「ハイブリッド制御技術」を実装していることが特徴だ。さらに、他社製品と変わらぬ牽引力や搬送能力を維持しながら、60センチ×60センチという業界最小クラスのコンパクトさを実現している。

【参考】関連記事としては「倉庫向け自動搬送ロボのマーケットが熱い!LexxPlussが新規参入」も参照。

■ジャロック:ライン工程に合ったAGVシステムを設計・構築
出典:ジャロック公式サイト

1963年創業のジャロックは、さまざまなライン工程に合ったAGVシステムを設計・構築しているメーカーだ。

ジャロックのAGVシステムには「取り付け容易」「コストが安い」「メンテナンス容易」という特徴があり、経路は固定ではなく好きなコースを磁気テープで自由に作り、変更も自由に行える。

■タクマ精工:1台で手押しとAGVの二役をこなす「TC-900S II」
出典:タクマ精工公式サイト

1983年に無人搬送車の開発をスタートさせ、1985年に初代AGV「TC-900S」を発売したタクマ精工。以降、8,500台を超えるAGVを販売してきた。現在は手押し台車としてもAGVとしても利用できる「TC-900S Ⅱ」などを展開している。

ちなみにTC-900S Ⅱの誘導方式は「光学」「磁気」「光学磁気併用」の3タイプで、進行方向に対し前進のみ行う。積載量100キロの際の走行速度は毎分25メートルで、連続8時間稼働可能だ。約1度の傾斜ならのぼることもできる。

■ダイヘン:ガイドレス走行が可能な自律搬送台車「AiTran」

1919年設立の電力機器大手ダイヘンは「まるで人がモノを運ぶように、自在に、臨機応変に。」というコンセプトの自律搬送台車「AiTran」を展開している。

磁気や光学のガイドテープや人による教示を必要とせず、センサーフュージョンにより自己位置を判定し、誤差2センチの高精度なカメラセンシングで自律走行を可能にしている。障害物を感知すると、必要に応じて自動で減速・停止する。タブレット上でルートの設定や変更ができ、1つのタブレットで複数台を管理・制御できる。

■日本電産シンポ:2016年から無人搬送台車「S-CART」を展開

日本電産子会社の日本電産シンポは、地図をベースに自己位置を推定しながら走行するガイドレス無人搬送台車「S-CART」シリーズを2016年から展開している。地図では、走行エリア内の扉や窓、天井の模様、荷物、蛍光灯などの特徴物が活用される。

S-CARTは複数のタイプがあり、このうち「S-CART-V100」は最大積載量は100キロ、連続稼働時間は8時間、高さ20センチの低床タイプ。他にも、搬送重量500キロで連続稼働時間が4時間、高さ30センチの「S-CART500」などを展開している。

■【まとめ】今後は「自律型」のAGV開発が増えていく可能性

AGVに関しては、現在は技術的にも容易な「誘導型」の開発・導入事例が多いものの、レイアウト変更にも柔軟に対応できる「自律型」のAGVの開発に力を入れているメーカーも増えてきている印象だ。今後も国内企業の開発動向に注目していきたい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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