米国で自動運転に関する「初の連邦法」誕生に向けた動きが、ついに具体的なステージに入った。2026年2月10日、下院エネルギー商業委員会の小委員会が「SELF DRIVE Act of 2026(H.R.7390)」を全体委員会に付託することを12対11の1票差で可決した。
法案が成立すれば、現在の自動運転車のテスト上限が2,500台から一気に9万台へと拡大し、各州独自の自動運転規制を連邦法が上書きできる仕組みも導入される。ロボタクシーを含む自動運転車の普及は、この連邦法の成立によって一気に加速するとも見られる。ただし成立確率はGovTrack推計でわずか3%と見られる。2017年・2021年と2度にわたって成立しなかった「幻の連邦法」が3度目の挑戦でどこまで進むか、業界の視線が集まっている。
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■自動運転の「連邦法」とは
米国初の自動運転専門の連邦法を目指す法案が、2026年2月5日に下院に提出された。正式名称はSELF DRIVE Act of 2026(Safely Ensuring Lives Future Deployment and Research In Vehicle Evolution Act of 2026、H.R.7390)。共和党のBob Latta下院議員(オハイオ州)が単独で提出し、同月10日に下院エネルギー商業委員会の小委員会(Commerce, Manufacturing and Trade Subcommittee)から全体委員会への付託が12対11の僅差で可決された。
「連邦法」を簡単に説明しよう。現在、自動運転に関する規制は米国50州がそれぞれ独自に設けており、カリフォルニア州ではAIの安全ライセンスが必要だがテキサス州は不要、といった「パッチワーク状態」になっている。SELF DRIVE Actが成立すれば、連邦政府が全米統一のルールを定め、州法より上位の基準として機能することになる。自動運転業界にとっては「1つのルールで全米を走れる」という意味で、ゲームチェンジャーとなりうる法案だ。
なお2026年1月の討議草案段階では民主党のDebbie Dingell議員(ミシガン州)も関与が報じられていたが、正式提出はLatta議員単独だ。同様の法案は2017年と2021年にも提出されたがいずれも成立しなかった。2017年版は下院を通過したものの上院で頓挫し、2021年版は委員会止まりだった。今回が3度目の挑戦となる。GovTrackの推計では委員会通過確率が13%、最終的な成立確率は3%と厳しい見通しだが、法案の中身は過去版から大きく進化している。
■法案の3つの柱
法案の核心は3つの仕組みだ。第1は「テスト上限の大幅拡大」。現在はNHTSA(米国運輸省道路交通安全局)の規制により、連邦自動車安全基準(FMVSS)に準拠しない自動運転車の年間展開台数は2,500台に制限されている。法案が成立すれば、この上限が一気に9万台へと引き上げられる。
第2は「連邦先制(Federal Preemption)」。メーカーが安全ケースを作成・提出すれば、州が自動運転車の展開を禁止・制限する州法を連邦法が上書きできる仕組みだ。ただし渋滞管理や車両の販売・修理・サービスに関する州法は上書きの対象外とされている。第3は「自己認証(Self-certification)」だ。メーカーが自ら「安全ケース」を作成して安全性を証明する仕組みで、批判する側のCenter for Auto Safetyは「企業が問題を自分で作って自分で採点し、外部に見せなくてよい仕組み」と表現している。NHTSAへの提出義務の有無については法案テキスト上も解釈が分かれており、論点の一つとなっている。
【参考】関連記事としては「自動運転タクシー(ロボタクシー)とは?アメリカ・日本・中国の状況は?」も参照。
■「9万台」ロボタクシー市場への直撃
現在の2,500台という上限は、自動運転業界の拡大を阻む最大のボトルネックの一つだ。Waymo(ウェイモ)はJaguar I-PACEやZeekrミニバンを使ったロボタクシーを展開しているが、専用設計のステアリングなし車両を商業運用するにはFMVSSの例外申請が必要で、その上限が2,500台となっている。
9万台への拡大が実現すれば、テスラのCybercab(ハンドル・ペダルなしの専用ロボタクシーEV)の商業展開、WaymoやAuroraによる全国規模のフリート拡大が一気に現実味を帯びる。また2026年版のSELF DRIVE Actは2017年版と異なり、自動運転トラックも適用対象に含まれており、自動化された大型トラックの商業展開にも道を開く内容となっている。
■ホンダは支持、保険業界・消費者団体が警戒
法案への賛否は業界ごとにくっきりと分かれている。最も明確な支持声明を出したのがホンダだ。ホンダのJennifer Thomas上席副社長は「自動運転技術における単一の全国基準(a single national standard for automated vehicle technology)の確立に向けたLatta議員の取り組みを称賛する」と表明した。Waymo・Aurora・Nuroといったロボタクシー各社も支持側に回っている。
一方で懸念を示したのが保険業界と消費者団体だ。米国物件傷害保険協会(APCIA)は「現行の文言では州法を広範に上書きする可能性がある」として現状では反対を表明。全米相互保険会社協会(NAMIC)も「保険規制まで州から奪われる可能性があり懸念している」とした。消費者団体Center for Auto Safetyは「自己認証はメーカーが自分で採点する仕組みで独立した検証がない」と強く批判した。
■「Stay in Your Lane Act」という対抗法案
SELF DRIVE Actへの対抗として、2025年12月に上院でも別の法案が動き出している。民主党のEdward Markey上院議員(マサチューセッツ州)とRichard Blumenthal上院議員(コネチカット州)が提出した「Stay in Your Lane Act(S.3536)」だ。この法案は、自動運転技術が安全に動作するよう設計された走行設計範囲(ODD)の外では作動させないことをメーカーに義務付ける内容で、SELF DRIVE Actとは真逆の規制強化を志向している。Reason誌は「どちらの側も『自分たちのほうが安全』と主張しているが、実際の安全データに基づく議論になっていない」と分析している。
■カリフォルニアとNYが戦場になる
法案の中で最も大きな論争を呼んでいるのが連邦先制条項だ。Sidley Austin法律事務所のAdam Raviv弁護士は「各州の自動運転規制という『パッチワーク』をズタズタに切り裂く」と表現しており、FreightWavesも「州レベルの規制を法的に無効化し、自動運転トラックが高速道路を走るための法的確実性を与える」と分析している。
具体的に影響を受けるのはカリフォルニア州とニューヨーク州だ。カリフォルニア州はDMV(車両管理局)が独自の自動運転ライセンス制度を持っており、連邦法の先制条項と衝突する可能性がある。NYはまさにWaymoのテスト許可が更新されず事実上の撤退状態になっているが、連邦法が成立すれば州の拒否権がなくなる可能性がある。ただし法案テキストには「渋滞管理」「販売・修理・サービス規制」は上書き対象外という例外も設けられており、実際の適用範囲は法解釈次第だ。
【参考】関連記事としては「Waymoの自動運転タクシー、NYから追放か」も参照。
■3度目の正直か、また幻か。
GovTrackが推計する3%という成立確率は低く見えるが、業界関係者が注目するのは「Surface Transportation Reauthorization(道路交通法再授権)」への抱き合わせシナリオだ。Sidley Austinの分析によると、2026年中に議会で扱われる大型の道路交通法案の更新にSELF DRIVE Act of 2026の条項を組み込む形での成立が現実的なルートとして浮上している。
後押しとなりうるのは「中国との競争」という論点だ。Fox Newsの報道でもLatta議員らは「自動運転技術で米国が世界をリードするための法案」と強調しており、超党派的な支持を得やすい文脈がある。一方でチームスターズ(全米トラック組合)は公式声明こそ出していないが、その方針は「全車両に人間オペレーターを」であり、自動運転トラックを適用対象に含めた今回の法案には潜在的な反発要因となりうる。
【参考】関連記事としては「自動運転はいつ実用化?レベル・モビリティ別に動向・有力企業を解説」も参照。
■日本の自動運転行政への示唆
米国の連邦法が成立すれば「9万台という規模」と「州法の上書き」という2点で世界の自動運転展開の加速剤になる。Waymoはニューヨークで州の許可更新がされず事実上の撤退状態にあるが、連邦法が成立すれば州単位の拒否が難しくなる。日本にとっての示唆は大きい。日本も47都道府県が異なる対応を取りうる「規制のパッチワーク」問題を潜在的に抱えており、国主導での統一基準整備という点で米国の議論は重要な参照事例だ。
成立確率3%という数字に惑わされず、「どんな法的フレームワークが自動運転の普及に必要か」という本質的な問いを、米国の議論を通じて日本でも深めていくことが求められる。SELF DRIVE Actが3度目の挑戦で成立するか、それとも大型法案に抱き合わせで生き残るか、その行方を引き続き注目していきたい。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)