Waymoの自動運転タクシー、NYから追放か

無事故でも追い出される事態に

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出典:Waymoプレスリリース

Googleの親会社Alphabetが出資するWaymo(ウェイモ)がニューヨーク市で進めていた自動運転タクシーのテストが、市と州の許可証の失効とともに事実上ストップした。

許可の更新には市と州の双方の承認が必要だが、州のDMV(車両管理局)の許可が2026年3月31日以降更新されなかったことが直接の引き金となった。さらにゾラン・マンダニ市長も許可更新について明言を避け続け、「Waymoがニューヨーク市に来れば、働く人を守る市政府とも向き合うことになる」と述べた。2021年にニューヨーク・タクシー労働者同盟とともに15日間のハンガーストライキを経験したタクシー運転手の「同志」とも言える市長のもとで、Waymoの前途は依然として不透明だ。

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■Waymoの自動運転タクシー、無事故でもNYで停止

Waymoがニューヨーク市で自動運転タクシーのテストを始めたのは2025年8月のことだ。前市長エリック・アダムス政権下のDOT(交通局)が許可を出し、マンハッタン(112丁目以南)とダウンタウン・ブルックリンでJaguar I-PACE 8台が走り始めた。いずれの車両にも安全担当の訓練を受けた専門家が同乗していた。

なお2021年にもWaymoはNYCにChrysler Pacificaミニバンを持ち込んでいたが、あれは手動によるマッピングとデータ収集のみで、自律走行技術のテストは行われていない。2025年の許可がNYCで初めて自律走行技術の公道テストを正式に認めたものだ。

許可は2025年末まで、さらに2026年3月31日まで段階的に延長された。しかし3月31日を迎えても更新はなく、Waymoのテストは停止した。NYCでのテストには市のDOTと州のDMVの2つの許可が必要で、DMV의 許可が更新されなかったことが直接の引き金となった。WaymoはDMVの許可が更新された場合に市内での展開を再評価すると表明しているが、州の動向も市と同様に厳しい状況だ。テスト期間中にWaymoの自動運転タクシーは一件の事故も報告しなかったとNYC DOTは確認している。

【参考】関連記事としては「Googleの自動運転、またバスを無視!直らない「欠陥」も参照。

■マンダニ市長は明言を避ける

今回の事態の政治的な核心にいるのがゾラン・マンダニ市長だ。2021年、マンダニ氏(当時州議会議員)はニューヨーク・タクシー労働者同盟(NYTWA)とともに15日間のハンガーストライキに参加した。タクシーメダリオン(営業権)の借金に苦しむ運転手たちの救済を求めた行動で、マンダニ氏はこの「同志」としての実績を選挙戦でも前面に打ち出した。タクシー運転手組合からの強力な支持を受けて市長に当選した人物だ。

Waymoの許可更新について問われたマンダニ市長は「非コミタル(明言せず)」の姿勢を貫いた。「Waymoがニューヨーク市に来れば、働く人を守る市政府とも向き合うことになる。タクシー運転手たちは中流階級への夢を与えられながら、長年にわたって足をすくわれてきた」と述べており、明確な拒否は表明しないまま事実上のプレッシャーをかけた形だ。市のCity Hall広報担当はTHE CITYの取材に対してコメントを返さなかった。

18万人のタクシードライバーという政治的な重さ

ニューヨーク市のTLC(タクシー・リムジン委員会)は約18万人のドライバーにライセンスを発行している。UberやLyftドライバー8万人超が加盟するIndependent Drivers Guildは自動運転テストおよびサービスの禁止を求める2万人超の署名を集めており、NYTWAのバイラビ・デサイ事務局長はモラトリアム(猶予期間)の設置を要求している。この規模の有権者基盤が持つ政治的な重みは、どんなロビー資金よりも重かった。

【参考】関連記事としては「Google/Waymoの自動運転戦略まとめ ロボタクシーの展開状況は?」も参照。

■4億5,000万円超のロビー活動が効かなかった理由

Waymoは2019年以来、市・州当局へのロビー活動に300万ドル(約4億5,000万円)超を投じてきた。The Parkside Groupに月1万5,000ドル(約225万円)で2026年9月まで契約を継続しているほか、Bolton-St. Johns・Kasirer・CMW Strategies・Brown & Weinraubといった複数のロビー会社も過去に関与した。2021年には州議会で「自動運転車に人間ドライバー不要」とする法案も提出されたが未だ進展はない。

さらに州知事のキャシー・ホークル氏も2月、州予算案にニューヨーク市外での自動運転車展開を可能にする提案を盛り込もうとしたが、労働組合とライドシェアドライバーの即座の反発と議会の支持不足を受けて撤回した。Waymoはブロンクス・コミュニティ・カレッジとの連携(自動運転産業での雇用創出を訴える取り組み)など市民へのアプローチも続けてきたが、「雇用を奪う技術」というイメージを覆すには至らなかった。

■事故ゼロなのになぜ追い出されたのか

今回の事態が示す最も根本的な問いはここにある。テスト期間中に一件の事故も起こさなかったWaymoが、なぜ許可を更新されなかったのか。答えは「自動運転の安全性」と「雇用への影響」は別次元の問題として扱われているからだ。

Streetsblogの交通専門家は「将来の許可には安全データの独立した開示を条件にすべき」と主張し、Waymoがテスト結果を公開しなかったことも批判された。一方でWaymoのロビー活動への批判は「安全性の問題ではなく、18万人の仕事を守りたい」という政治的動機によるものだ。技術的に安全であることと社会的な受容性は別の話であり、これが自動運転普及における「本当の壁」だとBloombergは分析している。

■Waymoの次なる打ち手

Waymoは撤退を宣言したわけではない。「数千人のNY市民がWaymoを体験し、地元でも利用したいと言っている。州知事の決定には失望したが、完全自律型車両をNYに届けるため州議会と取り組み続ける」と表明している。

一方でWaymoの世界展開はNYとは無関係に加速している。共同CEOのドミトリ・ドルゴフ氏は現在週50万回の有料乗車を提供、年内に100万回を目指すと語る。次の国内展開はワシントンDCで、さらに18都市への拡大計画がある。ロンドンでも約100台のJaguar I-PACEを使った公道テストを2026年4月に開始しており、2026年内の商用サービス開始を目指している。NYという一都市の「一時停止」が大局に与える影響は限定的とも言える。

州議会議員のブライアン・カニンガム氏は「最初である必要はない。最高でなければならない」と述べており、慎重ながら自動運転への理解を広げようとしている。議員本人はすでにアトランタでWaymoを試乗済みで、同僚議員をフェニックスへのデモに連れていく計画も持つ。NYの「扉」が完全に閉まったわけではない。

【参考】関連記事としては「Waymoついにロンドンで自動運転テスト、日本は遅れ続けるのか」も参照。

■働く人への配慮の視点も重要に

今回のNY撤退は自動運転技術の問題ではなく、社会・政治の問題として起きた。タクシー運転手の雇用と自動運転の普及は技術の進歩だけでは解決できない問題であり、NYのケースはその縮図だ。Bloombergは「NYの一時停止が他の都市への警告メッセージになりうる」と指摘しており、世界の自動運転業界にとっての教訓が詰まっている。

日本においても、タクシー会社・配車サービスドライバーの雇用問題は自動運転普及の前に立ちはだかる課題として共通する。技術が社会に受け入れられるためには、安全性の証明だけでなく「働く人への配慮」という視点が不可欠だ。WaymoがNYの扉を再び開けられるかどうかは、技術力ではなく社会との対話にかかっている。その歩みを期待を持って見守っていきたい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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