自動運転と「AIDV」(AI Defined Vehicle)の関係性解説

SDVに早くも進化系?

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自動車のコンピュータ化が進展する中、ソフトウェア・ファーストの「SDV(Software Defined Vehicle)」が黎明期を迎えようとしているが、開発先行勢は早くも進化系となる「AIDV(AI Defined Vehicle)」の研究開発に着手しているようだ。いずれ訪れる自動運転時代には、このAIDVがスタンダードな存在となるのかもしれない。

AIDVはSDVをどのように進化させたものなのか。自動運転技術とどのような関係となるのか。その概念について解説していこう。

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■AIDVの概要

昔の自動車はソフトウェア知らず

「マイカーを自分好みにカスタマイズしよう」と思ったとき、あなたは何を考えるか。それほどクルマに詳しくなければ、タイヤを変えたりドレスアップパーツを付けたり、ドラレコを付けたり…といった簡易なカスタムを想像するのではないだろうか。

クルマに詳しくなるにつれ、サスペンションを変えたりマフラーを変えたり、オーディオ機器をいじったり、シートを交換したり……とカスタマイズの幅は広がっていく。エンジンを乗せ換える人もいるだろう。

これらのカスタムは総じてハード面のカスタムであり、基本的にソフトウェア部分をいじることはできない。「ECUを云々して……」といったものは完全に専門的領域であり、個人が手を出すべきではない領域と言える。

ソフトウェアのカスタマイズは、安全性を考慮すると自動車メーカーの専売特許であるべき領域なのだ。

電子化の進展とともに搭載ECUが急増

旧来の自動車は「機械」であり、制御面において特にソフトウェアをいじる必要はなかったが、電子化の進展とともに各所にECUが搭載されるようになった。

ADASの搭載やコネクテッド化などでこの流れは大きく進展し、自動車のコンピュータ化が進行している。これが現在地だ。

ソフトウェアへの依存度が高まったものの、基本的には各要素が個別に設計されており、統合的に管理するには不向きな仕様となっている。パソコンで言う「OS」は存在せず、各プログラム・ソフトウェアが個別に機能するようになっているのだ。

自動車をコンピュータ化、ソフトウェア・ファーストの時代に突入

このばらばらのソフトウェアを一体的に管理可能にするものがSDVだ。すべてを管理可能なOSを搭載し、一体的に制御を行う仕様だ。自動車の制御系やインフォテインメントシステムなど各要素の機能・性能がソフトウェアによって定義され、ソフトウェアを更新することでその機能を変えることができるようになった。ソフトウェア・ファーストのクルマだ。

SDV化により、後付けによる機能追加・アップデートが容易になり、基盤が共通化されているため開発もスムーズに行うことが可能となる。

ソフトウェア更新によって機能を変えられるため、自動車のオーナーの特性や趣向に合わせたカスタマイズも容易となる。こうしたカスタマイズがメニュー化されていれば、車載システムからオーナー自身が「走行モード」を選ぶような形でカスタマイズすることも可能になる。

クルマがコンピュータ化、パソコン化したようなイメージで、開発者サイド、ユーザーサイドともに各機能へのアプローチが容易になり、クルマを柔軟に進化・カスタマイズする道が拓けた。

SDVとは?トヨタやホンダの日本車にも搭載?自動運転化との関係は?

将来はAIがクルマの機能や価値を決める時代に?

このSDVの発展バージョンがAIDVだ。AIがクルマの機能や価値を定義する次世代の概念となる。AIがクルマを定義するとはどういうことなのか。

ソフトウェアによって統合制御可能なSDVは、アップグレードやカスタマイズは開発者らが任意で行う。走行モードなどをメニュー化し、任意でドライバーに選択させることもできるが、ソフトウェア更新やカスタマイズの意思決定を行う主体はあくまで人間だ。

一方、AIDVは、ドライバーの運転特性や意向、走行環境などをAIが自発的にくみ取り、個別最適化すべく車両制御や各種機能などをカスタマイズする。

常に安全運転で燃費や乗り心地を重視しているようなドライバーには、それに適した制御設計やルーティングを提供する。スポーティな運転を楽しむドライバーであれば、キビキビとした運転操作を楽しめる制御設計を提供する――といったイメージだろうか。

さらに、市街地や郊外、峠道など現在走行している環境や雨天などもリアルタイムで反映し、適切な走行モードを提供してくれるかもしれない。ガソリンや電力の残量が少なくなったら、自動でエコ運転モードを設定してくれるかもしれない。

一定の学習モデルのもと、あらゆる判断材料を常に学習し、ドライバーにとって最適なドライブ環境を提示してくれるのだ。意識することなく、ドライバーにとって乗り味がよく利便性の高いカスタマイズが自動で行われる感じだ。

タイヤの空気圧や摩擦係数、オイルの状態なども適時把握し、メンテナンス計画も提供してくれる。ドライバーや乗客の趣味趣向も把握し、車内におけるユーザー体験も高めていくことが想定される。従来、開発者やドライバーが行っていたあらゆる意思決定をAIが行うのだ。

場合によっては、周囲を走行する他のAIDV車両とデータを共有し、道路交通の全体最適化を図ることも可能になりそうだ。自動車にまつわるすべてがデータ化され、学習用に蓄積されていくと考えれば、ユーザー体験の向上にあらゆる面からアプローチするためのデータとしても有用となりそうだ。

英Armの言葉を借りると、「AIDVは自動車の機能性や知能、ユーザーインタラクションの全側面にAIを統合することで、運転体験を根本的に変革する概念」となる。

SDVで統合管理することが可能になったさまざまな要素に対し、AIが自ら判断して各機能を制御する。それがAIDVだ。

自動運転との関係は?

AIDVと自動運転はイコールではなく、AIDVだからと言って必ずしも自動運転機能が備わっているとは限らない。また、自動運転車だからと言って必ずしもAIDVであるとは限らない。ただ、両者の親和性は非常に高い。自家用車においては、将来的にADASや自動運転機能がAIDVの一機能と位置付けられる可能性もありそうだ。

AIDVは特にADASとの相性が高いように感じられる。レベル3以上の自動運転の場合、自動運転時の制御はそもそもコンピュータがすべて行うため、AIが自動で個別最適化を図る必要がない。走行環境に合わせた制御設計も、自動運転における一機能に位置付けられる。つまり、レベル3以上においては、制御面でAIDVが活躍する余地が少ないのだ。

レベル4以上のサービス車両においては、運転制御やフリートマネジメントなどは自動運転システムがすでに行っている。その意味で、自動運転車はすでにAIDVの役割の一部を担っているとも言えるだろう。

一方、レベル2+のように、運転制御はドライバーが全責任を負うものの、事実上自動運転に近い水準でコンピュータが優秀なアシスト機能を発揮するシステムにおいては、ドライバーの意向を踏まえつつ、その意向を反映する形で半自動運転とも言える優秀なアシスト機能を提供することが可能になる。

レベル1、レベル2でも同様だ。アシスト機能に限界はあるものの、ドライバーの意向をより強く学習することができる。ドライバーの個性がより強く残るADAS車両のほうが、AIDVが本領を発揮する余地が多く残されているのではないだろうか。

このADASからの進化の過程を踏まえると、ADAS機能はADIVの一機能に位置付けられるようになり、その発展バージョンであるレベル3以降の自動運転機能もAIDVの一機能のような形で統合されていくのかもしれない。

自動運転システム本来の安全で正確な制御機能に、その時々の乗客やシチュエーションに合わせた付加価値を高めるポテンシャルを、AIDVは有している……といった言い方もできそうだ。

中国勢が開発に意欲、日産も長期ビジョンにおいて言及

AIDVの領域は、中国勢の研究開発が先行している印象が強く、XpengやHuawei、Li Autoといった新興勢が開発を表明している。中国では、高速道路や都市部で高度な運転支援を行うレベル2+相当のNOA(Navigate on Autopilot)の開発・実装が盛んで、BEV化とともにSDV化も進行している。

NOAのさらなる高度化・自動運転化などとともに、AIDV化の道筋も鮮明にしていく戦略と思われる。

日本では、日産がいち早くAIDVに言及した。日産は2026年4月発表の長期ビジョンにおいて、技術イノベーションの中核にAIDVを位置付けた。AIを核とした知能化と電動化を図る上で、自動運転を高度化させるAIドライブ技術と、顧客の体験価値を高めるAIパートナー技術を組み合わせて移動そのものを進化し、移動の時間をより価値の高い体験へと変えていくとしている。

日産の自動運転技術まとめ!ProPILOT(プロパイロット)やEasy Rideとは?

■【まとめ】ポテンシャルは未知数

AIDVの概念は定まっているものの、具体的に何ができるようになるか……といったポテンシャル面は未知数な印象だ。運転制御がすでに自動化されている自動運転との関係も説明しづらいところだ。

ただ、自家用車分野においては、個別最適化を図る上でパラダイムシフトとなり得る概念と言える。まずはその前提となるSDVが今後どのように浸透していくのか、そしてAIDVに向けどのような可能性が見出されるのかに注目だ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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