国土交通省と経済産業省が主導してきたスマートモビリティチャレンジが、2025年度末で活動を終了した。新たなモビリティサービスの社会実装を通じた移動課題の解決及び地域活性化を目指すプロジェクトで、同事業を通じてMaaS構築・実装を図る取り組みが国内各地で活発に行われた。
その成果はいかほどだったのか。例えば、同プロジェクトの地域新MaaS創出推進事業において、複数モビリティを掛け合わせるMaaSアプリ・モビリティハブの構築に取り組んだ地域の56%は検討を中止・終了したという。過半数は実質上断念したのだ。個別モビリティの改善に取り組んだデマンド交通関連も、6割が検討を終了している。
こうした成果を評価すべきか否かは判断が分かれるところだが、こうしたプロジェクトは補助金や国・政府のマンパワーなどでの支援が行われており、基本的には税金によって支えられているととらえるべきで、軽視できない。
いずれにしても、成功した地域と失敗した地域にはそれぞれ何らかの要因があるはずだ。7年間に及んだスマートモビリティチャレンジの成果を見ていこう。
▼スマートモビリティチャレンジ 7年間の総括
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/smart_mobility_challenge/pdf/20260327_2.pdf
記事の目次
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■スマートモビリティチャレンジの概要
新モビリティサービス実装に向け2019年度にスタート
スマートモビリティチャレンジは、新たなモビリティサービスの社会実装を通じた移動課題の解決や地域活性化を目的に2019年度にスタートした。先駆的な取り組みに挑戦するパイロット地域で新しいモビリティサービスの実証や事業性分析などを実施し、ベストプラクティスの抽出や横断的課題の整理などを通じて地域モビリティの維持・強化、移動課題の解決、地域経済の活性化を進めてきた。
採択事業数は延べ100超に上り、パーソナルモビリティや自動運転車などの新モビリティ導入やMaaS導入などに取り組んできた。スマートモビリティチャレンジ推進協議会の会員数は、2026年3月時点で125自治体、245事業者、その他35団体の計405団体に上る。
2025年度で7年目を迎えたが、この間の事業により一定の成果を得ることができ、その役割を果たしたことから活動を終了するとしている。
公式サイトは2027年3月末まで公開される予定だ。各地の取り組みなどに興味のある人は、今のうちに情報収集を行ってほしい。
【参考】関連記事「スマートモビリティ、ズバリ「成功のコツ」は?知見集を深読み」も参照。
■地域新MaaS創出推進事業の成果
地域新MaaS創出推進事業では約4割で取り組み継続
7年間の総括資料によると、スマートモビリティチャレンジのうち、移動課題の解決や地域経済活性化、モビリティ関連産業の裾野拡大につながる新たなモビリティサービスの実装に向けた「地域新MaaS創出推進事業」には、累計73地域が採択された。
このうち17地域26事例が実装につながった。「実装」と「継続実証中」を合わせると、約4割の地域で取り組みが継続されているという。
MaaSアプリ・モビリティハブ関連は44%が継続、56%が中止
複数モビリティを掛け合わせたMaaSアプリ・モビリティハブ関連では、過去7年間で16地域が取り組み、このうち5団体(31%)が実装、2団体(13%)が実証継続中、そして全体の56%にあたる9団体が同種もしくは類似の内容について検討を終了している。
MaaSアプリは、幅広い利用者層の取り込みや、高齢者でもアプリを使いやすい環境づくり、効率的に運用できる仕組み、多様な関係者との事前協議が社会実装の分岐点となり、構想策定段階において、収益の展開・拡大自体ではなく効率的な運用を主眼とした取り組みとなっているか、実装時の運用を見据え、交通事業者・システムベンダー・自治体間で仕様を密に協議しているかが重要としている。
実証時においては、家族・知人が高齢者にアプリ利用を促すような工夫があるかどうかも重要という。一例として、高齢層に加え子ども・若年層向けにも割引を提供することで、祖父母が孫とともにアプリを利用する――といった取り組みがある。
地域における公共交通の利用者は高齢者が多いものの、高齢者はスマートフォンなどの扱いに疎い傾向が強く、新しいサービスや仕組みの利用に消極的な場合も多い。こうした層にいかにアプローチするか――といった観点はやはり重要なのだろう。
実装面では、利用できるエリアの拡大や、異なる公共交通共通の定期券や住民認証によるチケット購買、便利な機能の拡充など、利用を促進する各種取り組みのほか、デジタルチケット化による窓口業務の削減や、住民の行動変容の把握なども重要としている。
デマンド交通関連は38%が継続、62%が中止
デマンド交通関連では、26の実証地域中、実装に至ったのは5団体(19%)、実証継続中が5団体(19%)、中止・終了が16団体(62%)となっている。
実装に向けては、構想策定段階で導入予定の交通サービスを地域公共交通計画に取り入れることや、交通事業者や商工会、店舗など幅広い関係者との事前相談、費用をかけず継続的に住民と対話する場の設置などが重要としている。
また、地道な説明を通じて乗合に対する理解を深める取り組みや、高齢者もWeb・アプリを使えるようにするレクチャー、当初の利用者ターゲット層以外も利用できる工夫など肝要という。
情報発信・クーポン発行関連は29%が継続、71%が中止
異業種連携における情報発信・クーポン発行関連では、14の実証地域中、実装に至ったのは3団体(21%)、実証継続中が1団体(7%)、中止・終了が10団体(71%)という結果となった。
構想策定段階で、実装時の運用を見据え交通事業者・システムベンダー・自治体間で仕様を密に協議することや、実証時、地域内の限定エリアで効果を検証する点、住民割引チケットにより利得を訴求して行動変容を促す点、登録店舗の拡大や多様な決済手段への対応など、システムの改修が容易な仕組みになっている点などが実装につながる要因としている。
交通データの分析関連は50%が継続、50%が中止
交通データの分析関連では、16の実証地域中、実装に至ったのは5団体(31%)、実証継続中が3団体(19%)、中止・終了が8団体(50%)という結果となった。
構想段階において、住民ヒアリングによってデータ分析ツール導入の目的を整理すること、自治体が主体となって地域内のさまざまな移動データが集まる仕組みを関係者と構築すること、目的地情報や配車予約などの移動データと住民の行動変容の可視化をもとに、継続的にサービス改善が可能なシステムの拡張性・柔軟性があることなどが社会実装の分岐点になるとしている。
先進サービスの育成・高度化とサービスの導入単位の大規模化が重要
全体としては、実証終了後に社会実装や継続実証へ進む事例が着実に生まれており、新たな地域交通の定着に向けた前進が見られると結論付けている。
実装された取り組みは地域の移動課題に寄り添い事業負担が許容可能な範囲に収まることが挙げられる一方、事業性を大きく向上させるサービスの創出は道半ばであるとしている。
全サービス共通で、住民との対話の継続やシステムの更新の容易性、構想段階における多様なステークホルダーとの協議が社会実装に向けた分岐点となる。
公共交通の黒字化は難しいものの、事業性を向上できたサービスは、地域リソースの有効活用や交通サービスおよび異業種の大規模展開ができている。
各地域での個別調整を最小化することで多数地域へ広がりやすくしたり、車両の活用シーンを増やして稼働率を高めたりする取り組みが事業性向上に向け肝要という意見が多かったという。
全国的な事業者の参入や個別地域での異業種サービスの展開やリソース有効活用の取り組みは進んだが、取り組みの大規模化や全国普及は一部道半ばであり、個別自治体単位での交通改善の慣習、複数地域の連携を図る推進者の不在、交通事業者のサービス規模の小ささが、事業性のさらなる発揮が難しい真因と分析している。
地域課題解決と産業育成の両立に向け、都道府県とMaaSコーディネーターによる広域でのMaaSの推進、共同経営による事業大規模化が必要とし、先進サービスの育成・高度化とサービスの導入単位の大規模化が嚙み合うことで、新たなモビリティサービスが大規模に浸透し、交通サービス全体の効率化・市場創出につながると結論付けている。
【参考】関連記事「デジタル庁、「交通商社」の設立を主導か 水面下で検討」も参照。
■【まとめ】一条の光を見出すことに意義がある
いずれの項目も中止・終了した地域が半数以上に上った。実際に実装を行った地域が20~30%ほどというのは物足りない数字のようにも感じられるが、期間中のコロナ禍の存在や先進的事業である点などを踏まえると、一定の成果があったとも言える。
MaaS発祥企業と言われるフィンランドのMaaS Global(マースグローバル)が2024年に破産申請するなど、世界的にMaaSブームは去った感が強いが、成果を上げ生き残ったものが存在するのも事実だ。
公共性とビジネス性の両立は難しいところだが、遅かれ早かれ訪れるだろうテクノロジー社会を踏まえれば、今のうちに試行錯誤を重ね、一条の光を見出すことに意義がある。
スマートモビリティチャレンジとしての事業は終了したが、各自治体、企業が今後どのような取り組みを進めていくのか、要注目だ。
【参考】関連記事としては「MaaSとは?基礎知識まとめと完成像を解説」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)