Toyota Woven Cityのオフィシャルローンチが2025年9月25日に正式決定した。ロケット開発を手掛けるインターステラテクノロジズなど新規参画企業も発表され、インベンターズはトヨタグループ含め計19社となった。
インターステラテクノロジズは、ホリエモンこと堀江貴文氏がファウンダー(創業者)の一人であることでも知られる。もしかしたら、堀江氏に「特権」としてWoven Cityへの居住権が付与されるかもしれない。ホテル住まいを公言している堀江氏であれば、一時的にWoven Cityに居住することも選択肢になるのではないだろうか。
全貌が明らかになり始めたWoven City。その最新動向に迫る。
【参考】関連記事としては「トヨタWoven City、視察申込み殺到 「現在は原則お断り」」も参照。
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■Woven Cityの最新発表の概要
インターステラテクノロジズと共立製薬が新たに参画
ウーブン・バイ・トヨタはこのほど、Woven Cityのフェーズ1オフィシャルローンチが9月25日に決定したこととともに、新たに12社がインベンターズに加わったことを発表した。
インベンターズは、インターステラテクノロジズと共立製薬、豊田自動織機、ジェイテクト、トヨタ車体、豊田通商、アイシン、デンソー、トヨタ紡織、トヨタ自動車東日本、豊田合成、トヨタ自動車九州だ。
すでに決定しているダイキン工業、ダイドードリンコ、日清食品、UCCジャパン、増進会ホールディングス、そしてトヨタとウーブン・バイ・トヨタを含め、計19社となった。
7社を除く12社がトヨタグループだが、ENEOSや日本電信電話、リンナイも検討を進めており、ローンチまでにさらに増加する可能性が高そうだ。
インターステラテクノロジズはウーブン・バイ・トヨタと資本業務提携
インターステラテクノロジズとトヨタグループとの関係はWoven City以前から続いている。インターステラテクノロジズは2020年4月、研究開発加速に向け、企業や大学、研究機関などからエンジニアの人材受け入れを行う「助っ人エンジニア制度」を開始し、まずトヨタ自動車から研究開発エンジニア2人が出向することを発表している。これまでに、トヨタ自動車北海道やトヨタ車体を含め累計11人が出向しているという。
その後、2025年1月にはウーブン・バイ・トヨタとの資本業務提携も発表された。ウーブン・バイ・トヨタはリード投資家としてシリーズFファーストクローズまでに約70億円を出資するほか、トヨタを交え、ロケットを一点モノの生産から高頻度打上げに耐えうる工業製品へと構造変革させるための取り組みを具体化していくという。
トヨタからインターステラテクノロジズへ新たに出向者を派遣し、ロケットZEROの初号機開発から事業化に向けた取り組みまで幅広いモノづくり分野で支援していく。
こうした関係性のもと、インターステラテクノロジズはトヨタが長年培ってきたモノづくりの知見や強みを活用することを見据え、Woven Cityのインベンターとしての参画も決定したという。事業の性質上、開発場所はWoven City内ではなくインターステラテクノロジズの拠点を中心とする方針だ。
エンジン製造能力を強化
インターステラテクノロジズとトヨタに共通する技術領域は「エンジン」だ。インターステラテクノロジズが開発を進める小型人工衛星専用のロケットZEROは、一段目に9基、二段目に1基の計10基のエンジンを備えており、エンジンシステムを構成する燃焼器やターボポンプは独自技術を有しているという。
特に、燃焼器に推進剤を送り込む心臓部となるターボポンプは、ロケットで最も開発が難しい要素の一つと言われ、国内で設計と製造技術を保有する会社はインターステラテクノロジズを含めごくわずかとしている。
自動車トランスミッションの量産製造技術を有し、以前から連携しているトヨタ自動車北海道とトヨタとともに、初号機に向けた燃焼器やターボポンプを含むエンジン全般の製造に連携して取り組むほか、機体能力向上に向けた軽量化を目的とする新規工法開発と、高頻度打上げの実現に向けた原価低減、工期短縮に向けたサプライチェーン強化においても支援を受けていく。
過去、堀江氏はWoven Cityに言及
インターステラテクノロジズのファウンダーで取締役を務める堀江氏は、トヨタ、そしてWoven Cityについてどのように思っているのか。
堀江氏は自身のYouTubeチャンネル「ホリエモンチャンネル」で2021年、トヨタをトピックに挙げ、Woven Cityにも言及している。動画は以下の3部構成で、トヨタの成り立ちから客観的事実や独自視点を交えて解説しており、3つ目の動画でWoven Cityに触れている。
堀江氏によると、政治的意図でEVの潮流が生まれ、ガソリンエンジンに強みを持つトヨタは矢面に立たされており、傘下のサプライチェーン交えかんばん方式で積み上げてきたものが無になってしまう。そこで、これまでの技術や実績が無にならぬよう水素エンジンの自動車開発に力を入れているとしている。
ただ、ガソリン車でトヨタをはじめとした日本勢に勝てない海外勢の政治的パワーゲームにより、自動車領域はパソコンやスマートフォンのような世界に変えられる。政治的な力により、少なくとも水素化についてはトヨタは負ける。
おそらくトヨタはそれをわかっており、そこで未来都市Woven Cityが登場する。都市は人やモノが動くモビリティが必須で、モビリティとエネルギーの循環は密接に関わりあっている。水素ベースかEVベースかはわからないが、まち全体をプロデュースする、ソリューション化するようなビジネスにシフトするのが良いと思うとしている。
イノベーションのジレンマにより、技術革新が進むと旧来型の企業は劇的に仕事がなくなるが、ジレンマをものともせず真正面から切り込んで市場を破壊し、自ら変身したIBMを例に挙げ、トヨタもいまだに自動車の生産台数は大きいが10年後20年後にどうなっているかはわからない。
EVシフトが進んでも大丈夫なようにまちづくりに注目し、自動運転やエネルギー循環をベースにしたまちづくりのソリューションビジネスの一つにしていく狙いで、Woven Cityに力を入れているのでは――と考察している。
Woven Cityはトヨタの新規ビジネス創出の場に
堀江氏の考察は、トヨタの考えと矛盾していない。トヨタはWoven Cityについてモビリティの可能性を追求していくことを前面に出しており、ヒト、モノ、情報、そしてエネルギーを動かし、モビリティの常識に挑み続けるとしている。
モビリティが起点であり基点となることは間違いないが、それは物質の移動を伴うような物理的なものに留まらず、概念化した移動も含むと解される。そうした前提に立てば、Woven Cityにおける実証はほぼ制約がなく、言い方は悪いかもしれないがなんでも取り組むことができる。
もちろん、トヨタがソフトウェア企業に転身する――といった大変身は現実的ではなく、ものづくりや物理的な移動における知見を生かすことができる新規事業の立ち上げが有力となる。
例えば、水素の活用は大きなポテンシャルを秘めているのではないだろうか。ウーブン・バイ・トヨタは、手軽に水素を持ち運ぶことができ、生活圏の幅広い用途で水素エネルギーを使用できるポータブル水素カートリッジのプロトタイプを開発済みだ。
新たなエネルギー源としてこうした水素燃料の活用を各家庭や企業に浸透させることができれば、それはビッグビジネスとなる。水素エンジン車の普及にもつながるかもしれない。水素を軸としたソリューション事業だ。
トヨタはENEOSとともに、水素の「つくる」「運ぶ」「使う」という一連のサプライチェーンの実証を検討している。正式決定していないが、ENEOSはいち早くWoven Cityへの参画を検討していた。こうした経緯を踏まえると、水素ビジネスの確立は現実味を帯びてくる。
水素はあくまで一例だが、Woven Cityはこうした新規ビジネスの種が芽吹く土壌となることに期待が寄せられる。
堀江氏も注目するWoven City。どうせなら、インターステラテクノロジズのファウンダーとして、あるいは独立したインベンターとして堀江氏自らが参加し、イノベーションの種をどんどん撒いてほしい。
【参考】トヨタと水素ビジネスについては「動き出すトヨタのWoven City!2022年は「水素」な1年」も参照。
■参画各社の取り組み
共立製薬はペットと人の共生環境を実証
動物用医薬品を取り扱う共立製薬は、ペットと人の共生を推進する都市ガイドラインの策定や、さまざまな都市機能の仕組み・ルール作り、交通インフラの検討など、各種取り組みの実証を計画している。
これらの実証を通じて、ペットとその飼い主だけでなく、ペットを飼っていない人にも快適かつ魅力的な街・都市のあり方を追求し、日本におけるペットと人の共生環境の発展を目指すとしている。
トヨタグループ各社の取り組み
豊田自動織機やデンソーをはじめとするトヨタグループ10社の参画も発表された。トヨタ自動車東日本以外の9社はプレスリリースを出しておらず、具体的な取り組みについては不明だ。
一方、トヨタ自動車東日本は、同社の東富士工場跡地をWoven Cityとして造成している縁もあるからだろうか、唯一リリースを出している。
Woven Cityに隣接する開発拠点の富士裾野テクニカルセンターでは、自律走行ロボット「cocomo(ココモ)」の技術開発に取り組んでおり、Woven Cityで実証を行う。半世紀以上にわたりモノづくりを行った東富士工場の跡地で、未来のモビリティ社会の創造に向け新たな挑戦を始めるとしている。
Cocomoはいわゆる自動配送ロボットで、東富士総合センター周辺をはじめ、宮城県女川町や愛知県みよし市などで実証されている。これまであまり表に出てくることがなかったが、Woven Cityでの活用を契機に「トヨタ製自動配送ロボット」として存在感を増すかもしれない。
このトヨタ自動車東日本の取り組みを例にすると、例えば自動運転トーイングトラクターの開発を手掛ける豊田自動織機は、荷物の自動積み込み・積み下ろしなども含めた完全自動物流の実証を行うかもしれない。
トヨタ紡織は、レベル4を想定した都市部シェアモビリティ向けのコンセプトモデル「 MX221」や、さまざまなサービスでの空間活用を想定した自動運転コンセプト空間 「MOOX」「MOOX-RIDE」の実証に着手するかもしれない。
ジェイテクトは、自動運転システムとドライバーの意思をつなげる人中心の自動操舵制御システム「Pairdriver」の実証を行うかもしれない。
トヨタ自動車九州は、e-Paletteを活用して自社工場敷地内で取り組んでいるさまざまな取り組みを。他のインベンターズとともに拡大していくかもしれない。
各社が個別に開発してきた技術は意外と多そうだ。トヨタグループ各社のWoven City参画はある意味既定路線と思われがちだが、こうした各社の技術を集結し、応用させていく貴重な機会として非常に有用なのかもしれない。
【参考】トヨタ紡織の取り組みについては「トヨタ紡織、最高位「自動運転レベル5」向けの車室空間を提案」も参照。
【参考】トヨタ自動車九州の取り組みについては「トヨタe-Paletteの「お蔵入り説」は嘘だった。自動運転シャトル、徐々に表舞台に」も参照。
■【まとめ】新たな連携が創出されるかも
インターステラテクノロジズなどは、Woven Cityを通じて異業種との連携が始まる可能性もある。参画企業が増えれば増えるほど、新規ビジネスの道が開かれる側面もあるのだ。当初計画の実証に留まることなく、柔軟な発想のもとさまざまな取り組みが生まれていくことに期待したい。
【参考】関連記事としては「ついに!トヨタWoven City、「住民募集」の説明会開催」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)