米EV(電気自動車)大手のテスラはこのほど、フランスとオーストラリアで自動運転走行している動画を立て続けに公開した。
フランスの首都パリで行われたテスト走行では、フランスで最も複雑、世界でも「最凶級」と言われている凱旋門前の交差点・ロータリーを難なく走行している様子が分かる。またオーストラリアのメルボルンでは、「フックターン」と呼ばれる二段階右折もクリアしている。
2025年6月に米テキサス州オースティンで自動運転タクシー(ロボタクシー)サービスを開始予定のテスラ。今回の動画公開は、同社の自動運転開発が実用化に向け順調に進んでいることをアピールする狙いもありそうだ。
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■オーストラリア特有の「フックターン」もクリア
テスラは2025年5月16日、メルボルンで自動運転走行している様子を公式X(旧Twitter)で公開した。車のほか人や自転車がたくさん行き交う繁華街を、テスラ車はスムーズに自動運転で走っている。この車両で稼働しているシステムは「FSD Supervised(監視付き)」だ。監視付きのため、運転席には人が座り、ハンドルに手を添えすぐに手動運転可能な状態での走行となる。
オーストラリアでは日本と同様に左側通行で右ハンドルとなっている。テスラは右ハンドルの車を用いてメルボルンの街を走行した。投稿には「And yes, that’s a hook turn(そうです、あれが『フックターン』です)」と書き添えられている。
フックターンはメルボルン名物と言われる二段階右折のことで、左車線に停車して右折を待つという独特な交通ルールとなっている。フックターンもクリアできたことで、テスラがその土地特有の交通ルールも守って自動運転可能なことが証明された。
FSD (Supervised) testing in Melbourne, Australia
And yes, that’s a hook turn pic.twitter.com/tjakHvRohP
— Tesla AI (@Tesla_AI) May 16, 2025
■フランスで最も難易度が高いロータリーも
テスラはさらに、公式アカウント「Tesla Europe & Middle East」でパリの凱旋門交差点をFSD Supervisedを作動させ自動運転走行している様子も公開した。この場所はフランス最大級のロータリーであり、走行の難易度が非常に高い。
しかしテスラの自動運転車は、必要に応じて車に道を譲ったり、他の車両との車間距離をきちんと保ったりするなど、スムーズな走行を実現した。
FSD Supervised can handle Arc de Triomphe no problem
If there is a bigger roundabout in France, please let us know in the comments 😀
Pending regulatory approval pic.twitter.com/IPR0jLiOW7
— Tesla Europe & Middle East (@teslaeurope) May 16, 2025
投稿では「FSD(監視付き)は、凱旋門(Arc de Triomphe)の交差点も難なく対応できます。もしフランスにこれより大きなロータリーがあるなら、ぜひコメントで教えてください」と余裕を見せている。なお「現在、規制当局の承認待ち」とも書き添えられているため、同国での実用化はまだ先になりそうだ。
テスラはメルボルンとパリでの動画両方に、注意書きを入れている。
「FSD(監視付き)は、プロトタイプ車両においてセーフティドライバーが運転するエンジニアリングテスト走行です。本映像はデモンストレーション目的のみであり、FSD(監視付き)は常に運転者による操作と道路への注意が求められるハンズオン機能です。将来的な機能の有効化や使用は、開発状況および規制当局の承認により左右されます。」といった内容だ。
■そもそも「FSD」が意味するものとは?
テスラは元々、ADAS(先進運転支援システム)を「FSD(Full Self-Driving)」という名称で展開していた。直訳すると「自動運転」になるものの実際は自動運転システムではなく、ドライバーが常に監視する必要があるADASの機能にとどまる。そのためFSDという名称は誤認を招くとして、この数年波紋を呼んでいた。
その結果、同社は2024年に「FSD Supervised:FSD(監視付き)」に変更したという経緯がある。またテスラは中国でも2025年2月からFSDの限定バージョンの提供をスタートした。しかしFSDの導入直後から、テスラのドライバーが次々と交通違反で罰金を科される事態となっており、1カ月間の無料トライアルを発表してからわずか1週間後に提供を中止している。
その結果、同年3月に中国での名称をFSDから「Intelligent Assisted Driving」に変更している。
■「Unsupervised(監視無し)」も開発済み
今回公開された動画ではFSD Supervisedの作動による自動運転が強調されているが、テスラは来月6月から同社のEV「Model Y」に「FSD Unsupervised(監視無し)」を搭載したロボタクシーサービスをオースティンで始動予定だ。つまり、完全ドライバーレスの自動運転車になる。
テスラはFSD Unsupervisedを作動させ同社の工場内を走行している様子を公開済みではあるが、一般道はまだ走らせていないとされている。監視有りの自動運転を経ずに、監視無しのサービスを計画通り行うのか。注目だ。
【参考】関連記事としては「中国、広告で「自動運転」の使用を禁止に テスラも名称変更」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)