Woven City構想の発表から早5年が過ぎた。第1期工事は終了し、今秋にも実証が始まる見通しだ。着々と準備が進められているようで、SNSなどで最新状況が小出しに発表されている。
Facebookに2025年5月に投稿された最新画像には、広場に停車した移動販売車仕様のe-Palette(イー・パレット)で飲み物が販売されている様子が映し出されている。目を凝らすと、e-Paletteのカウンターに「UCC」の文字を確認できる。近い将来、自動運転型の「移動UCCカフェ」が展開されるのかもしれない。
Woven City、及びe-Paletteの最新動向に迫る。
記事の目次
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■Woven Cityの動向
移動UCCカフェが誕生?
最新投稿では、以下の投稿で2枚の画像が添付されている。
1枚はコートヤード(広場)を俯瞰したもの、そしてもう1枚はe-Paletteを用いた実証イメージだ。広場に停車したe-Paletteはカフェ仕様のようなイメージで、「UCC」の文字が見える。その周辺には、テーブルでくつろぐ住民らの姿も映し出されており、一人はパーソナルモビリティに乗車している。Woven Cityにおける実証と日常を合わせたようなイメージだ。
ダイキンなど5社が今秋にも実証開始、UCCは未来型カフェをオープン
ウーブン・バイ・トヨタによると、ダイキン工業、ダイドードリンコ、日清食品、UCCジャパン、増進会ホールディングスの5社が実証パートナー「Inventors」に決定している(2025年1月時点)。このほか、ENEOSと日本電信電話、リンナイも検討を進めている。
UCCは、Toyota Woven Cityが掲げるコンセプト「ヒト中心の街」「実証実験の街」「未完成の街」に賛同し、新たなコーヒーの価値創造を目的に、Woven Cityのオフィシャルローンチに合わせてコーヒーの潜在価値を実証する未来型カフェをオープンするという。
Woven Cityで生活する人々の憩いとなるカフェとしての機能提供をはじめ、 ポジティブな気持ちを生む、会話やディスカッションの質や量が向上する、ポジティブな会話が増える――といったコーヒーにまつわる仮説を、Woven Cityの実証環境や技術、開発サポートプログラムを活用しながら検証する。
加えて、関係者との協働・共創を通じて現在の仮説を超えたさらなる活動も視野に入れていくとしている。
この未来型カフェの実証を、e-Paletteを活用して実施するものと思われる。e-Paletteの移動性能を生かし、仮説検証に有益なさまざまな場でコーヒーを提供することが想定されるが、Woven Cityならではのさらなる発展した取り組みに期待したいところだ。
▼UCC「Toyota Woven City」にInventorとして参画|UCCジャパン株式会社
https://www.ucc.co.jp/company/news/2025/rel250107.html
教育や自販機、空間などさまざま取り組みを計画
ダイキン工業は、Woven Cityで継続的に得られるさまざまなデータや住民からのフィードバックを活用した実証を通じて、これまで取り組んできた「花粉レス空間」や「パーソナライズされた機能的空間」の実現に挑戦し、さらなる空気価値の創造を目指すとしている。
花粉レス空間を生み出す空調・換気システムや、多感覚連携で空間体験の新たな価値を創出する空調・映像・音響などの連動システムの実証を想定しているようだ。
ダイドードリンコは、自動販売機サービスの拡充・構築、持続可能な稼働体制の構築、新たなビジネスモデルの構築――という方針のもと、モビリティの新たな可能性の創造に向け実証を行う。
同社にとって、自動販売機は歴史の変遷とともに進化し続け、単に飲料を売るための機械ではなく店舗の役割を果たしているという。事業の中核である飲料事業の主力販路・自動販売機を通じた「新たな価値創造」をどのように図っていくか、要注目だ。
日清食品は、ヒト・モノ・情報・エネルギーといったあらゆるモビリティの活用を見据え、利用者がいつでもどこでも「最適化栄養食」を食べることができる環境構築を図るとともに、「最適化栄養食」を継続的に食べている人の心身や行動などの変化を主観と客観双方の観点から確認し、その有効性を実証していく。
増進会ホールディングスは、教育分野における最新テクノロジーを生かした実証に向け「Z会インベンティブスクール」を開校するという。
子どもたちのイノベーティブな知性と感性を育み、社会の革新と発展に貢献できる人材育成を目指し、1歳~12歳の子どもを対象としたナーサリースクール(全日制幼児園)やアフタースクールを開校する計画としている。
各社の取り組みが従来の概念で言うモビリティとどう結びつくのか想像しにくい面もあるが、だからこそ新規性あふれるWoven Cityでの取り組みに価値があると言える。他所ではできない、Woven Cityならではの取り組みに期待したい。
■Woven Cityの概要
フェーズ1は360人が居住予定、一般は2026年度以降
モビリティのテストコースであるWoven Cityでは、Inventors(インベンターズ/発明家)がモビリティの拡張を目指し、自らのプロダクトやサービスを生み出し実証を行う。
このInventorsには、トヨタ関連のグループ企業のみならず、社外の企業やスタートアップ、起業家など同じ志をもつ企業や個人も含まれる。前述したUCCなどがこれにあたる。
トヨタが長年培ってきたものづくりの知見やウーブン・バイ・トヨタが有するソフトウェアのスキルなどの強みを生かしたツールやサービスなどをInventorsが活用し、社会課題の解決や未来に向けた新価値創造を目指す。
その過程で重要な役割を担うのがWeavers(ウィーバーズ/住民・ビジター)だ。より豊かな社会を目指し、未来をより良くしていきたいという思いのもと、Woven Cityで行われるさまざまな実証を体験し、フィードバックを行うことでWoven Cityにおける価値を共創する。
2025年秋以降のオフィシャルローンチ時点では、トヨタ関係者とその家族100人程度が移住するなどし、その後社外Inventorsやその家族などに少しずつ拡大し、フェーズ1では360人ほどの規模を見込む。フェーズ2以降を含み、将来的には2,000人程度となる計画だ。
一般人は、2026年度以降にWeaversとして実証に参加可能になる見込みのようだ。
【参考】Woven Cityについては「トヨタ会長、「言い出しっぺ」自らWoven Cityに移住か?従業員ら360人、秋から入居」も参照。
■e-Paletteの動向
じわじわと進化続けるe-Palette
このWoven Cityで注目すべきなのは、やはりe-Paletteだ。豊田章男会長(当時社長)がCES2018において、トヨタを「モビリティカンパニー」に変革する宣言と同時に発表した、多目的に活用可能な自動運転モビリティサービス専用車だ。
モビリティカンパニーへの変革を担う重要な位置づけの一つということだ。自動運転機能の向上はもちろん、このe-Paletteの有効活用がWoven Cityにおける一つの重要課題と言える。
e-Paletteを活用した取り組みは、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会選手村における活用以来、あまり表には出てこなかったが、内々では模索を続けているようだ。
2023年6月に開催した「トヨタ テクニカルワークショップ」では、社会実装を見据え手動運転も可能とする運転席があるタイプと、将来の無人自動運転を見据えた運転席を備えないタイプの2種類を発表した。
2020年代前半に実社会でのサービス提供を運転席があるタイプで開始し、運転席がないタイプはWoven Cityなどを見据え開発を進めているとしていた。
また、「コンビニ仕様」のe-Paletteもお披露目された。広い車内にドリンク類やスナック菓子のようなものが陳列されたe-Paletteで、ディスプレイ機能を備えた側面扉には、「トヨタイムズ」のロゴのような字体で「トヨタコンビニ」の文字がはっきりと映し出されている。
詳細は不明だが、e-Palette活用事例の一つとして、コンビニは非常に理解しやすく受け入れられやすい。モビリティ×Xの未来を示すのに最適と言えそうだ。
トヨタイズムによると、過去には「移動式宅配ロッカー仕様」や「アパレルショップ仕様」なども披露されているという。
【参考】コンビニ仕様のe-Paletteについては「トヨタ、コンビニ事業参入か 自動運転シャトル活用を示唆」も参照。
宮田工場でさまざまな実証を継続中
トヨタイムズによると、トヨタ自動車九州 宮田工場でもe-Paletteを活用したさまざまな実証が行われているようだ。
同工場の用地面積は113ヘクタールと非常に広大で、敷地内の移動も困難という。構内では巡回バスも運行されているが、2023年9月にe-Paletteを導入し、まずは従業員向けに定時定路で運行する「出退勤シャトル」として活用を開始した。
同月中にオンデマンドバスサービスも開始し、職場近くのバス停から電話でe-Paletteを呼び出し、行き先付近のバス停まで乗車できるように改善したという。
また、2024年4月に開催された従業員や地域住民が参加するイベント「サンクス フェスタ2024」では、e-Paletteによる工場巡回ツアーや移動体験型ストアを実施したという。
さらには、工場ならではの需要を取り込み、e-Paletteを活用したトルクレンチ校正のオンデマンド化にも取り組み始めた。通常は監査課の担当者が各工場に出向いて工具を回収し、校正作業を行ったうえで工場に送り届けていたが、e-Paletteに校正に用いる機器を搭載して工場に赴き、昼休みの時間を利用して校正作業を行い、休日出勤の削減などに取り組んでいるという。
同工場では、2024年11月から12月にかけ、MONET Technologiesによる移動サービスの実証運行も行われた。
敷地内1周約 3.4 キロのルートに5カ所のバス停を設け、e-Paletteが自動運転レベル2で1日12便運行した。自動運転技術実用化に向けた安全性を検証するとともに、工場で働く従業員の移動負荷軽減の有効性を検証したという。
【参考】宮田工場での取り組みについては「トヨタe-Paletteの「お蔵入り説」は嘘だった。自動運転シャトル、徐々に表舞台に」も参照。
豊田市では介護予防サービスにe-Paletteを活用
豊田市では、e-Paletteの多目的利用の有効性検証と山間地域の高齢者の福祉サービスに対するニーズ確認を目的に、e-Paletteの車内で介護予防サービス「ずっと元気!プロジェクト」を提供する取り組みが2025年2月に実施された。
介護美容研究所を卒業したケアビューティストが、高齢者のフットケアやハンドケアを提供しながらコミュニケーションを図る取り組みだ。
NTT×May Mobilityもe-Paletteを採用
NTTは、自動運転開発スタートアップMay Mobilityと協業する中で、実証実験拠点で活用する車種にe-Paletteを追加した。
同社は2024年11月、NTT中央研修センタ内にMay Mobilityとの実証実験拠点を立ち上げ、シエナベースの開発車両で実証を行っているが、より多様なニーズに対応するため、乗車定員数増加が見込める新たな車両が必要との考えに至り、e-Paletteを採用したという。
■【まとめ】Woven City内外でe-Paletteが活躍?
Woven Cityの始動とともに、e-Paletteを用いた実証も本格化するものと思われる。自動運転開発に主眼を置いた取り組みと多目的なサービスの可能性を追求する取り組みに分かれていきそうだが、Woven City外での活用も伸び始めており、今後e-Paletteを目にする機会も大きく増加していく可能性が高い。
新時代のモビリティサービスをe-Paletteがどのように切り拓いていくのか。今後の動向に注目だ。
【参考】関連記事としては「トヨタの自動運転技術、すでに「テスラ超え」か ”実はレベル高い”との声多数」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)