「自動運転」と呼ぶことができるレベルは、一般的にレベル3からと言われている。その自動運転レベル3において世界最速となる時速95キロを実現するシステムが、ドイツで認可された。
開発したのは、ドイツの高級車ブランドである「メルセデス・ベンツ」だ。条件付き自動運転システム「DRIVE PILOT」をアップデートし、このほどドイツ連邦自動車交通局(KBA)から認可を取得した。これにより、特定の条件下でドイツ国内において時速95キロでのシステムの利用も可能になったという。
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■無償アップデートにより時速95キロを実現
メルセデスは、自動運転レベル3の有料オプション「DRIVE PILOT」の注文受付を開始することを2022年5月に発表している。その時点では「時速60キロ以下」というODD(運行設計領域)が設定されていた。
レベル3とは、エリアや速度などの一定条件下で自動運転システムに運転を任せることができる水準のことを指す。オーナーカー向けのレベル3の提供は、日本のホンダに続いてこれが2社目となった。
【参考】関連記事としては「自動運転レベル一覧【1・2・3・4・5の表付き】」も参照。
2024年9月には、DRIVE PILOTの無償アップデートに実施により最高時速95キロで走行可能になることを発表した。そして今回KBAからの許可を得たことで、2025年始めからドイツにおいて販売が開始される見込みとなった。
このアップデートにより、全長1万3,191キロのアウトバーン(ドイツの自動車専用道路網)において、DRIVE PILOTは特定の条件下において最大時速95キロまで出せるようになった。これは現在、量産車としては世界最速のレベル3自動運転車となる。
世界初のレベル3量産車を発表したホンダは、新型「レジェンド」にレベル3水準の「トラフィックジャムパイロット」を搭載し、2021年3月に100台限定でリース発売した。このシステムの速度要件は「自車の速度が自動運行装置の作動開始前は約30km/h以下、作動開始後は約50km/h以下であること」となっている。
▼Honda SENSING Elite|トラフィックジャムパイロット(渋滞運転機能)
https://www.honda.co.jp/factbook/auto/LEGEND/202103/P07.pdf
日本とドイツでは道路状況に違いがあるとしても、メルセデスの時速95キロが驚異的なものであるかを実感できるだろう。
■システム作動中はスマホやテレビを見てもOK
DRIVE PILOTの作動中、ドライバーはテレビやスマホを見たり読書をしたり、リラックスしたりすることが法的に認められている。ただし自動運転レベル3においてドライバーは必要に応じて運転を引き継げるよう常に準備しておく必要がある。
最新版のDRIVE PILOTも安全性を最優先に設計されており、電気系統やステアリング、ブレーキといった重要に機能は二重に構成されているという。緊急性の高い警告によりドライバーに運転を引き継ぐ必要がある場合、もしドライバーの深刻な健康問題などにより操作を引き継げなかったとしても、システムはハザードランプを点滅させながら車両を制御された方法で停車させることが可能になっている。
今回のアップデートは、オプションとしてラグジュアリーセダンの2つの車種「Sクラス」と「EQS」に搭載可能だ。DRIVE PILOTの価格変更はなく、税込みで5,950ユーロ(約97万円)からとなっている。
すでに搭載済みのDRIVE PILOTは、アップデートが無料で提供される。ソフトウェアアップデートはOTAまたは工場での作業を通じて行うことができ、車両部品の変更などは不要となっている。またこのアップデートのために車両部品の変更はする必要がないという。
■米国や中国進出にも積極的なメルセデス
DRIVE PILOTは、米ネバダ州やカリフォルニア州でも認可を取得している。自動運転レベル3のシステムの認可は米国で初のことであった。メルセデスは、GMやテスラなどの米国の自動車メーカーより先に、同国でレベル3機能搭載の市販車を初めて展開できるようになったことになる。
今回のドイツでのアップデートが米国でも行われるのか。また同社は、中国・北京市内で自動運転レベル4の公道実証実験を行う認可を取得したことを2024年8月に発表している。中国の自動運転スタートアップWeRide(文遠知行)と共同で承認を得ており、北京市のハイレベル自動運転モデル区に指定される道路と高速道路において実証を行っていく計画だ。
レベル3のグレードアップのほか、レベル4実用化にも取り組むメルセデス。2025年も快進撃は続くのか、注目だ。
【参考】関連記事としては「自動運転レベル4、メルセデスが北京で「テスラより先」に試験認可を獲得」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)