Googleの自動運転車は人間が運転する車よりも保険請求件数が少なくなるということが、調査により判明した。
この調査を行ったのは大手保険会社のスイス・リーで、米Google系の自動運転開発企業Waymo(ウェイモ)の自動運転車と一般的な手動運転の車について、膨大なデータを用いて比較した。その結果、Waymoの自動運転車は人間が運転する車より、安全性に優れていることが判明した。
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■Waymoの自動運転車と比較した結果
スイス・リーは、Waymoの自動運転車が走行した2,530万マイル(約4,072万キロ)にわたる衝突に関する責任請求を分析した。また自動運転と手動運転を比較するために、50万件以上の保険請求と2,000億マイル(約3,219億キロ)以上の走行データを使用したという。
データ分析の結果、Waymoの自動運転車は手動運転より、物的損害賠償請求が88%、人身傷害賠償請求が92%減少したことが明らかになった。
さらにスイス・リーは、自動運転システム「Waymo Driver」と、高度なADAS(安全運転支援システム)を搭載した新しい車両を比較するための指標も考案した。この基準における比較でも、Waymoの自動運転車の優秀さが明らかになった。
高度なADAS搭載車両より、Waymo車は物的損害賠償請求が86%、人身損害賠償請求が90%減少したという結果になった。
▼【調査結果】Do Autonomous Vehicles Outperform Latest-Generation Human-Driven Vehicles? A Comparison to Waymo’s Auto Liability Insurance Claims at 25 Million Miles
https://storage.googleapis.com/waymo-uploads/files/documents/safety/Comparison%20of%20Waymo%20and%20Human-Driven%20Vehicles%20at%2025M%20miles.pdf
■Waymo車が有利と考えられる理由も
今回の調査によって、Waymoの自動運転車の安全性が数字として明らかになった。なお、ここで言うWaymoの自動運転車とは、「Waymoの自動運転システムを搭載した完全ドライバーレスの自動運転タクシー」のことを指す。
安全性が期待できるWaymo車だが、ただしこの調査でWaymo車が有利になったと考えられる理由がある。
1つ目は、Waymoの自動運転タクシーが現在は都市部でのみ運行しているということだ。米国での事故の大半は都市部で発生しているが、人口比で見ると地方の方が事故の割合がはるかに高くなっている。特に死亡事故の件数は、地方の方が多い。
2つ目はWaymoの自動運転タクシーの運行開始から、まだ多くの年数が経っていないということだ。調査対象となる期間が短いため、正確な評価を行うのはかなり難しくなっているという側面もあるようだ。
■世界で初めて自動運転タクシーを商用化
Waymoは2018年、世界初となる自動運転車を活用した有料の商用タクシーサービスを、アリゾナ州フェニックスで一部ユーザーを対象に開始した。当初はセーフティドライバー同乗のもとサービスを提供していたが、2019年末ごろに一部ユーザーを対象にドライバーレスのサービスを導入し、2020年10月ごろには対象を一般ユーザーに拡大している。
2021年にカリフォルニア州サンフランシスコでもサービスを開始、2024年には同州ロサンゼルスとテキサス州オースティンにも展開を拡大した。現在4都市で運行しているWaymoの自動運転タクシーだが、2025年にアトランタ、そして2026年にマイアミにも拡大する予定だ。
■さらなる技術開発が求められる
今回の調査では保険請求件数が手動運転より少ないという結果になったWaymoだが、たびたびトラブルを起こし周辺住民から批判を浴びるなど、問題になっていることも事実だ。2024年5月にアリゾナ州フェニックスで発生した衝突事故を受け、同社の自動運転車全車両672台を自主リコールし、ソフトウェアアップデートとマッピングの改良を行った。
また米運輸省高速道路交通安全局(NHTSA)により、Waymo車による事故が報告より多く発見されたことが報告されたり、サンフランシスコで通学途中の児童が交差点で無人のWaymo車にひかれそうになるという事例が相次いでいることが報告されたりと、安全性が不安視されるようなトラブルも多い。
保険請求の件数については手動運転車より少ないことが分かったWaymoだが、安心・安全な走行にさらに努めることが望まれる。それにより地域での社会受容性も高まっていくだろう。
【参考】関連記事としては「Googleの自動運転、全672台がリコール!電柱との衝突事故を受け」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)