ホンダ出資先、自動運転事業「失敗」で巨額赤字3,300億円 米Cruiseが苦境

自動運転タクシーサービスを停止中

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出典:Ian Muttoo / Flickr (CC BY-SA 2.0)

米GM(ゼネラルモーターズ)傘下で自動運転車を開発しているCruiseの業績が苦戦している。GMは2024年第3四半期決算をこのほど発表したが、Cruiseは4億3,500万ドル(約670億円)の赤字を計上していることが分かった。第1〜3四半期累計では赤字額は21億9,600万ドル(約3,300億円)となった。

重大な交通事故を起こしたことにより、自動運転タクシーの商業運行を停止しているCruise。同社にはホンダが出資していることで知られる。サービスを再開し、事業が黒字化するのは相当先になるのか。

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■昨年よりも損失は減少したが・・・

GMが2024年10月24日に発表した2024年第3四半期決算によると、Cruiseは4億3,500万ドルの損失を出している。この数字は前年同期の7億9,100万ドル(約1,200億円)の損失と比較して45%減と、改善はしてきている。

元々多額の研究開発費を投入しているため赤字となっており、自動運転タクシーの運行停止により自動運転開発がストップし、赤字額が減ってきているとも言える。

ただし2024年第1〜3四半期累計では、赤字額が前年同期比8.1%増の21億9,600万ドルとなっている。

【税引き前利益】※▲はマイナス
2024年第3四半期:▲4億3,500万ドル
2023年第3四半期:▲7億9,100万ドル
——–
2024年第1〜3四半期合計:▲21億9,600万ドル
2023年第1〜3四半期合計:▲20億3,000万ドル

出典:GM IR資料
出典:GM IR資料

▼GM Releases 2024 Third-Quarter Results and Updates Full-Year Guidance|General Motors Company
https://investor.gm.com/news-releases/news-release-details/gm-releases-2024-third-quarter-results-and-updates-full-year

■自動運転タクシー運行停止の経緯

世界で初めて自動運転タクシーを商用化したのは米Google系のWaymoだが、それに続いたのがCruiseであった。Cruiseは2022年2月にサンフランシスコで自動運転タクシーサービスを開始した。その後、アリゾナ州フェニックスとテキサス州オースティンにもサービスを拡大している。

順調に見えたCruiseの自動運転タクシーの運行だが、2023年3月にはCruise車がバスに追突する事故を起こした。Cruiseの自動運転タクシーが走行中、バス停を出発したバスが前方に出てきて停車したところ、ブレーキが間に合わず時速10マイル(約16キロ)で追突したという。Cruiseはリコールを届け出て即座にソフトウェアを改善し、再発防止策を講じた。

以前からCruiseはたびたび交通トラブルを起こしていた。2022年5月と6月に、10台ほどのCruise車が数時間にわたり立ち往生し、道をふさぐトラブルを起こした。そのほか、横断歩道を渡ろうとしていた歩行者に道を譲らなかったり、Cruise車が消防車の行く手を阻んだことで消防車を足止めしたとりいったトラブルもあった。

自動運転タクシーの全面停止が決定的になったのは、2023年10月に起こした人身事故が原因だ。サンフランシスコの路上でCruise車が歩行者を引きずり、重傷を負わせるといった大事故であった。

これにより、同社はカリフォルニア州での自動運転タクシーの運行許可を取り消され、全米での運行を全面停止するに至った。同年11月には、当時のCEOが辞任している。さらに、親会社のGMは自動運転タクシーの専用車両「クルーズ・オリジン」の開発を無期限に停止することを2024年7月に発表した。

■ホンダと自動運転タクシーを展開予定

ホンダとGM、Cruiseの3社は、自動運転タクシーサービスを開始する合弁会社の設立を目指す覚書を締結したことを2023年10月に発表した。2024年前半の新会社設立を目指しており、2026年初頭から日本国内で自動運転タクシーサービスを開始するといった内容であった。

自動運転タクシーサービスでは、3社が共同開発した自動運転専用車両「Cruise Origin(クルーズ・オリジン)」を使用する。指定場所まで迎えに来るところから、目的地に到達するまで全て自動運転で行われ、配車から決済まで全てをスマホアプリで完結する配車サービスとなっている。

このサービスは、まずは東京都で数十台から開始してから、500台規模での運用を見込んでいるという。その後、順次台数を増加させ、サービス提供エリアの拡大を目指すようだ。

この発表の直後に、Cruiseは事故による運行停止となっている。その後、日本での計画の進捗は公表されていないようだ。

■Cruiseは試験運行を再開したが・・・

Cruiseは2024年4月、「手動運転」によるデータ集めを一部都市で再開すると発表した。また同年9月には、2024秋後半から自動運転車のテスト運行を再開することを発表している。カリフォルニア州サンフランシスコのベイエリアで最大5台の自動運転車の監視付きテストを行う予定だという。

Cruiseが安全性への信頼を取り戻し、自動運転タクシーの商業運行を再開するのはいつになるのだろうか。収益化はまだまだ先になりそうだが、今後の同社の取り組みに注目していきたい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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