交通誘導のジェスチャー、自動運転車向けに「QRコード化」か 警察庁検討委が案

緊急車両の「画像標本」化も?

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自動運転時代の交通誘導はQRコードで行う?──。警察庁所管の「令和6年度自動運転の拡大に向けた調査検討委員会」の中で、自動運転車が交通整理や誘導を認識するための一つの案としてジェスチャーのQRコード化が示された。

人間のジェスチャーによる誘導は誤差が生じやすいが、これをデジタル化することで自動運転車も容易に対応しやすくなるのかもしれない。

自動運転サービスの普及を見越し、調査検討委員会ではどのような議論が進められているのか、その中身を紹介していこう。

自動運転サービスの普及を見越した各種調査や論点整理を行う警察庁所管の「令和6年度自動運転の拡大に向けた調査検討委員会」が2024年8月にスタートした。

本年度は、道路交通法が抱えるあいまいさの解決や、ドライバーによる柔軟な判断を要するシーンの抽出などを行い、自動運転車を含むすべての交通参加者が安全かつ円滑に走行できる道路環境の整備を進めていく方針だ。

この中で、交通整理や交通誘導員への対応も課題の一つに挙げられた。人間による誘導・指示を機械的に正確に読み取ることが困難なためだ。

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■調査検討の背景

自動運転時代の道交法上の課題を抽出

自動運転車の交通ルールなどをめぐっては、デジタル庁などが所管する「AI時代における自動運転車の社会的ルールの在り方検討サブワーキンググループ(SWG)」で議論が行われ、「自動運転車の実装にあたり課題となり得る道路交通法の規定の有無、対応方法などについての検討、自動運転車による道路交通法の具体的な遵守方法に係る検討が必要」とされた。

事故時の責任の所在をはじめ、道路交通上あいまいとなっている部分や課題を抽出し、解決策を導き出すための議論だ。

これを受け、調査検討委は現在の技術水準において開発者側が自動運転実装にあたり課題になり得ると認識している交通ルールに関し、自動運転車を含むすべての交通参加者の交通安全と円滑を確保する観点から、2026年初頭に実現予定の自動運転タクシーの実装を念頭に置きつつ課題の有無・対応方法について論点整理を実施することとした。

なお、SWGでは道交法関連について、「第36条(交差点における他の車両等との関係等)、同法第38条(横断歩道等における歩行者等の優先)、同法第42条(徐行すべき場所)など、道路交通法が指し示す態様が抽象的な表現となっているものがある」と指摘している。

自動運転車が道路交通法を遵守するには、道路交通法の内容を適切に踏まえた形で自動運転システムがプログラミングされる必要があり、道交法の解釈明確化など、いわば道路交通法自体の機械可読化(翻訳)に向けた検討の必要性に触れている。

また、道路交通法は一般的・抽象的に道路交通の安全を保護するための法律であるため、結果回避義務が具体的に規定されるものではないとする意見もあったようだ。

■自動運転社会に向けた課題

道路交通法は抽象的?

法律全般に言えることだが、その特性上道路交通法など各条文が定義する内容があいまいなものが多い。例えば、安全運転義務について定めた同法第70条は「車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない」と示されているが、「その他の装置」にはどこまで含まれるのか、「確実に操作」するとはどういった状態を示すのか……など、解釈があいまいなのだ。

一定の指針はあるものの、多くの場合現場の判断やその結果起きた事故などをもとに適用している印象が強い。制限速度など定量的なものもあるが、そのシチュエーションに応じて判断を求められるケースが道路交通では少なくない。

人間のドライバーは、状況に応じて適切な判断のもと安全に自動車を制御することができる(できないドライバーもいる)が、AI・コンピュータがその都度判断を下す無人自動運転車は、機械的に判断しづらく柔軟な判断を求められる場面が苦手なのだ。

横断歩道や優先道路などにおける判断もあいまい?

こうしたあいまいな点として、調査検討委では「横断歩道等における歩行者等の認知」や「優先道路の判断」を例示している。

横断歩道に関しては、第38条で「車両等は、横断歩道又は自転車横断帯(中略)に接近する場合には、当該横断歩道等を通過する際に当該横断歩道等によりその進路の前方を横断しようとする歩行者又は自転車(中略)がないことが明らかな場合を除き、当該横断歩道等の直前(中略)で停止することができるような速度で進行しなければならない」と定められている。

歩行者や自転車が「横断しようとする」状態をどのように識別・判断すべきかは人間のドライバーでも迷うことがある。道路幅が広く、横断しようとする歩行者が自車から離れている場合はどのように対応すべきか。また、歩行者がクルマに先に行くよう譲るケースも多いが、どのように判断すべきか。

歩行者などに過剰に対応し過ぎると、横断歩道手前で頻繫、あるいは長時間停止することになり、円滑な交通流に影響を及ぼす恐れがあることも指摘されている。機械的な判断が難しいところだ。

委員からは「現在は道路交通法上違反となる基準があいまいで、運転者の側が一定のリスクを負って運転しているが、検討を通じて基準が明確になれば自動運転車のみならず自動車全体の安全な通行にとっても有益」といった意見が出された。

「横断しようとする歩行者や自転車」の解釈や定義を明確化することや、指針やガイドラインといった判断基準を作成が求められるのかもしれない。

複雑な認知を要する場面や臨機応変な判断が求められるケースなどに課題

調査検討委で示された日本自動車工業会自動運転部会の報告資料によると、課題となるシーンについて以下を挙げている。

出典:警察庁公開資料

①では、前述した歩行者横断をはじめ、渋滞車列などの間をすり抜ける二輪車の存在の認知、補助標識等の内容の認知、警察官等による交通整理の内容の認知、緊急自動車等の接近の認知、採るべき挙動の判断などが該当する。 人間のドライバーも同様だが、渋滞車列を抜けてくる2輪車を発見できるのは交差点に入ってからの場合が多く、急ブレーキ要因となり得る。また、必要以上に警戒した場合は円滑な交通流に影響を及ぼす恐れもある。横断歩道同様、一定の指針が必要かもしれない。

補助標識は、「大型等以外の車両 二輪・小特・軽車両を除く 土曜・日曜・休日を除く 7-9」などの文字標識の正確な認識が問われる。センサーやAIの高度化、ダイナミックマップへの情報付加などで対応可能ではあるものの、中には臨時の交通規制の表示板などもあり、対応しきれないケースが出てくる可能性が高い。

記述のルール化や簡素化、臨時の交通規制を含めた情報の事前共有、データベース化、V2Iによるリアルタイムの情報配信などが対策として挙げられている。

交通整理や誘導をデジタル化?

警察官などによる交通整理に関しては、警察官であることの判別や位置関係による見え方の違い、警備にあたる交通誘導員であることの判別や同一指示で異なるジェスチャー・ジェスチャーの個人差、誘導員が複数いる場合誰に従うべきかの把握などが課題に挙げられている。

解決策には、誘導が必要な場合の事前通達や、交通整理のジェスチャーの標準化、ジェスチャーのQRコード化やデジタル表示化、通信などのインフラ活用が挙げられている。

ジェスチャーのQRコード化は面白い案だ。カメラで即座にデータを読み込み可能なQRコードであればさまざまなジェスチャーに対応できる。複雑な補助標識などとともにQRコード化を図ってみるのも良いかもしれない。

ただ、ふとした疑問だが、QRコードは簡単に作製でき、コピーもできる。悪意あるいたずらなどで偽物が掲示された場合の対処、未然防止策など、セキュリティ面もしっかりと考慮しなければならないものと思われる。

であるならば、自動運転車用のあらたなロードサイン・標識を作成するのもアリではないだろうか。国際基準化も視野に、一般的な交通標識以外のもので比較的使用頻度の多いものをサイン化してしまうのも有効かもしれない。

出典:警察庁公開資料

緊急車両やサイレンなどの画像標本・音声標本を収集し標準化

緊急車両に関しては、接近してくる方向や車線などをいち早く認知して対応することが重要だが、左に寄っても車両が通り抜けられないケースや、譲らずに走行し続けたほうが良い場面などもある。緊急車両から音声指示が出されることもあり、こうしたものの理解も求められる。実際、米国では自動運転タクシーが緊急車両の通行を妨げた案件も複数見られる。

考え得る対策としては、認知すべき緊急車両の画像標本・サイレンなどの音声標本の標準化や、認知漏れ適用法の明確化と行政処分の具体例の確認、回避行動の限界の明確化 遠隔監視者による車両操作、V2Xなどによる連携や緊急車両からの車両操作指示などが挙げられている。

あらかじめ緊急車両の画像や音声を標本化することで、認知性能を高めることができそうだ。「そのまま動かないで」「左に寄って停車して」など、よくあるパターンの音声も標準化を図ることで対応しやすくなりそうだ。

出典:警察庁公開資料

交通違反者への対応も急務

②臨機応変な判断では、交通ルール違反を行う他の交通参加者への対応や、規制速度よりも実勢速度が上回る場合に採るべき走行速度、交差点付近の駐車車両対策、左折レーンの渋滞により円滑な左折ができない分岐路で路側帯に並ばないと無理な割り込みや車線を塞ぐことになるケースなどが挙げられている。

横断禁止の道路における歩行者の飛び出しや自動運転車へのあおり運転など、道路上には違反が溢れている。本来イレギュラーな存在ではあるもののその数は多く、危険を回避するため自動運転車は安全マージンを大きく取らざるを得ない。場合によっては走行不能に陥る。

自動運転車が走行するエリアにおける取り締まりや啓発を強化するだけでは問題解決に至らない。この問題に関しては、システムの精度を高める以外絶対的な対策はないのかもしれない。

交差点付近の駐停車も問題だ。例えば、道交法に違反する形で停止線付近に駐停車している車両と左折待ちのクルマを判別しにくいケースがある。ウィンカーの有無や路側端からの距離などで判別できそうだが、中にはウィンカーをつけ忘れている輩や、直前になってやっとつける輩もいる。

また、商業施設などへの進入待ちの渋滞車列が車道に及んでいるケースも少なくない。交差点をまたぐケースもある。

自動運転車の走行エリアにおいては、単純な駐車車両含めこうした様々なケースを想定し、事前に対策を講じなければならないのかもしれない。

走行速度関連では、特に高速道路における速度差に注意を要するようだ。本線への合流部の加速車線が極端に短い場所や、想定以上の速度で走行する一般車両への合流など、一筋縄ではいかないケースがいろいろ考えられる。

自動運転タクシー専用の乗降場所も必須に?

③タクシー特有の行動では、指定された乗降場所への停車が困難な場合が挙げられている。停車禁止場所での乗降を希望する利用者は意外と多く、有人の既存タクシーが違反するケースも珍しくない。また、定められたタクシー乗降スペースが埋まっている場合などもある。

利用者らへの啓発はもちろんのこと、安全に乗降できる自動運転タクシー専用の乗降場所を設置するなど、インフラ面での対応も必要となりそうだ。エリア内に複数の乗降スポットを設定し、スポット間のシャトルサービスのような形で自動運転タクシーサービスを展開するのも近道と思われる。

出典:警察庁公開資料

■【まとめ】先進事例も交え2024年度末に取りまとめ

調査検討委は、自動運転タクシーの先進地として米カリフォルニア州などの視察も予定している。論点整理を進め、2024年度末に報告書を取りまとめる予定だ。

Waymoらが商用化済みの米国では、道交法上どのような運用が行われているのか、また、事業者は各種課題をどのように認識し、解決を図っているのか気になるところだ。

自動運転の社会実装・普及を契機に、交通ルールやインフラ全般の在り方を見直していくのも重要だ。未来の道路や移動の在り方をどのように創造していくか、こうした観点の議論にも注目したいところだ。

※自動運転ラボの資料解説記事は「タグ:資料解説|自動運転ラボ」でまとめて発信しています。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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