トヨタ系MONET、売上微増止まり!MaaS事業で苦戦?赤字も増加

医療MaaSや行政MaaSを手掛ける注目企業

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出典:官報

トヨタ自動車とソフトバンクの共同出資会社であるMONET Technologies株式会社(本社:東京都千代田区/代表取締役:清水繁宏)=モネ・テクノロジーズ=の第6期(2023年4月〜2024年3月)決算公告が、このほど官報に掲載された。

第6期の売上高は前期比7.2%増の16億6,124万円、当期純損失は前期比で80%赤字額を増やし、1億2,271万円であった。

過去3期の売上高と純損益の推移は、以下の通りとなっている。4期から5期は売上高が大幅に下がっており、5期から6期にかけては微増しているものの、MaaS事業に苦戦しているのか、とも思えるような結果となっている。

<売上高の推移>
・第4期:20億4,158万円
・第5期:15億4,962万5,000円
・第6期:16億6,124万5,000円

<純損益の推移>
・第4期:1億1,986万7,000円
・第5期:▲6,803万4,000円
・第6期:▲1億2,271万1,000円
※▲はマイナス

■貸借対照表と損益計算書の要旨

貸借対照表の要旨(単位:千円)

▼資産の部
流動資産 3,198,611
固定資産 762,180
資産合計 3,960,791
▼負債の部
流動負債 473,902
・賞与引当金 40,900
・その他 433,002
固定負債 40,653
負債合計 514,556
▼純資産の部
株主資本 3,446,235
・資本金 2,500,000
・資本剰余金 2,500,000
・・資本準備金 2,500,000
・利益剰余金 △1,553,764
・・その他利益剰余金 △1,553,764
純資産合計 3,446,235
負債・純資産合計 3,960,791

損益計算書の要旨(単位:千円)

売上高 1,661,245
売上原価 971,605
売上総利益 689,639
販売費及び一般管理費 795,517
営業損失 105,877
営業外収益 343
営業外費用 2,386
経常損失 107,920
特別損失 12,500
税引前当期純損失 120,421
法人税、住民税及び事業税 2,290
当期純損益 122,711

■トヨタとソフトバンクのタッグで設立

MONET Technologies設立の発表会で握手するソフトバンクの孫正義会長(左)とトヨタ自動車の豊田章男社長(右)=トヨタ自動車プレスリリース

MONET Technologiesは、トヨタとソフトバンクが日本の社会課題の解決や新たな価値創造を可能にするモビリティサービスの実現と普及に向けて2018年9月に設立、2019年1月23日に合弁会社化された。

「モビリティサービスを通じて人々の暮らしをもっと豊かに」を理念に、今後増加していくことが予想される移動困難者の課題を解決するとともに、将来の自動運転社会を見据えて自動運転車両を活用した新たなモビリティサービスを創出することを目指している。全国の自治体と連携しながら、地域の課題解決や発展に役立つ各種MaaSサービスの開発・提供といった事業をメインとしている。

具体的には、予約・配車システムにより高い利便性と効率的な公共交通を実現する「オンデマンドサービス」や、オンライン診療などに活用できる「医療MaaS」、移動型行政サービス「行政MaaS」の3つを中心に事業を展開している。MONET Technologiesは、自治体・企業によるモビリティサービスを実現するための利用者向けアプリのほか事業者向けシステムやMaaSに適した車両を開発・提供を行う。

■多数の自治体のMaaS実装に貢献

MONET Technologiesの導入事例としては、鳥取県南部町で約190カ所で乗降可能な町営ふれあいバスや、富山県射水市で市民・観光客と施設・観光スポットをつなぐ新しい地域公共交通の運行を手掛けている。また医療MaaSでは熊本県八代市でオンライン診療や服薬指導、薬剤配送にマルチタスク車両の導入、行政MaaSでは秋田県由利本荘市でマルチタスク車両を活用した移動市役所サービスといった実証事業を数多く行っている。

2024年に入ってからは、熊本県阿蘇小国郷での「小国郷医療MaaS・DX推進事業」に協力することを1月に発表した。MONET Technologiesは、オンライン診療の実施に適した通信環境を整備した車両のほか、診療の予約状況とそれに応じた最適な運行ルートを確認できる運行管理システム、車両の稼働状況などを確認できる管理者向けのシステムを提供する。

また2月には、北海道三笠市での行政MaaSの本格運用に協力することを発表した。マイナンバーカード1枚で、市役所へ行かなくても自宅近辺で行政サービスを受けられる環境を整備、移動が難しい市民にも継続的にサービスを提供できる環境作りに寄与していく。

■コンソーシアムも運営、加盟企業は増加中

MONET Technologiesはモビリティ革命を実現する「なかまづくり」の一環として、業界・業種の垣根を越えた企業間の連携を推進する「MONETコンソーシアム」を2019年3月に設立している。2024年7月時点で805社が加盟しており、自動運転を見据えたMaaS事業開発などの活動を行うことで、次世代モビリティサービスの推進や移動における社会課題の解決、新たな価値創造に取り組んでいる。

地方自治体などがMaaSを実装する際に大きなサポートを行っているMONET Technologies。今後の事業展開と業績に引き続き注目していきたい。

※官報に掲載された決算公告に関する記事は「自動運転・MaaS企業 決算まとめ」から閲覧頂くことが可能です。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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