米航空宇宙局(NASA)は2024年1月31日までに、ドローンを自律飛行させることに成功したと発表した。こうした取り組みを通じ、いずれは完全自律型の「空飛ぶタクシー」を実現させる。今回は人間の介入無しで複数のドローンが離発着や飛行を行うことができたという。
操縦者有りでの空飛ぶタクシーの開発に取り組む民間企業は数多くあるが、完全自律型で実現を目指しているとは、さすがNASAだ。ハードルはかなり高めだが、豊富な開発人材を武器に早期に実現させることができるのか、注目だ。
■離陸・飛行・着陸を全て完全自律型で
今回の自律型ドローンの飛行実験を行ったのは、米バージニア州ハンプトンにあるNASAラングレー研究センターだ。
使用機種は米Freefly Systemsの小型ドローン「ALTA 8 Uncrewed Aircraft Systems」で、「NOVO-BVLOS」飛行と呼ばれる目視外飛行を成功させた。今回の実験では、市街地のテストエリアで複数のドローンをパイロットが全く操縦することなく、離陸・飛行・着陸の全てにおいて自律型で行うことに成功した。
ちなみに、地上の観測者が目視可能な範囲を超えてドローンを飛行させるためには、NAA(米連邦航空局)から特別な承認を得る必要があったという。
■「NASAの技術は業界に大きな利益」
このドローンに搭載されたソフトウェアは、空域通信や飛行経路の管理、他のドローンとの回避などを自動で行い、その様子は遠隔操作コントロールセンターから観察された。
この技術は、将来的にドローンや空飛ぶタクシーなどの次世代モビリティ「Advanced Air Mobility」(AAM)の実用化に不可欠なものになる。NASAは、このプロジェクトで開発された新技術を一般公開し、民間のメーカーなどがモビリティ開発を行う際にソフトウェアにアクセス可能にするという。
今回のプロジェクトにおける飛行運用責任者のJake Schaefer氏は「今回開発したNASAの技術は、業界に大きな利益をもたらすだろう」と自信を見せる。また、空港や都市に隣接した国家空域内において飛行テストを実施することで、NASAは将来のAAMモビリティのために、制御された適切な環境で技術や手順をテストする準備が整っていることをアピールしている。
そしてNASAの持つ技術の1つが「ICAROUS(Integrated Configurable Architecture for Reliable Operations of Unmanned Systems)」だ。このソフトウェアは、自律的な検出や回避機能を提供し、他の航空交通との十分な距離を維持するためのシステムの一部である。
このほか「Safe2Ditchシステム」では、飛行中に緊急事態が発生した際に機体が地面を観察し、最も安全な着陸場所を自律的に判断することができるという。
■NASAの技術開発の動向に注目
欧米や中国、日本を中心に空飛ぶタクシーの開発が進んでいる。ただし現状はそのほとんどが、人間が操縦することが前提になっている。航空・宇宙開発の第一人者であるNASAが、どこまでこの分野で技術を高めていくことができるのか、関心が集まりそうだ。
【参考】関連記事としては「空飛ぶクルマとは?(2024年最新版) 開発企業・実用化状況まとめ」も参照。