トヨタ自動車が静岡県裾野市に建設中の実証都市「Woven City(ウーブン・シティ)」。2024年夏に第1期の建物が完成予定で、2025年の実証実験の一部開始に向けて準備が進んでいるようだ。
トヨタはモビリティカンパニーへのモデルチェンジを進めており、Woven Cityは最新技術を研究開発する主要拠点の一つだ。このプロジェクトを主導するのは、子会社のウーブン・バイ・トヨタ。これまでの動きと、今後の計画を分析する。
■豊田前社長が発表したWoven City
Woven Cityは、静岡県裾野市のトヨタ自動車東日本の東富士工場の跡地を活用して建設が進められている実証都市だ。豊田章男前社長が、2020年1月に開催された世界最大の技術見本市「CES 2020」の場において開設を発表した。
2021年2月に着工、東京ドーム約15個分の広大がエリアに人が住み、モビリティのためのテストコースとして活用する予定で建設が進んでいる。2024年夏に第1期の建物が完成し、2025年に実証実験がスタートするものとみられている。
Woven Cityにはトヨタの従業員やプロジェクト関係者をはじめ、2,000人程度の住民が暮らすことが想定されており、第1段階としては360人程度が入居予定だ。
またテストコースについては、自動運転モビリティ用の道、歩行者とスピードが遅いパーソナルモビリティが共存するプロムナード、歩道がある縦長の公園のような道の3種類の道路が3×3の街のブロックを形成する。また、第4の道としてモノを自動配送するネットワークを地下に構築し、地上の建物をつなげるという内容のようだ。
■研究対象は12領域
Woven Cityでの研究領域は、モビリティ・トランスポーテーション、エネルギー、物流、農業・食品、IoT(データ・ICTインフラ)、ヘルスケア、教育、エンターテインメント・小売り・アーティスト、金融・決済、セーフティ・セキュリティ、スマートホーム、住宅・オフィスの12分野を設定している。
トヨタは、モビリティを日常生活における12の領域と組み合わせ、従来の「モビリティ=クルマや移動手段」という概念を超え、モビリティの可能性を広げていく予定だ。
■ENEOSやNTTが実証パートナーに
実証に向けては、パートナー企業がすでに発表されている。1社目はENEOSで、共同開発契約では、Woven City隣接地に水素ステーションを建設することが決まっている。
また、再生可能エネルギーでCO2フリー水素を製造する水電解装置を水素ステーションに設置すること、製造したCO2フリー水素を乗用車や商用車などさまざまなFCEV(燃料電池自動車)に供給するとともにパイプラインでWoven Cityに供給すること、水素ステーション内に停電時用のFC発電機を設置することが決定している。さらに、Woven CityのコミュニティエネルギーマネジメントシステムとENEOSの水素製造を最適化する水素エネルギーマネジメントシステム(EMS)の連携を検討していくようだ。
そのほか、NTTとは「スマートシティプラットフォーム」を共同で構築し、先行ケースとして、まずはWoven Cityと東京都港区品川エリアにて実装する。日清食品とは、ウェルビーイングの実現に向け、Woven Cityにおける「完全栄養食メニュー」の提供を通じた、住民の食の選択肢拡充と健康増進の共同実証や、一人ひとりに最適な「完全栄養食メニュー」の提供に向けたデータ連携といった取り組みを検討していく。
■建設は着々と進行中
「Voices of Woven City 2023 Autumn」という動画が2023年12月7日にYouTubeに公開されている。
動画には、「Woven Cityでは Phase1の建設工事が進んでいます。建設現場で働く仲間たちの、『自分以外の誰かのために』を考える声をまとめました。着々と進む工事の様子と共にご覧ください。」とのメッセージが添えられており、大きなビルが出来上がりつつある様子を見ることができる。また現場でのインタビューからは、Woven Cityの建設に携わっているという誇りのようなものも伝わってくる。
計画通りであれば、あと半年ほどで第1期の建物が完成する。どんな施設が出来上がるのか。進捗を追っていきたい。
【参考】関連記事としては「トヨタWoven City、デジタルツインで「自動運転」をすでに実現」も参照。