電動キックボード大手Luupが上場準備 累計調達額127億円に

1万ポート設置目標、前倒しで達成へ



電動キックボードなどのシェアリングサービスを展開する株式会社Luup(本社:東京都千代田区/代表取締役社長:岡井大輝)が、上場に向けた準備を始めていることが分かった。


同社は総額約36億円の資金調達を行ったことを2023年11月7日に発表した。同年4月にも総額約45億円の資金調達を行っており、累計調達額は約127億円になった。

この資金調達に関するブルームバーグによるインタビューで、IPOについて同社の向山哲史CFO(最高財務責任者)が「しっかり収益が出るフェーズになってきた」「上場できるように準備を進めている」と回答している。

■本格事業展開のフェーズに移行

今回Luupは、デットファイナンスおよびアセットファイナンスにより合計約36億円の資金調達を行ったが、そのうちの25億円は、三井住友銀行をアレンジャーとするシンジケートローンによるものだという。そのほかの参画金融機関は、三井住友信託銀行や日本政策金融公庫、商工組合中央金庫、りそな銀行、京都銀行など計12社となっている。

これまで調達した資金により、ポートの新設や車両の増台、交通ルール啓発などの安全対策を強化していく。


2023年7月に改正道路交通法が施行され、電動キックボードをはじめとするモビリティ群が「特定小型原動機付自転車」という新たな枠組みに位置付けられ、それに合わせた交通ルールが設けられた。

岡井社長は「LUUPはようやく、ルール整備のための実証実験のフェーズから、本格事業展開のフェーズに移行することができた」とコメントしており、「業界のリーディングカンパニーとしての責任を果たし、交通ルールの啓発などを通じた安全性の向上に取り組むと同時に、さらなる事業拡大を進めていく」と意気込みを見せている。

■電動自転車・キックボードのシェアサービスを展開
出典:Luupプレスリリース

2018年設立のLuupは「街じゅうを『駅前化』するインフラをつくる」をミッションに、電動・小型・1人乗りのマイクロモビリティのシェアリングサービス「LUUP」を東京・大阪・京都・横浜・宇都宮・神戸・名古屋・広島で提供している。2020年5月に電動アシスト自転車、2021年4月に電動キックボードのシェアリングサービスを開始しており、その後も順調にポート数や展開エリアを拡大している。

このサービスを利用するには、同社のアプリにてポートやモビリティを選択する。ポートではアプリで車両のQRコードを読み取ることで、利用できる。なお返却ポートは利用中でも変更可能だ。利用料金は30分200円で、大阪のみ基本料金50円に1分あたり15円が追加されるという仕組みになっている。


同社によると、東京都の渋谷区や目黒区などではコンビニエンスストアの店舗数よりもLUUPのポート数の方が多く、他社と比較しても最も「ポート密度」の高いサービスになっているという。

■改正法施行が追い風、1万ポート設置へ

改正道路交通法の施行により、電動キックボードはサイズや最高速度など一定の基準を満たした場合、運転免許が不要になった。報道によれば、これによりLUUPは利用者数が増加しており、2025年までに1万カ所のポートを設置するという目標を前倒しで達成する見込みだという。現在のポート数は4,900カ所のため、倍増する計画になる。

より勢いづいている同社。上場を果たせば、電動キックボード関連サービスをほぼ専業にしている企業としては、初のこととなりそうだ。今後に引き続き注目したい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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