自動運転の掃除ロボに「ビル1棟まるごと」任せてみる!野村不動産が実証に着手

12階建てのビルでエレベーター連携の実証実験



出典:野村不動産ホールディングス・プレスリリース

オフィスビル1棟全体で掃除ロボットとエレベーターが連携し、自律自動の清掃業務を行う実証実験がスタートしている。これを行うのは、野村不動産ホールディングス株式会社(本社:東京都新宿区/代表取締役社長:新井聡)とオフィス家具大手の株式会社オカムラ(本社:神奈川県横浜市/代表取締役社長執行役員:中村雅行)だ。

今後はオフィスビル1棟全体での掃除ロボット活用を目指し、この実証を通じて複数台のロボットのエレベーター連携や一元管理、災害時対応の検討を進めていくという。


■掃除ロボと人間の最適なオペレーション構築も目指す

清掃業界の労働力不足や清掃員の高齢化という問題により、清掃ロボットの活用が期待されている。野村不動産のグループ会社では、一部のオフィスビルで掃除ロボットを活用した清掃業務を行っているが、掃除ロボットが自律移動してオフィスビル1棟全体の清掃業務を行うには、掃除ロボットとエレベーター等の設備連携や複数台のロボット管理、段差や傾斜路の走破、壁際清掃といった複数の課題があったという。

今回の共同実証は、これらの課題を解決するため、掃除ロボット活用における課題を整理し、稼働中のオフィスビルで実証を行うことによるロボット活用と人的な清掃業務の最適なオペレーション構築を目指すものになる。

「予備実証」と「本実証」の2段階で行い、予備実証は2023年6~8月に新宿野村ビルの2フロアで実施済みだ。

出典:野村不動産ホールディングス・プレスリリース
■予備実証ではオフィスワーカーに高評価

実証で用いられるのは、業務用掃除機を搭載して搬送し、自律走行して床掃除を行うオカムラの業務用掃除ロボット「STRIVER(ストライバー)Ⅰ・Ⅱ」だ。このロボットは通路の段差や傾斜の走行が可能で、壁際1センチまで接近して床掃除することが可能になっている。


予備実証では、1台の掃除ロボットをシステムによってエレベーター連携させ、複数フロアを清掃した。これにより、清掃員が手動で移動させることなく、掃除ロボットが自律的にフロア移動できたり、清掃員の監視外でロボットが独立して清掃業務を行うことができたりといったことが証明された。また、掃除ロボットの清掃性は清掃員の掃除と遜色なく、かつフロアの段差も走行できることが確認できたという。

なおビルのオフィスワーカーを対象としたアンケート調査では、8割以上が「ロボットが通行の妨げにならなかった」、「衝突等の安全面は気にならなかった」と回答している。

出典:野村不動産ホールディングス・プレスリリース
■本実証は12階建てのビルがまるごと実証場所に

12階建ての野村不動産大阪ビル1棟全体で行われる本実証は、2023年10月~2024年4月に行われる。複数台の掃除ロボットを連動し、エレベーター連携させ1棟全体を清掃するという内容になる。また、災害時の運用方法やエレベーター内での掃除ロボットの挙動に関する検討もされるという。

範囲をビル1棟全体に拡大することで、複数台のロボットのエレベーター連携や一元管理、災害時対応の検討を進めていくとしている。掃除ロボットの効率的な運用と、清掃員による人的な清掃オペレーションの最適な組み合わせを構築することで、更なる清掃サービスの品質向上と業務効率化を目指すという。


作業の人手不足が問題になっている昨今、ビルの清掃はロボットが行うのが普通になる時代が来るかもしれない。本実証の成果に注目したい。

【参考】関連記事としては「自動運転ロボ×エレベータ、規格策定で連携容易に」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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