ルート最適化AI開発のオプティマインド、損失35%増の4.5億円 第8期決算

「AI×物流」の名古屋大発スタートアップ

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出典:官報(※クリックorタップすると拡大できます)

ラストワンマイルのルート最適化サービス「Loogia」を開発する株式会社オプティマインド(本社:愛知県名古屋市/代表取締役社長:松下健)の第8期決算公告(2023年5月現在)が、このほど官報に掲載された。

当期純損失は、前期から赤字額を35%増やし4億5,203万円であった。過去3期の純損益の推移は以下の通りだ。なお第6期は官報に掲載されていないようであるため、第5期・7期・8期について記載する。

<純損益の推移>
・第5期:▲1億6,256万9,000円
・第7期:▲3億3,469万円
・第8期:▲4億5,203万2,000円
※▲はマイナス

■決算概要(2023年5月31日現在)
賃借対照表の要旨(単位:千円)

▼資産の部
流動資産 1,970,467
固定資産 21,813
資産合計 1,992,281
▼負債及び純資産の部
流動負債 91,468
株主資本 1,900,807
資本金 100,000
資本剰余金 3,030,751
資本準備金 2,759,277
その他資本剰余金 271,474
利益剰余金 △1,229,943
その他利益剰余金 △1,229,943
(うち当期純損失)(452,032)
新株予約権 4
負債・純資産合計 1,992,281

■ビジョンは「世界のラストワンマイルを最適化する」
出典:オプティマインド公式サイト

オプティマインドは、名古屋大学の研究技術を生かし「研究と実世界の乖離を埋めたい」という想いのもと、2015年6月に設立された「AI(人工知能)×物流」のスタートアップだ。「世界のラストワンマイルを最適化する」というビジョンのもと、ラストワンマイル配送におけるルート最適化サービスの開発と提供を行っている。

2018年5月にティアフォーと寺田倉庫を引受先とした第三者割当増資により、資金調達を実施した。また2019年10月に、シリーズAラウンドにおいてトヨタなどから総額約10億1,300万円の資金調達を実施したことを発表した。2022年12月には、シリーズBラウンドで約20億円を調達したことを発表している。

オプティマインドが開発したラストワンマイルに特化した配車システム「Loogia(ルージア)」では、配車計画の作成からリアルタイムの動態管理、ドライバーアプリまでを一貫して提供している。誰でも簡単に最適な配車計画を作成することができ、配車・配送業務を効率化させることが可能になる。ラストワンマイルならではのさまざまな条件を考慮した計画が立てられることや、走行データを学習させることで高精度な予測ができることが特徴で、各種システムとのAPI連携も可能となっている。

同社は世界トップレベルの最適化エンジンを複数所有しており、名古屋大学の柳浦教授による顧問のもと、ルート最適化を専門とする研究者が最先端の最適化技術を研究開発している。また実際の走行データを学習させることで、配送現場のさまざまな要素を蓄積し、ラストワンマイル配送に特化した新たな地図の構築を行っているという。

■大手企業との多数の実証実験や採用実績

オプティマインドとあいおいニッセイ同和損害保険は、将来の自動運転社会を見据え、MaaSの普及をサポートするために「安全で最適な走行ルート」の実現に向けた協業を開始し、業務提携契約を締結したことを2020年3月に発表した。

あいおいニッセイ同和損保が保有するテレマティクス自動車保険のデータを活用し、Loogiaに危険挙動発生多発地点や事故発生多発地点の情報を組み込むことで、オプティマインドのルート最適化ノウハウに安全性の観点を強化する研究を進めていくという内容だ。

また2022年3月までにLoogiaを全国最大500の郵便局で導入することを、2021年5月に発表している。さらにローソンの店舗配送ルート最適化に向けた共同実証実験が行われたり、佐川急便でLoogiaが導入されたりと、大手企業により採用が相次いでいる。

■「世界で一番ルート最適化について考える」

産業機械などの大手専門商社であるユアサ商事では、2022年からLoogiaを導入し、自社便の積載効率が10%向上、配送小口数が月間15%拡大したという。

2023年3月には、Loogiaに途中集荷を考慮してルートを作成できる新機能「pickup and delivery problem 機能」が装備された。これにより、配送する品物それぞれの配送元と配送先を明示的に考慮し、Loogia上で最適ルート策定をすることが可能になったという。また機能の1つであるドライバーアプリで、新たに住宅地図情報が利用可能になった。

オプティマインドの松下社長は同社の公式サイトで「企業、業種、国の枠を超えた『世界』のラストワンマイルを、効率化ではなく、人々の心にとっての『最適化』を目指し、世界で一番ルート最適化について考え、投資し、創り上げる、世界屈指の専門集団を目指し続けます」と語っている。

最先端技術を手掛けるオプティマインドの快進撃に要注目だ。

※官報に掲載された決算公告に関する記事は「自動運転・MaaS企業 決算まとめ」から閲覧頂くことが可能です。

【参考】関連記事としては「輸配送ルート最適化を支援!自動運転領域でも期待の技術」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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