地図から街を自動生成する技術と、物理挙動を伴いながら指定したルートで車両を自動走行させる新技術が開発された。
開発したのは、Unreal Engine専門のソフトウェア開発を手掛けるゲーム会社の株式会社ヒストリア(本社:東京都品川区/代表取締役:佐々木瞬)の自動車・建築・放送などに特化したブランド「ヒストリア・エンタープライズ」だ。
ヒストリア・エンタープライズは自動車業界に向けた研究開発の一環として、「Procedural City Generator」と「Custom Path Driving System」の2つを、Unreal Engine 5(UE5)とHoudiniを用いて開発した。2023年9月5日付で発表されている。
■ゲーム開発ソフトの「Unreal Engine」
今回の開発内容を詳しく説明する前に、まずは「Unreal Engine(アンリアルエンジン)」についておさらいしておこう。
Unreal Engineは米Epic Gamesが開発したソフトウェアで、ゲーム開発のほか映画やアニメーション、テレビ番組の制作など幅広い分野で活用されている。また建築や自動車設計でも用いられる。ゲーム開発において、Unreal Engineと、米Unity Technologiesが開発する「Unity」が2大ゲーム開発ソフト(ゲームエンジン)と言われている。
UE5は、Epic Gamesが2022年4月にリリースした最新バージョンになる。また「Houdini(フーディニ)」は、カナダのSideFXが開発する3DCG制作専用のソフトウェアだ。
■ヒストリア・エンタープライズの技術
今回ヒストリア・エンタープライズが発表した技術の1つ目は、地図から街を自動生成する「Procedural City Generator」だ。現実世界の地形データから、わずか2日で組み上がる仮想都市制作システムだという。自動生成された街に交通標識の配置などの編集を加えることで、仮想都市をスピーディに作成可能になっている。
2つ目は、物理挙動を伴いながら指定したルートで車両を自動走行させる「Custom Path Driving System」だ。手動で道路にパスを引き、それに沿ってタイヤの方向や物理的な車体の沈み込みを再現しながら自動走行するシステムになる。
これまでUE5標準機能でも物理的な自動車挙動を再現するシステムはあったが、基本的に手動運転することを想定しており、任意のパスに沿わせて走行することや、それをもとに思い通りの映像を作ることは難しかったという。
今回開発されたシステムを用いることで、シナリオに準じた走行シミュレーションやカットシーンとしてシーケンサーを利用した映像制作を効率的に行うことができるようになる。
■仮想都市で実証効率アップ
自動運転開発において、デジタルツインによる仮想都市上に自動運転車を走行させ、データ収集を行うことは必要不可欠になりつつある。今回ヒストリア・エンタープライズが発表した2つのシステムを組み合わせると、仮想空間での自動運転の実証実験を効率的に行うことができるようになる。
特にCustom Path Driving Systemにおけるタイヤの方向や物理的な車体の沈み込みを再現しながら自動走行するという仕組みは、より現実の走行に近い形で実証を行うことができ、自動運転システム開発において大いに役立ちそうだ。
ヒストリアは、今回の研究開発をきっかけに自動生成分野への研究をさらに深めるとともに、ヒストリア・エンタープライズでは自動車業界向けのコンテンツ制作における生産効率の向上を目指すという。今後も要注目だ。
【参考】関連記事としては「自動運転×デジタルツイン(2023年最新版)」も参照。