自動運転車が普及することによって「人々が太ってしまう」という研究結果が発表されたという。このレポートは、公衆衛生に関する問題を扱う「Australian and New Zealand Journal of Public Health」に掲載された。
結論を先に紹介すると、自動運転によるフードデリバリーサービスが普及することで、人はますます動かなくなり、フードデリバリーで取り扱われやすいジャンクフードが健康に悪影響を与え、肥満につながるということのようだ。
■フードデリバリー普及と肥満の関係
この研究では、医学研究機関「George Institute for Global Health」の食品政策部長であるSimone Pettigrew教授が研究リーダーとなり、さまざまな分野の専門家40人にインタビューを行ったという。
同教授によると、2050年には自動運転車やドライバーレスカーが交通の主流になると予想されている。自動運転車によるフードデリバリーの実現は生活を便利にする反面、健康に悪影響を与えるという。ジャンクフードの入手が容易になることと、買い物に外出することがなくなるため、運動量が減少するという理由からだ。その結果、肥満率に影響を与えるということのようだ。
この研究結果を受け、オーストラリアの公衆衛生協会は、健康への悪影響を防ぐために、食品配送の将来の動向を積極的に予測するよう政府に要求したようだ。
また今回の研究では、政府が検討すべき手段もいくつか紹介されている。例えば、ジャンクフードのデリバリーに用いる自動運転車のライセンス料を高くすることなどを提案している。
■各国で進むフードデリバリーの無人化
フードデリバリーで自動運転車や無人搬送ロボットを導入する取り組みが進みつつある。
米ライドシェア最大手のUber Technologiesは、自動運転配送サービス開発を手掛ける米Nuroの自動運転車をフードデリバリーに使用するための複数年にわたる提携を2022年9月に発表した。Uber Eatsのプラットフォームに自動運転車を導入し、無人配送を実現する試みのようだ。
またUberは、Google系の自動運転開発企業である米Waymoと複数年にわたる新たな戦略的提携を行ったことを2023年5月に発表した。フードデリバリーサービスにWaymoの自動運転車を活用するためのものだという。
欧州では英国の大手スーパーマーケットAsdaが、自走運転車による食料品デリバリーのトライアルを2023年4月から開始した。
中国ではコロナ禍の2020年2月に、フードデリバリー大手の美団が、自動運転車を使った食品のデリバリー事業を開始することを発表し、話題になった。Neolix(新石器)も2021年1月にフード販売ロボットの導入を発表、無人車両でのコンビニエンスストアサービスを行う計画を明かしている。
■ジャンクフードを食べたい欲求に負ければ…
健康を意識している人であれば、自動運転デリバリーサービスが普及したからといってジャンクフードを頻繁に注文するとは考えにくいが、ジャンクフードを食べたい欲求に負けてしまう人は……肥満が助長されるかもしれない。
【参考】関連記事としては「世界最大級の自動運転デリバリー、英国で17万人対象に実現へ」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)