自動運転タクシー、中国で完全無人&有料化!日本は周回遅れ?

早期に市民権を得て機運を高める必要性

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中国内でサービス実証が加速する自動運転タクシー。完全無人・有料化に踏み切った取り組みもあり、事実上、実用化域に達したサービスが拡大傾向にある。

日本は水を開けられた印象が強いが、事実として自動運転導入・サービス化に向けた取り組みの差は拡大している。

この記事では、この差を生み出す原因に迫っていく。

■中国における自動運転の状況
日本メディアも中国の自動運転サービスをピックアップ

中国では、開発各社が動画を用いて最先端技術やサービスをPRしている。近年では、各社の取り組みを取り上げる日本メディアも増加しているようだ。

FNNプライムオンラインが2023年5月にアップした動画「中国で「無人タクシー」 が急増 実際に乗ってみた」では、記者が実際に無人の自動運転タクシーを体験した様子が収められている。

冒頭、中国では無人のタクシーが次々とサービスを開始していることに触れ、中継で北京支社の記者にバトンタッチする。

Pony.aiの自動運転タクシーのそばに立つ記者は、トヨタが出資している点や車両にレクサスが用いられている点を説明した後、実際に後部座席に乗り込む。運転席や助手席にはドライバーも安全員もおらず、本当に無人の状況だ。

車両の呼び出しや目的地の設定はアプリで行い、18歳以上であれば誰でも利用可能という。後部座席に備えられたタブレットで「Start Ride」ボタンをタップすると、車両が自動で発進準備を開始する。

車両は全身を開始し、車線変更やUターン、右左折などを行いながら目的地へ。速度が時速60キロに達する場面も。

記者は、「運転手がいないため多少の怖さがある」としながらも、「カーブやUターンもスムーズで、人が運転しているのと正直ほぼ変わらない」と感想を話している。

中国では、こうした完全無人の自動運転タクシーが北京のほか重慶、広州市など全国4カ所で営業がスタートしており、開発競争が加速している点にも触れ、Pony.ai副総裁の話として「2025年までに中国の全国で無人タクシーを導入したい」「トヨタと協力し、最強の自動運転システムを構築して未来の交通を変えたい」といった談話も紹介している。

動画を通じて技術力や社会実装のスピードをPR

このほかにも、ANNnewsCHが2023年2月に「「完全自動運転タクシー」中国で本格的な営業開始」と題した動画で百度が武漢で開始した完全無人自動運転タクシーの様子を紹介している。

テレ東BIZと日テレNEWSも2022年8月、それぞれ「完全無人タクシーの営業開始 中国百度(バイドゥ)」「【中国・重慶】試験営業開始 記者が試乗 「完全無人運転」タクシーが」と題し、重慶で同サービスが始まったことをニュースにしている。

多少の忖度が入る余地があるものの、海外メディアを交えた動画による報道の信ぴょう性は高い。無人の自動運転車が混在交通下を走行しているという事実とともに、その技術力の高さを見せつけられるようだ。

以下、開発各社のYouTubeサイトを列挙するので、興味のある方はぜひ観ていただきたい。

▼Pony.ai
https://www.youtube.com/@Ponyai_Tech
▼WeRide
https://www.youtube.com/@WeRideAI
▼AutoX
https://www.youtube.com/@AutoXai
▼Baidu
https://www.youtube.com/@Baidu_Inc

■日本における自動運転の状況
日本ではティアフォーが実証に注力

日本国内関連では、日本経済新聞が2022年12月、ティアフォーの公道実証車両を体験した動画「【記者が体験】「ティアフォー」 の自動運転車、乗り心地は?」をアップしている。ティアフォーは、自動運転開発を手掛ける国内屈指のスタートアップだ。

動画は、おそらく都内で実施中の実証に同行したものと思われる。中国と異なりセーフティドライバーらが同乗しているものの、見る限り特に運転操作に介入することなくスムーズに走行している。

技術的には、中国企業と日本企業でそこまでの差はないものと思われる。ただ、実証における経験値が段違いで、中国企業は特定エリアで豊富な実証を重ねたからこそ、無人サービスを開始することができたのではないだろうか。

■日本と中国の差
法整備面では日本がリード?

中国では、国策のもとAI(人工知能)技術の開発や各種産業のスマート化が推進されており、自動運転技術もスマート交通やスマートカー、スマートシティ政策などとともに開発が促進されている。

国として全面的に無人自動運転を認める法改正などは行われていないものの、公道実証要件やガイドラインなどを随時制定している。これに基づき、北京や上海といった各市が走行可能エリアや独自の基準を設け、開発各社の取り組みを後押ししている。

一方、日本はどうか。日本も早い段階から公道実証を可能にするガイドラインなどを策定し、民間の開発を促進してきたのは間違いない。ドライバーが車内にいる場合と同等の安全性や利便性を確保することなどを条件に、限定地域における無人自動運転移動サービスの実証を認めてきた。

2023年4月には、自動運転レベル4を可能にする改正道路交通法も施行されており、法制度面ではむしろ日本がリードしていると言える。

日本は第1フェーズとして自動運転バスに注力?

ではなぜこのような差が生まれているのか。1つは、国の施策の注力の仕方だ。日本は自動運転の実用化に向け、自動運転バスやシャトルを先鋒に据えている節がある。これらのモビリティは、導入エリアの自治体の協力を得やすく、またあらかじめ定められた特定路線を走行し、導入台数も少ないため運行を管理しやすい。自動運転初期における注力分野の方向として正しいと言える。

一方、タクシーは一般的に自治体直轄の公共サービスではないため自治体は受け身になりがちで、走行経路も複雑で導入台数も多い。実用化に向けたハードルは高く、このため取り組み面において「後回し感」が強い印象を受ける。

また、スタートアップら開発勢の資金面にも大きな開きがあり、これも要因に挙げられそうだ。米国、中国はスタートアップの資金調達が盛んで、数十億ドル単位の調達ラウンドも珍しくない。日本円で数千億円規模だ。

一方、日本ではスタートアップへの出資が米中ほど盛んではなく、リーダー格のティアフォーで数百億円規模だ。これでも十分大きな金額ではあるものの、サービス化を前提とした大規模フリートによる実証を行うには心もとない点が拭えない。

目に見える形で開発加速を

自動運転技術の社会実装を推し進めるためには、目に見える形で露出を増やし、実証台数を増加して開発を加速していかなければならない。

当初は自動運転実証車両の物珍しさからくる好奇心と、一部のドライバーによる漠然とした嫌悪感を向けられるかもしれないが、露出が増えれば増えるほど特別視されることは少なくなり、自然と一交通参加者として受け入れられていく。

目に見える形で技術力や取り組みをPRすることで社会受容性が向上し、取り組みやすい環境が整備されていく――といった面は、意外と大きな効果を発揮するものなのだ。

また、フリートを大きくすることで得られる情報も多くなり、開発が加速されていく。自動運転タクシーの実現においては、特にこの台数による規模のメリットが著しく大きいものと思われる。

フリートの強化はすぐにできるものではないかもしれないが、自動運転タクシーの実用化も既定路線としてその技術とメリットをしっかりとPRし、継続的なサービス実証のフェーズまで早期に足を踏み込んでほしいところだ。

■【まとめ】早期に市民権を得て機運醸成を

道路交通法改正によりレベル4環境は整ったため、今後は各企業の取り組み姿勢が海外との差に直結することとなる。

いきなりフリート化は難しいとしても、「自動運転タクシーを実現する」といった強力な意志のもと、技術力をガツンと見せつけるようなPR手法で走行の様子などを拡散し、早期に市民権を得て機運を高めてほしい。

海外開発勢が日本国内に本格進出してからでは後手を踏みかねない。日本の開発勢の奮起に改めて期待したい。

【参考】関連記事としては「中国の自動運転タクシー事情」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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