自動運転移動サービスを確立するためには「高性能な乗客管理システムが大前提となる」と主張している経営トップがいる。VW子会社であるMOIAのCEO(最高経営責任者)、サーシャ・メイヤー氏だ。
MOIAは、自動運転ソフトウェアを開発する米Apex.AIのOSを使用し、乗客管理システムを自動運転車「ID.Buzz AD」向けに開発している。VWの子会社が頼りにするApex.AI。同社への注目度は今後さらに高まりそうだ。
■VW傘下MOIAとApex.AIがタッグ
VWグループはカーシェアリングや配車などの輸送サービスの提供を目指し、新会社MOIAを2016年に設立した。同社はベルリンとハンブルクの拠点でモビリティサービスを開発し、都市や地域の公共交通事業者と連携している。
現在、個々の車の交通を避けて道路インフラをより効率的に使用するための「ライドプーリングサービス」の開発・導入を行っている。ライドプーリングは直訳すると「相乗り」のことで、同じ方向に行きたい人々が1台のクルマをシェアして移動するサービスのことを言う。
MOIAは2021年から、独ハンブルクでVWの商用車を用いて自律走行型ライドプーリングサービスの開発とテストを行っている。2025年以降に一般利用が可能になるようだ。
同社独自の乗客管理システムは、自律型モビリティサービスにおいてドライバーの補助的な活動を行うものだ。このシステムは車内の安全監視を行うほか、ドアの開閉を代行したり、必要に応じて車内のさまざまな補助機能をコントロールしたりといった、全ての乗客が常に快適で安全に利用できるようにするものだという。
■Apex.AIのシステムに強い信頼感
MOIAのCEOであるサーシャ・メイヤー「『自律走行』が受け入れられるかどうかは、あらゆる場面で人々がそのようなサービスを信頼できるかどうかに大きく左右される。インテリジェントな自動走行車を使い、乗客に信頼されるモビリティサービスを確立するためには、高性能な乗客管理システムが大前提となる」としている。
その上で「Apex.AIのミドルウェアを使った当社の乗客管理システムの開発は、そのための理想的な基盤となる」とコメントしており、MOIAがApex.AIのシステムに信頼を置いていることが分かる。
■自動運転ソフトウェアを手掛けるApex.AI
2017年設立のApex.AIは、自動運転車やロボットのためのソフトウェアの開発を手掛けている企業だ。シリコンバレーの北部に位置するカリフォルニア州パロアルト市に本拠を構えるほか、ドイツとスウェーデンにも拠点を持つ。
2023年3月には日本にApex.AI Japan合同会社を設立し、日本をはじめとするアジアでのグローバルな事業拡大を行っていくとしている。また同年5月には韓国に拠点を開設、韓国市場への参入を発表した。
同社はソフトウェア定義型車両(SDV)やモビリティ・システム向けに、機能安全の認証取得済みの拡張性の高いソフトウェアを開発しており、主力製品は車載グレードのリアルタイムで信頼性の高いソフトウェア開発キット「Apex.Grace」となっている。
Apex.Graceと、高性能なデータを安全でセキュアに転送するためのツール「Apex.Ida」で構成されるオペレーティングシステムは、今回のMOIAの乗客管理システムのような採用ケースに最適な基盤になるという。今後MOIAとApex.AIは連携し、製品を共同開発していく。
■乗客管理システムがより重要に
「乗客管理システム」と聞くと、一般的にはユーザーの乗降を管理するシステムを思い浮かべるが、MOIAの手掛ける乗客管理システムは、それだけでなく、車内の安全監視や乗客のサポートなどを行うといった機能を持つ。自動運転車にはドライバー同乗する必要がなくなるため、それを代替するシステムだと言える。
ドライバーレスカーの開発や実用化が進んでいる現在、乗客管理システムの必要性はより高まると考えられる。
▼MOIA公式サイト
https://www.moia.io/en
▼Apex.AI公式サイト
https://www.apex.ai/
【参考】関連記事としては「自動運転システム開発の米Apex.AI、17億円の資金調達発表 シリコンバレーのスタートアップ」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)