特許庁がこのほど公開した「令和4年度分野別特許出願技術動向調査結果」によれば、日本はLiDAR(ライダー)に関して強みを持つことが示唆されたという。LiDARは自動運転車のコアセンサーなどとして使用されていることで知られる。
この調査は、市場創出・拡大が見込まれる5つの最先端技術テーマについて、特許情報などに基づき日本の強み・課題等を分析し、報告書を取りまとめたものだ。
【参考】関連記事としては「LiDARとは?」も参照。
■特許出願件数で日本がトップ
LiDARに関して、2016〜2020年の国際展開発明は、日本国籍出願人による合計件数が2,561件で首位であった。これは全体の24.2%を占める。2位が米国籍で2,329件、3位が中国籍で1,766件、4位が独国籍で1,433件と続く。
なお年次ごとに見ていくと、日本国籍は2016・2017・2018・2019年で1位、2020年は中国籍、米国籍に続いて3位であった。
米中が先行している印象がある自動運転開発だが、自動運転に必須となる技術のLiDARについては、日本が多くの特許を出願していることが分かる。しかし直近の調査の2020年では米中に首位を明け渡していることから、この2カ国が特許出願でも追い上げてきているようだ。
一方、2021年と2022年のデータは調査対象となっておらず、この直近2年間でどのデータが変化しているのか、今後の調査を待ちたい。
■出願人ランキング1位は日本のソニー
調査では、国籍別ではなく「出願人」ランキングも作成されており、日本のソニーグループが466件で1位であった。2位は独ボッシュグループで421件、3位中国のDJIグループで240件、4位韓国のサムスン電子グループで194件、5位米アルファベットグループで181件となっている。
上位20の出願人のうち、日本企業は7社ランクインしている。ソニーのほかは、5位のデンソーグループ、10位のパナソニックグループ、11位のトプコングループ、14位の三菱電機グループ、18位のトヨタ自動車グループ、19位のパイオニアグループだ。
■ソニーのLiDAR関連ニュース
ソニーグループのLiDAR関連のニュースとしては2021年2月に、SPAD(Single Photon Avalanche Diode)画素を用いた車載LiDAR向け積層型直接Time of Flight(dToF)方式の測距センサーを開発したことを発表したことがある。これは業界初のことだったようだ。
またソニーグループの半導体子会社ソニーセミコンダクタソリューションズは、LiDARをパワーアップさせる距離センサーを商品化することを、同年9月に発表している。2022年6月には、ソニーが車載LiDAR向け部品の量産を2023年に開始することを発表した。
■日本の老舗企業は勝ち組になれる?
「自動運転の目」として機能するLiDARは、自動運転車開発において必須の要素だ。LiDAR開発ではアメリカやイスラエルのベンチャー企業が派手に事業を展開しつつあるが、日本企業、特にこのランキングで上位に上がった老舗企業がこの領域で勝ち組になっていけるか、注目したい。
【参考】関連記事としては「自動運転と特許」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)