パナソニックアドバンストテクノロジーと大成建設は2023年5月18日までに、国土交通省の「宇宙無人建設革新技術開発推進事業」において、「月面適応のためのSLAM自動運転技術の開発」が継続採択されたことを発表した。
この研究開発は、同事業における「宇宙建設革新プロジェクト」として採択されたもので、事業化の可能性を調査する「F/S(フィージビリティ・スタディ)」から研究開発段階の「R&D Stage」にステップアップし、継続して実施していくという。
GNSS(衛星測位システム)などで位置情報を得ることのできない月面環境において、建設機械の自動運転化を実現するためには、パナソニックアドバンストテクノロジーが開発した「LiDAR SLAM技術」による建設機械の自己位置推定技術が役に立つ。
今回の研究開発では、この技術に人工的な特徴点を活用する「ランドマークSLAM技術」とカメラから得られる情報を統合することにより、月面環境でも適応可能な自動運転技術の構築を目指すという。
■SLAM技術とはどのような技術?
冒頭で触れたLiDAR SLAM技術とランドマークSLAM技術とは、どのような技術か。
LiDAR-SLAM技術とは、LiDARの計測値をメインの情報として使用し、自己位置推定と環境地図作成を同時に行うSLAM技術(Simultaneous Localization and Mapping:位置特定と地図作成を同時に行うことができる技術)のことを指す。
ランドマークSLAM技術は、あらかじめ配置した周辺環境と区別しやすいランドマークを基準として自己位置推定と環境地図作成を同時に行うSLAM技術のことだという。
研究開発では、NASAなどで公開されているデータを基に、月面の仮想環境モデルを構築し、仮想環境上でのセンシング技術開発や自動運転技術の評価、精度向上を継続して行う。今後はシミュレーション評価に加え、月面を模した疑似環境での実証実験を行い、開発技術を現実空間に適応するための課題対応を実施して行く計画のようだ。
■トヨタなども取り組む月面×自動運転
月面×モビリティの取り組みとしては、トヨタもJAXA(宇宙航空研究開発機構)と共同で、月面での有人探査活動に必要な有人与圧ローバ「ルナクルーザー」の開発を行っている。
両者は2019年3月に、国際宇宙探査ミッションで協業の可能性を検討していくことに合意したと発表している。この有人与圧ローバでは自動運転技術が活用されることが、過去のトヨタ幹部のコメントで明らかになっている。
ルナクルーザーは、宇宙飛行士が安全に快適に過ごすことができるという高い次元のモビリティ実現へのチャレンジで、トヨタはこれまでのクルマづくりで培ってきた信頼性や耐久性、走破性およびFC(燃料電池)技術などで貢献していくとしている。
なおトヨタのオウンドメディア「トヨタイムズ」によると、ルナクルーザーは同社のSUV「ランドクルーザー」の「必ず生きて帰ってくる」というコンセプトから着想を得て名付けたという。
【参考】関連記事としては「トヨタ自動車、JAXAに協力してAI自動運転技術を宇宙で提供へ」も参照。
また東京大学発の自動運転ベンチャーのTRUST SMITHも、宇宙産業に参入することを2022年11月に発表している。同社のAIやロボティクスの技術を応用し、無人ロボットによる月面上の実験施設の建設を目指すという。
具体的には、宇宙ステーション船内外の作業や軌道上サービスにおけるドッキング・寿命延長・修理・メンテナンス作業、月面探査・基地開発作業の自動化・効率化を想定しているようだ。
【参考】関連記事としては「東大AIベンチャーが宇宙事業!「自動運転」技術を武器に」も参照。
■次に宇宙産業に参入する企業は?
モビリティにおいての自動運転技術は、月面での作業に応用できるものがたくさんありそうだ。次に宇宙分野へ新規参入するのはどの企業か、注目していきたい。
【参考】関連記事としては「自動運転はどこまで進んでいる?(2023年最新版)」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)