米EV(電気自動車)大手のテスラが、2023年中に完全自動運転を実現するかもしれない。同社CEO(最高経営責任者)のイーロン・マスク氏が、2023年4月18日に行われた2023年第1四半期決算説明会の場でその旨を発言した。
同氏は、これまで何度も完全自動運転について「近く実現する」といったことを発言しているが、実際はまだ達成されていない状況にある。今度こそは実現するのだろうか?
■「二歩進んで一歩下がる状態が続くが…」
マスク氏は決算説明会で、同社のADAS(先進運転支援システム)「FSD(Full Self-Driving)」の価格引き下げを検討するかといった質問を受けた。
米メディアによると、それに対してマスク氏は「自動運転するクルマの価値は非常に大きい。その価値は最終的にとても有意義なものになる」とし、値下げについては予定していないと強調した。
その上で、「FSD β版の利用者にとって、本当に劇的な改善を感じてもらえると思う」とした上で、「β版の開発は、二歩進んで一歩下がるような状態が少し続くと思う。しかし、トレンドは明らかに完全自動運転に向かっている」と強調した。
そしてさらに「これを言うのはためらわれるが、今年中に実現すると思う」と発言した。
■マスク氏の発言を振り返ると…
マスク氏のこれまでの完全自動運転に関する発言を振り返ってみよう。
2019年4月に、2020年半ばにドライバーレスの自動運転タクシーサービス「Tesla Network」を開始する計画を明らかにした。しかしその計画は実現されず、2022年4月には自動運転タクシーを2024年までに市場投入すると語っている。
2020年7月には、自動運転レベル5の完全自動運転について「近く実現するだろう」と語った。さらに同年12月には、「私は(自動車の)完全自動運転化を達成できる自信があり、2021年にはテスラの顧客にそれを届けることができるだろう」と強気の発言をしている。
また、2021年1月には、FSDは人間による運転より安全性が高いといった趣旨のツイートをしている。さらに2022年8月には、年内に自動運転車を米国と欧米で展開すると発言した。
なお2022年3月には、「自動運転車が渋滞を狂気的レベルに増幅させる」とツイートし、波紋を広げた。自動運転車は自分で運転することに苦痛を感じないため、渋滞が起きても気長に待てることができ、結果として渋滞を悪化させるといった趣旨のようだ。
■現在はレベル2相当のADAS
今まで、マスク氏による多数の自動運転に関する発言があったが、最新のテスラ車も「自動運転」と呼べるレベルにはまだ至っていない。FSD(Full Self-Driving)は、直訳すると「完全自動運転」になるものの、実際の機能は自動運転レベル2相当のADASだ。
ただし最近では、中国でFSD β版の大規模テストを開始するといううわさも出てきており、プロジェクト自体が進展していることは確かだ。
強気の発言を繰り返すマスク氏。「2023年中に完全自動運転を実現」という発言は、今度こそ現実のものとなるのだろうか?
【参考】関連記事としては「名言?迷言?自動運転、テスラのイーロン・マスクCEO発言5選」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)